文芸部のオカルト伝承記記述1

五月二十五日木曜日
「どう?」「ダメ、全然ダメ却下」「はぁ」折角頑張って作ったスライドが全然ダメと言われてしまった、僕は椅子に座って偉そうにしているそいつに
 「因みにどのへんが駄目なん?」と聞いたら待ってましたと言わんばかりに早口でまくし立てて来た
「まず昇りと降りで段数が違う階段は学校の七不思議じゃないし」「そこかよ」
予想外の所から突っかかってきたため思わず話を遮ってしまった
 そしたらそいつは少し苛ついたような声で更にと話をきり出す
 「ウチそもそもオカルト研究会じゃなくて文芸部ね」と反論してきた、それを聞いた僕はため息を付きつつ
 「じゃあ文芸部らしいことしたら?」と返したすると痛いところを突かれたのかただ面倒くさいと思ったのかは知らないが
 「はいはい分かりましたよ、春はあけぼの〜」
 「清少納言にどつかれるぞ」
 と今日も今日とて漫才染みた話をしてた、すると
 ――キーンコーンカーンコーン――
と十八時を知らせるチャイムがなった、そのチャイムを合図にすかさず僕は荷物をまとめカバンを手に取り
 「まぁ、部活も終わりだし第一スライドなんてお前でも作れるだろうし適当に作り直しといて、そんじゃ」と立ち上がり帰ろうとした瞬間
「……ねぇ今日はどうする?」と聞かれたいつものパターンだ
今日は疲れたし早めに帰りたい!だがまぁこうなったら帰ると言う選択が出来ないので「今日は何がある?」「よし来た!」
 神大崎高等学校文芸部部員数《二名》部長であるあいつ八神スミレ、そして僕二十日一生ここでは文芸部らしいことはしない、ていうか文芸部らしい事をしたことが無い、
 ならば何をしているのか?それはこれから分かることだ
 すっかりと部屋は片付けられ長テーブル二つを向いに設置しただけの《作戦会議台※スミレ命名》はいつ見ても抜群な圧倒的センスを感じる
僕はその台に椅子を並べ腰掛けながら
 「で、今日はどうするの?」と話を切り出した「何と!!今回ついに……」
バァン!!
スミレの発言をかき消すかのように部室のドアが勢いよく開いた
「えっと!あの!自分一年の犬井かなでです!ここ!オカルト研究会ですよね?!入部を希望します!」
 いきなりの訪問者に場が一瞬静……
「君!!私ねここの部長!八神スミレ!よろしく!そしてそいつは二十日一生!よろしくね!かなでくん!」「そいつって言うなし」
 静寂なんてものは訪れなかったて言うかスミレのやつこの一年が喋り終わったとほぼ同時に駆け寄ってたぞ、余程嬉しいのかは知らないが目は確実に輝いていた
「よろしくです!スミレ先輩!二十日先輩!」どうやら当の本人は入る気満々らしい、そこで一つ気になることがあった
「犬井君、君入部届出した?それにここ文芸部だからね?ほら、スミレも何か言ってあげたら?」
別に僕としては犬井君が入ろうが入らなかろうが関係ないのだが入部とあらば入部届が居るだろうし何より!
