何事もなく、文化祭は無事に終わった。
雪谷くんは小森さんやクラスの男子たちと一緒にいたため、私と一緒に回ることはなかった。
でも、片付けのときに声をかけてくれた。
「荻目、お疲れ」
「雪谷くんもお疲れ様」
「折り鶴、ありがとな。あれのおかげで、いい感じになったと思う」
その言葉に、私の胸の中は温かくなった。
「えへへ、どういたしまして」
「あの折り鶴、もらっていいよね?」
え。
いや、ちょっと待って、それはまずいかも。
だって、あの折り鶴は……。
「あれ、ダメだった?」
私が変な顔をして固まっていたので、雪谷くんは不思議そうに聞いた。
そうだよ、あれは雪谷くんのために折った折り鶴だ。それを断るのは変だ。
うん、大丈夫。きっと、見られてしまうことはないから。
「ううん、何でもない。もちろんいいよ」
私は自分を納得させて、笑顔で頷いた。
*
その日の夜、スマホが鳴った。見ると、雪谷くんからのメッセージだった。
慌てて開くと、『ちょっと話せる?』と書かれていた。
いったい、なんの話だろう……?
私は、震える指で『大丈夫だよ』と返した。
すると、すぐに着信音が鳴った。
うわあ、雪谷くんと、電話……。
私は緊張しながらスマホを操作した。
「はい」
『おう』
「どうしたの?」
私はさっそく質問したけど、雪谷くんからの返事はなかった。
沈黙が流れる。
「もしもし?」
『うん、ごめん、ちょっと考えてた』
雪谷くんはようやく喋り出した。
『あのさ、俺……謝らないといけないんだ』
「え?」
私は驚いた。雪谷くんが私に謝ることなんてある?
『あの折り鶴』
雪谷くんがそう言うと、私の心臓は変な跳ね方をした。
『せっかく折ってくれたのに、俺、開いた。本当にごめん。ちらっと何かが書いてあるのが見えたから、どうしても気になって……』
その報告を聞いた私は、頭が真っ白になった。
読まれることはないと思っていたのに。
あの折り鶴を折るとき、私はどうしても気が進まなかった。
そんな気持ちに決着を付けるために、雪谷くんへの想いを紙の裏面にしたためていたのだ。
つまり、それはラブレターだった。
ヤバい。ヤバすぎる。
雪谷くんには折り鶴の詳しい感情は読み取れなかった。それなのに、私が書いた恋心を読まれてしまうなんて。
『あの……マジでごめん』
私は何も言えなかった。
でも、雪谷くんは謝らないで。
私が変なことをしたせいなんだから。
『それで……実は、俺、ちょっと気づいてた』
「ええ⁉」
その言葉は私を沈黙から呼び戻した。
気づいてた……⁉ それって、どういうこと……⁉
『荻目の折り紙から伝わる気持ちは、ずっと特別だった。でも、気づかないふりをしてた。その、俺には小森さんが……』
「わかってる」
私はそれ以上聞きたくなくて、雪谷くんの言葉をさえぎった。
「折り鶴に、変なこと書いてごめん」
『ちっとも変じゃないよ』
雪谷くんは優しく言った。
私は急に目頭が熱くなったので、上を向いて手で押さえた。
『一つだけ言わせて』
「う、ん」
私は声をつまらせた。
『俺にとって、荻目は、本当に大切な友達だから。勝手なことを言ってるかもしれないけど……よかったら、これからも仲良くしてほしいんだ』
大切な友達。
その言葉は私に鋭く突き刺さった。
「ぐ、うう……」
喉からは情けない嗚咽しか出ない。
部屋には私の弱々しい泣き声だけが響いた。
『……じゃあ、そろそろ切るね。また、学校で』
そして、雪谷くんとの通話は終わった。すると、ダムが決壊したように涙があふれてきた。
私はスマホを握りしめたまま、一人で声を上げて泣いた。
それは、私にとって初めての恋で、初めての失恋だった。
雪谷くんは小森さんやクラスの男子たちと一緒にいたため、私と一緒に回ることはなかった。
でも、片付けのときに声をかけてくれた。
「荻目、お疲れ」
「雪谷くんもお疲れ様」
「折り鶴、ありがとな。あれのおかげで、いい感じになったと思う」
その言葉に、私の胸の中は温かくなった。
「えへへ、どういたしまして」
「あの折り鶴、もらっていいよね?」
え。
いや、ちょっと待って、それはまずいかも。
だって、あの折り鶴は……。
「あれ、ダメだった?」
私が変な顔をして固まっていたので、雪谷くんは不思議そうに聞いた。
そうだよ、あれは雪谷くんのために折った折り鶴だ。それを断るのは変だ。
うん、大丈夫。きっと、見られてしまうことはないから。
「ううん、何でもない。もちろんいいよ」
私は自分を納得させて、笑顔で頷いた。
*
その日の夜、スマホが鳴った。見ると、雪谷くんからのメッセージだった。
慌てて開くと、『ちょっと話せる?』と書かれていた。
いったい、なんの話だろう……?