 スミレがオカルト研究会だと言うことを否定していない!僕には散々駄目だしするくせに!とそんなガキンチョみたいな事を私情たっぷりに吐き出した、すると
「まぁ文芸部もオカルト研究も一緒でしょ」とスミレはあっけらかんと言った、こいつ……
その後立ち話も何だしとのことで犬井君を部室に招き入れ、椅子に座らせた
 すると犬井君は周りをキョロキョロと見回し
「部室めちゃくちゃ広いですね!窓から山とか見えるし最高じゃないですか!」と言ったそれに僕は
「まぁ景色いいのは良いことだよ、あと部活が広く感じるのは部員が君いれて三人だからね部屋自体は教室よりちょい狭いぐらいだよ」と返した、するとスミレが我慢できなかったのか話を切り出した
「で!早速話したいこと言っていい?!」
 「どうぞ〜」
 するとスミレは台に紙を広げた、僕と犬井君は覗き込むようにしてその紙をみる
「取り敢えず今週の土日に心スポ行こうと思ってるのよ、だけど何処に行こうかなって、大体近場は行き尽くしたしね」とスミレが言った、確かに近場は行き尽くした感がある、だとするの残りは
 「有名所しか残ってないぞ僕県外にまで行って怖い思いしたくないんだけど」
 「そこを何とか!!」スミレは食い下がらない
 「無理怖い」
 「ほら!かなでも何か言ってよ!」するといきなりスミレは犬井君に話を振った、しかも唐突に
「あ、えと、え〜」ほら、困っちゃった
「て言うか別に行かなきゃいけないってわけじゃないでしょ?」と僕はスミレに言った、スミレとしては計画してまで行きたいのだろうが僕としては何故土日にわざわざ怖い思いをしなくちゃいけないのかがよく分からない
「でも~楽しいと思うよ?弁当とか作る気だしちゃんと三食」「まさかの泊まり込み?」
 スミレのまさかの発言に思わずツッコんでしまう、これじゃあ犬井君が話す隙がないなぁと思いながらもツッコまずにはいられなかった、すると犬井君がいきなり妙な提案をしてきた
「あの、心スポ系もいいと思いますけど近場って言うならばこの辺の()()()()()()()の様な物も調べてみると面白いんじゃないですかね?」
 「言い伝え?伝承?それってオカルト関係ない感じのやつ?」犬井君が言った提案は僕自信興味を凄く惹かれた、だからこそ気になった
「え〜〜〜心スポは〜?」何か言ってる奴もいるが取り敢えず犬井君の話が聞きたい、なので犬井君に気にしないで続けてと言い話を聞いた
「えと、この街神大崎って伝承って多くあるんですよ、それこそここから見えるあの山にも」そう言いかなでは山を指さす
「なるほど、蓬莱山伝説か」
 蓬莱山伝説、その昔修験道と言う修行をしていた僧が山にこもっていた時、欲深く生きたいと思いその山の湧き水を飲んだそうだ、するとたちまちその修行僧の空腹から疲労感に至るまでありとあらゆる心体的な不調が改善したそうだ、そこからあの山の泉には再生の力がある、人を不死身にする、と言う
伝説が残ったらしい。
「てか随分唐突だね、何で伝承何て調べようと?」と僕はかなでにそう聞いた、するとかなでは
「いや?蓬莱山て自分行ったことないんですよ、だから行きたいなって、そのついでですかね?」とかなでがそう言った、まぁ何というかそこまで深い意味は無いんだろうなと思った
「で?結局蓬莱山行くの?」スミレが太々しくそう言う、それに対して僕は頷き
「イキタイデス」「本当に行きたいの?それ」そんないつもの調子で話していると
「えと、嫌だったら心スポでもいいんですけど」
「いや、僕は伝承を調べたいし蓬莱山にも行きたい」
 危ない危ない、もう少しで心スポに戻る所だった、
 ふざけるのも大概にしないとな
 するとスミレは、はぁと一息つき
「じゃあ今週の土日、蓬莱山行ってみますか」とスミレからGOサインが出たので、予定を書き込むためスマホを取り出した、そこで
「てか時間結構いい感じだぞ、ほらもう三〇分」
 話し合いだけで随分と時間が過ぎていた、そのため今日はこの辺で帰るかと言い、そのまま部活を終えることにした、僕とスミレは部活の片付けに入り犬井君は行きたいところがあると言って、そのまま先に帰ってしまった。
 ――
「スミレ、今日家寄るわ」僕達は部活の片付けだけして帰路についていた、帰り道大分暗くなってしまった空を見ながらさり気なくそう言った、
「まぁいいけど、ママ居ないかもだけど良い?」
「モーマンタイ」
今日、スミレの家に寄るのは特に深い意味は無いのだが、一つ言えることとしたら金が無いし()()()()()()()
「あ、そういやウチまだ居るからね」とスミレが言う
「なるほど、居るのか、友達連れ込んでたりとかは?」
「あの子がそんな事すると思う?」
「まぁ、、、無いだろうけど姉としてどうなんだそれは」
「まぁまぁ」そんな事を話しつつ僕達はスミレ宅に着いた、するとスミレは鍵でドアを開けただいま〜と言いながら入っていった、「……」僕はスミレ宅の前で立ち尽くしてると
「何やってんの?入りなよ〜」とスミレが言ったのでお邪魔しますと言いながら入っていくのだった。
 ――
 家に入るなり玄関正面の階段からスミレの妹が降りてくる
「男だ、姉ちゃんが男を連れてきた」
「元気してた〜?ハナ」
「まぁまぁだよ、一生は?デート?」
「そうだよ、スミレがどうしてもって」 「言ってないが?」
 スミレの妹ハナ、スミレ程ではないが面白い子だ
 そんなハナにスミレとデートしてたと言ったらあろう事かスミレは否定してきた、
「なあスミレ、僕はいつも部活付き合ってるだろ?それはデートじゃないのか?」 と言ったら
「大丈夫?一生?あんた蓬莱山より病院行ったほうがいいんじゃないかな?」と割とキツめな言葉が帰ってきた、これは捉え方によらずともイジメなのでは? とそんな事を思っていると
「いつまで玄関でイチャイチャしてんの?早くリビング行ったら?」
 とハナからもおキツイ言葉を貰ってしまったためリビングに入ることにした。
 リビングに入るとスミレのママさんがソファに座っている
「あ、スミレおかえり〜」ママさんはテレビを見ながらこっちを見ることなくそう言った、そこで僕は
「あの~お邪魔してます」と言ったらママさんはギョッとした様子でこちらを見て
「ああ!二十日君!今日はうち来たのね!じゃあご飯ちゃっと作っちゃうから!待ってて!」「あいやちょっと」
 僕がママさんに発言をする前にぱーっとママさんは台所に行ってしまった、速い、凄く速い、悪いとは思いつつも訂正したらしたで駄目だと思い僕はそのままソファに座り込んだ
「はぁ」
 スミレの家のソファはふかふかしており、座る人を駄目にするタイプのソファだと感じた、すると隣にスミレが座ってきて
「テレビ変えていい?」
 と聞いてきたのでどうぞと言った、その後スミレに続くようにしてハナが僕の座っている足元あたりに座り込んできた
「……スミレの隣空いてるぞ」
「何処に座ろうが私の勝手じゃない?」
「まあ」
 何だろう、今日のハナは一段とイライラしてるような気がする、まさか、、
 まあそんな事はどうでもいいとしてこのまま待つのもなんだし、ハナと話でもするか、そう思いハナに話を吹っ掛ける
「最近は行けてるか?」
「何処に?」ハナは相変わらず無愛想に無機質に返してくる、昔はこんな感じじゃなかったんだけどなと思いながらも話を続ける
「まぁ何だ、辛くなったり話がしたい時とかママさんやスミレには言いづらいだろうし、僕を頼ってくれ」
「ん、分かった」
 ……本当に分かってくれたのだろうか?心配だ、そんな話をしている隣でスミレは番組表とにらめっこしている、
「……」
 その時僕の心に少しだけ、ほんの少しだけイタズラ心が芽生えた、僕はソファからスッと立ち上がりテレビの前で仁王立ちをする
「……見えないんだけど」
「ドンマイ」
 そう言ったその時!スミレはソファとテレビの間にあるガラステーブルにリモコンを置きこちらに向かって歩いてきた、
 僕はスミレが来る方とは逆の方に逃げるように歩き出した
 するとスミレはスピードを上げ追いかけてくる、僕もスピードを上げて逃げる
「……はぁ、、、」
 その様子を見ていたハナは深いため息を付いた、そんな事は知らんと言わんばかりにスミレはスピードを上げる、もう小走り程度のスピードが出ている
「ちょ!スミレ速いって!危ない!」
 僕が始めたことではあるが仮にコケたりしてテーブルを割ってしまったら大惨事だ、僕としても止まったほうがいいのは分かっているがスミレに捕まったらと思うと、、、
 取り敢えずスミレが諦めるまで逃げ続ける!
 そんなこんなで僕とスミレがテーブルの周りをバタバタと走り回っているといきなり!
「?!」
 ソファの手前でコケてしまった!いや?!足を掛けられた!ハナの仕業だ、僕は何とか態勢を立て直しソファの方をみるとハナは悪魔のような笑みを浮かべていた、そしてスミレは僕がコケたのを見落とすことは無くスパートを掛けてきた!!すると
「?!」
 何とスミレもハナに足を掛けられたのだ、ハナのやつバーサーカーかよ、とかそんな事を思っている場合ではない、スミレは足をかけられた事によってバランスを崩し倒れかけている!マズイ!そうして僕はぐっと腰を下ろし、足を引き受け止める態勢を取った!瞬間!
 ――ドン!
 そんな鈍い音が鳴った、そして
「大丈夫?怪我とかない?」
腕の中で突伏しているスミレに声をかけた
「大丈夫、、、でも痛い、、」
「文句言うなし」
 何とかスミレを受け止める事が出来た、ソファのうえではハナが僕に向かって親指を突き立てグッドポーズをしている、誰のせいでこうなったと思ってるんだ、そう思い喋ろうとしたその時
「あんたたち!さっきから何やってんの?!今何時だと思ってんの!近所迷惑でしょ?!」
 ママさんの怒号が響いた、流石にマズイと思ったのかハナはごめ~んと言いながらママさんがいる台所の方へスタスタと小走りで向かっていった、僕とスミレはしばらくくっついたままだったが台所から顔を出したハナが
 「もうそろそろご飯だからイチャイチャするのは一旦やめといて」
 と言ったのを聞き、僕とスミレはママさんのお手伝いに向かうのだった、因みに僕はママさんから
 「お客様だから座っといて!お手伝いなんていいよ」
 と言われてしまったため、ソファに戻りテレビを観るのだった。
 ――
スミレのママさんの作ってくれた料理を全て平らげ、片付けも終わった頃、僕は風呂屋にでも行くかと思い玄関にいた、するとスミレがパジャマ姿の状態でリビングから出てきて
「あれ?今日はやっぱりホテルとか行くの?泊まってけばいいのに」 と言った、すかさず
「いや、銭湯行こうかなって、僕が帰ってきたらLINEするから鍵空けてくれ」
 と返した、すると何処から聞いてたのかハナが階段から現れ、
「私も付いてっていい?銭湯久しぶりに行きたい」
 と言ってきたのだ、まぁ僕としては良いのだがママさんの許可が下りないと駄目だろうな、なんて思っていると
「何言ってんの?駄目に決まってるでしょ?」
とスミレが反応した、謎に威圧的に反撃するスミレに言葉強ない?と返そうとしたが、僕よりも先にハナが口を開いた
「別に私が誰とどこ行こうが私の勝手だよね、それに私まだ風呂入ってないから行くだけだし」
 とハナが反論した、まぁそのとうりだとは思うのだが一応ママさんに風呂行ってくるとだけ言ったほうがいいと思うんだけどなぁ、と思っていると
「一応ママにはLINEしとくし、遅くならないようにするからいいでしょ、一生、私服とか用意してくるね」
 そう言うとハナはスミレの隣をするりと抜けて、階段を上がって行った、残された僕は何だか気まずくなり僕が
「じゃ、行ってくるわ、今日中には帰るから」
 と言い残し家の外で凍えながら待つのだった。
 ――
「ちょっとかかるけど良い?」
 僕達は最寄りの銭湯まで歩いて向かうことにした、ハナはそこそこ大荷物をカバンに詰めてたため、重いと文句をたれていた、
「別にいいよ、それに夜は嫌いじゃないし」
 夜風に吹かれて肌寒いぐらいまであるがハナはどうやらこのぐらいが丁度いいらしい、僕はライトで道を照らしスマホのナビを見ながら、一応確認だけすることにした
「そういやハナ、腕、大丈夫?薬局とかドンキとか寄りたいなら寄るけど」
「大丈夫、持ってるから」
「あ、そう」
 確認だけしてみたが、どうやら準備は万端だったらしく、気にすることでもないと思った、そこで僕は少し、いや、()()()()な話題をハナにすることにした、
「ハナ、えと、最近は()()()()()いや、大丈夫なら大丈夫で良いんだけどね」
「……」
 ハナは僕の問いかけに答えることなく少し俯いた、イジメたいわけでもないし、僕はただ心配だから聞いたのだ、でも答えたくないなら答えてくれないでいいか、と思っているとハナが呆れた様子で答えてくれた
「まぁ、大丈夫だよ、一生は私のこと普通だって言ってくれたし、気にしてない」
聞きたい事は答えてはくれなかったがハナが大丈夫だと言うのであれば、良いかと思った、
「そんなことよりもさ一生、銭湯でお風呂上がったらフルーツ牛乳飲みたいんだけどいい?」
「良いよ、好きなだけ飲みな」
 ハナはようやく笑顔を見せてくれた、最近ハナはあまり笑わないと聞く、だから今、例え演技だとしても笑ってくれるのは良いことだと思った
「フルーツ牛乳以外にもアイスとか軽食なんかもあると思うんだけど、どう?食べる?!」
「うん、私ポテト食べたいし、チャーハンとかもあったら食べたいかも」
「食い過ぎだぞ〜」
 ハナは晩御飯の時あまり食べて無かった気がする、だから何か食べるか聞いたのだが、めちゃくちゃ腹ペコな感じでがっつきながらはしゃいでいた、年相応の反応に僕は可愛いなと素直にそう思った、そんな話をしつつ歩いてやっと銭湯にたどり着いた。
「ここだな」
 僕はスマホのナビを終了させ銭湯に入ることにした、ここは銭湯ではあるが、コンセプトが旅館であるため外装にもかなり凝っており、日帰り旅館としても評判がいい、そんな温泉旅館を堪能していると
「ここゲームセンターとかなさそうだね」
 とハナがそんな事を言い出した、全く、この厳かな雰囲気を楽しめないとは可哀想な奴め、と思っていると
「一生、楽しみ方は人それぞれだし、いいじゃん?」
 と心を読んでいないと出ないような言葉を吐いてきた、
 こいつ、、、いつの間に心が読めるようになったんだ?とそんな事を考えてると
「ねぇ、私もうお風呂入ってきていい?」
「良いぞ、風呂の場所は……」
と僕が風呂の場所を伝えようとしたその時にはハナはピャーっと何処かに走り去って行ってしまった、その様子を見た僕は
「風呂はいるか」
と言いながらお風呂に入るのだった。
――
「お、PS5出るのか」
 大体40分ぐらい入っていただろうか?
 僕は一足先にお風呂から上がり、半個室の休憩スペースでジュース片手にスマホをつついていた、ハナはまだお風呂に入ってるのだろうか?長くないか?とそんな事を思っていると
「お!一生!奇遇!」
 とそんな事を言われ一人の男の子が入ってきた
「えと、、、どちら様でしょうか?」
「え〜?俺だよ!同じクラスの中村大樹!ショックなんだけどー」
「あ、中村か、済まんかった」
 一目見ただけでは分からなかった、、
 まぁ中村も風呂上がりだし、髪も濡れてるし、雰囲気が違っていた、だから僕は中村だと分からなかったのだ、
 そう、けして()()()()()()訳では無い、本当だ、と自分に言い聞かせていると
「なあ一生、お前一人?俺は一人なんだけどさ」
「あ~、一人じゃないよ」
「え〜!マジ?!誰と来たん?彼女?!」
 なるほど、このタイプはあまり関わってこなかったから本当に知らなかったのかもしれない、それにしてもめちゃ喋るな、とそんな事を思っていると、絶妙なタイミングでハナがやってきた
「一生、私岩盤浴とかも入ってみたいんだけど!いい?!」
隣で中村がニヤニヤしながら肩を小突いてくる、そこでハナは中村に気が付いたらしく
「あ、えとこんばんは」
 ハナは顔を赤らめて僕の正面に座り込んだ、顔が赤いのはお風呂に入ってすぐだからなのか、恥ずかしさでこうなったのかは知らないが、新鮮だなぁとそう思い
「岩盤浴はな、追加料金がかかるし何より館内着のレンタルもしなきゃいけない、更に……」
 と僕が説明していると、中村がスマホの画面を見せてきた
 《ケチだな》とそう書かれた画面を見て
「ちげーし」
 と言ったら、ハナも
「一生、ケチー!」
 と言ってきたのだ、こいつらグルか?それともまたハナの読心術か?と思いつつも僕が口を開こうとすると中村が
「まぁ何だ!俺も岩盤浴入りたくなってきたから一緒にはいろっかなー、一生、割り勘でどう?」
中村、、、違うんだ、そうじゃない、ただ中村が助け舟を出してくれたのも事実、なので乗ってやるかと思いつつ僕達は岩盤浴に入るのだった。
 ――――
「一生、ハメたな?」
「いや?これに関してはお前が勝手にハマったんだろ」
 僕達は岩盤浴に入るために館内着に着替えた、因みに中村は
「貸し一だからな!」
 と言いそのまま帰ってしまった、中村、、お前はいい奴だったよ、と思いつつ僕は
「まぁ初めてなんだから知らないのも無理はないな」
「だとしてもこれは違うじゃん……しかも男女一緒とかあり得ない」
 岩盤浴を使ったことあるならば分かるだろうが、大体館内着のみで利用可能、更に館内着を着る際は()()()()()()()()されているのだ、僕は特に気にしないのだが年頃の女の子にはちょいきつかったか、と思い
「じゃあ出るかい?」
 と少し意地悪をしてみた、すると
「……まぁお金払ってるし楽しむけどさ」
 とハナが返してきた
「じゃあ僕向こうのトルマリンの方行ってくるからハナは好きな所いっといで」
 と最大限気を利かせ?離れようとしたが、いきなりハナは袖を掴んできて
「……一緒に行くって言ったじゃん」
 何だこいつ可愛いかよ、と思いつつ僕は
「分かった、じゃあ一緒に行くか」
 と言いつつ僕達は岩盤浴を楽しむのだった
 ――――
「さて、言い訳を考えるか」
 現在時刻は二十二時を過ぎている、早く帰ると言ったが時間いっぱい楽しんでしまった、
「一生、今までありがとう、最後に一緒にお風呂入れて楽しかったよ」
 こいつ!もう諦めてやがる!そして何故が一緒に風呂に入ったことになっている!
 いや、落ち着け、こんなときは
「ハナ、まだ慌てる時間じゃない、二人で言い訳を考えよう」
「言い訳を考えてる時点で慌てる時間は過ぎてるのよ一生」
 こいつ、、、冷静なのか慌てているのかよく分からん!
 とそんな事を思っていると
 ――プルプル
 とスマホが鳴る、画面を見て
「おいハナ!マズイボスだ!」
 そう言いスミレからの着信画面を見せる、するとハナは任せとけと言わんばかりに手を差し出してくる、僕は何となく嫌な予感がしたため、僕が出るよと言いコールボタンを押す
「……今どこ?遅くない?」
 マズイ、何か言い訳を考えなければ、今思えば素直に長風呂してたといえばよかったのだが、僕は
「いや~友達とばったり会ってさ、話が盛り上がっちゃった」
「ふ~ん、で?ホントは?」
「いや、だから友達と」
「一生に友達は居ない」
「居るわ」
 何だこいつ、シンプルに失礼じゃないか?とそう思いハナに視線を向ける
 ?
 ハナが居ない、ハナが居ない?!あいつこの短時間でどこ行きやがった!!僕は辺りをキョロキョロしながらハナを探す
「一生聞いてるの?」
「あ?えうん、聞いてるよ!」
「……大丈夫?」
 大丈夫なわけがない、ハナが行方不明だ、僕は温泉内をキョロキョロと見回し、彷徨っていると
「……私行こうか?ほんとに大丈夫?」
 とスミレがまだ心配してくれていた
「大丈夫大丈夫、ほんとに大丈夫だから」
 そう言い再びハナを探していると
「あのさ、ハナは何処にいるの?あの子スマホ忘れたのか何なのか分からないけどLINE見ないし電話にも出ないんだよね」
と言ってきたのだ、ハナのやつLINE見てないのか、ならば尚更早めに見つけないと、そんなこんなで僕自身焦りが出始めてきた所
「あ!」
 何とハナと中村が楽しそうに休憩スペースで話していたのだ、何やってんだあいつら、と思いつつハナ達の所に向かった
「おいハナ、勝手にどっか行くなよマジで肝冷えたぞ」
「あ、ごめんコーヒー牛乳とか飲んでなかったから飲みに行ったんだよ、そしたら中村さんに会ってさ」
「彼女ちゃんお借りしてま〜す」
 中村はヘラヘラと笑いつつ手を振っている、僕はハナにスマホを渡し中村と話すことにした
「中村、コーヒー牛乳ありがとね」
「貸し二な」
「貸しが増えてくなぁ」
 そんな会話をしつつ僕はハナの電話が終わるのを待っていた、すると
「分かった分かった、はいはいはい、帰るよ」
 ハナは面倒くさそうに返事をして電話を切った、ハナがスマホを差し出し
「一生、帰ろ」
「分かった、スミレは?」
「LINE見ろってうるさいのよ」
 ハナはどでかいため息を付きつつ足早に出ていってしまった、僕もハナの後を追いかけるようにして銭湯を後にした
 ————
「ただいま〜」
 僕がそう言いスミレ宅に帰ると、玄関でスミレが待ち構えており
「おかえり、もう母さん出ちゃったよ、遅かったね」
「ごめんよスミレ」
 スミレも心配していただろうし、心配かけたことについては謝っておいた、自分はと言うともうくたくただったので、ソファで寝ることにした。
 ————
「はぁ」
 ため息を付いた、何もない、ズボンのポッケに手を突っ込み弄ってみた、糸くずがあるだけだ、周りを見渡してみた
 無限に続くとも思える無機質な通路が続いているだけだ、
「あ~ヤベー気ー狂うわ」
 俺はここの警備をしている、ここと言っても何処かでかい建物のとある扉のなのだが、ここは何もないのがいけない
 俺の後ろにはたいそう豪華な扉があり、周りには壁掛けの照明が等間隔に永遠にも続いてるかのような通路に設置されているだけだ、
「辞めよっかな、こんなクソな仕事」
 ここはネット経由で見つけた仕事だ、資格なしでも出来る警備の仕事で手取りもいいと来たもんだ、応募する以外の選択肢は無かった、ただまぁこれが罠だった、最初のうちは金のためと頑張って来たが今現状金の心配がなくなったとたん苦痛で仕方なくなった、俺は人と関わる大切さというのを軽んじてたと言うことだ
「でもなぁ〜辞めたらどうすっかなぁ」
 資格なしの警備で何となく察することができるが俺はクズだ、この先一人でやっていける自信がない、だからこんな怪しいこともやるしかない、金の為に
 そんなこんなで俺がスマホをいじっていると奥の方から女が現れ
「やぁやぁ!見回りに来たよ〜お仕事してる?」
「うす、ぼちぼちっす」
 女は何処からそんな元気が湧き出るのかは分からないが、大声で無機質な通路に響かせるように挨拶?をした
「ところでさ、君やめちゃうの?」
「あ、聞いてたんすね」
 何処から聞いてたのだろう、分からないが聞かれてたのなら仕方ない、そう思い
「まぁ金も貯まったし、何よりここ気が触れそうで」
 そう言うと女はニマニマと薄ら笑いで
「大丈夫だよ、私ずっとここに居るんだよ?だから大丈夫!」
 何が大丈夫なのだろう?こいつもこいつで気が触れてるとしか思えない、いつも笑ってるしニヤニヤしている、
 正直気味が悪い
「何でいつもニヤニヤしてんすか、辞めてくださいよ」
「え?笑ってたほうが感じはいいじゃん?ほら、君も笑って」
 そう言うと女は俺の頬にてを伸ばしふにふにと頬を伸ばしてきた
「マジやめてください!セクハラですよ?!それ!」
 俺は女から距離をとる
「え〜?嬉しいくせに〜」
 女はニヤニヤしながらこちらを見つつげていた
 全く、本当に気が狂いそうだ