私は、震える指で『大丈夫だよ』と返した。
すると、すぐに着信音が鳴った。
うわあ、雪谷くんと、電話……。
私は緊張しながらスマホを操作した。
「はい」
『おう』
「どうしたの?」
私はさっそく質問したけど、雪谷くんからの返事はなかった。
沈黙が流れる。
「もしもし?」
『うん、ごめん、ちょっと考えてた』
雪谷くんはようやく喋り出した。
『あのさ、俺……謝らないといけないんだ』
「え?」
私は驚いた。雪谷くんが私に謝ることなんてある?
『あの折り鶴』
雪谷くんがそう言うと、私の心臓は変な跳ね方をした。
『せっかく折ってくれたのに、俺、開いた。本当にごめん。ちらっと何かが書いてあるのが見えたから、どうしても気になって……』
その報告を聞いた私は、頭が真っ白になった。
読まれることはないと思っていたのに。
あの折り鶴を折るとき、私はどうしても気が進まなかった。
そんな気持ちに決着を付けるために、雪谷くんへの想いを紙の裏面にしたためていたのだ。
つまり、それはラブレターだった。
ヤバい。ヤバすぎる。
雪谷くんには折り鶴の詳しい感情は読み取れなかった。それなのに、私が書いた恋心を読まれてしまうなんて。
『あの……マジでごめん』
私は何も言えなかった。
でも、雪谷くんは謝らないで。
私が変なことをしたせいなんだから。
『それで……実は、俺、ちょっと気づいてた』
「ええ⁉」
その言葉は私を沈黙から呼び戻した。
気づいてた……⁉ それって、どういうこと……⁉
『荻目の折り紙から伝わる気持ちは、ずっと特別だった。でも、気づかないふりをしてた。その、俺には小森さんが……』
「わかってる」
私はそれ以上聞きたくなくて、雪谷くんの言葉をさえぎった。
「折り鶴に、変なこと書いてごめん」
『ちっとも変じゃないよ』
雪谷くんは優しく言った。
私は急に目頭が熱くなったので、上を向いて手で押さえた。
『一つだけ言わせて』
「う、ん」
私は声をつまらせた。
『俺にとって、荻目は、本当に大切な友達だから。勝手なことを言ってるかもしれないけど……よかったら、これからも仲良くしてほしいんだ』
大切な友達。
その言葉は私に鋭く突き刺さった。
「ぐ、うう……」
喉からは情けない嗚咽しか出ない。
部屋には私の弱々しい泣き声だけが響いた。
『……じゃあ、そろそろ切るね。また、学校で』
そして、雪谷くんとの通話は終わった。すると、ダムが決壊したように涙があふれてきた。
私はスマホを握りしめたまま、一人で声を上げて泣いた。
それは、私にとって初めての恋で、初めての失恋だった。



