それでも僕は、毎日、毎日、めげずに黒峰先輩を野球部に誘うことにした。
勧誘二日目。
「黒峰先輩!野球部に入ってください!」
「無理」
朝の登校時を狙って勧誘してみたものの、一瞬で玉砕。
多分、朝の慌ただしいタイミングが良くなかったのだと思う。
勧誘三日目。
「先輩!野球部に入って欲しいです!」
「だから嫌だって」
放課後になった瞬間に先輩の教室に乗り込んで頼んだけど、すぐに断られた。
先輩は返事をしたら、机に突っ伏して眠ってしまった。
勧誘四日目。
「先輩、先輩。これ読んでください」
僕はどれほど黒峰先輩に入部して欲しいかと書いた手紙をまた放課後になって直ぐに渡した。
だけど、手紙を一通り読んだ先輩からは、決まり文句のように「入らない」と断られてしまった。
連日突撃して、連日失敗。
全然うまくいかない。
こうして、毎日のように野球部に誘い続けて、一週間以上が経った。
勧誘十日目。
「あ、黒峰先輩っ!ご飯、なに食べてるんですか!あの、野球……」
「うるさい。昼飯食べるなら黙って食え」
「はい……」
偶然、食堂で会った先輩に突撃したら、静かに食べるように説教された。
ご飯中なんだから当たり前だった。だから、先輩の隣で静かに食べた。
勧誘十五日目。
「先輩っ、今日こそ野球部に入ってくださいっ」
「だから、嫌だって」
「お願い、お願いっ」
「……可愛い顔したからって駄目だ」
「ちぇっ」
「おい、舌打ち」
やけくそになってぶりっ子をしてみたのに、黒峰先輩には効かなかった。
勧誘二十日。
「あー!先輩っ!待って」
「なに」
「野球部にっ、入ってくださ……」
「だから無理だって。毎日言ってきても無駄だからな。このふわふわ頭」
野球部の練習終わりに校門の近くで見つけて駆け寄ったけど、しっかり断られた。
しかも、変なあだ名をつけられて。
ふわふわ頭か。
そういえば、僕、これだけ先輩に突撃しているけど名前を名乗ってなかったかもしれない。
これはちゃんと名前を知ってもらうところから始めないとダメだ。
勧誘二十一日目。
また練習終わりに、校門の近くで黒峰先輩を見つけて駆け寄った。
「黒峰先輩っ。あ、待って」
僕を見つけた途端、先輩はくるりと方向転換をしてスタスタと歩いて行ってしまった。
「待って。あの、僕は佐藤楓って言います。ふわふわ頭じゃないです」
「……で?ふわふわ頭」
「いや、だからふわふわ頭じゃないんですって!佐藤楓ですって。佐藤っていっぱい居るんで、楓って呼んでください」
「はぁ……」
「じゃ、野球部に入ってくださ……んあっ」
僕が話し切る前に黒峰先輩の大きな手に、僕の頭は正面からがっしりと掴まれてしまった。
「わわわ……」
僕の頭を掴んだ先輩は、ぐいぐいと何度か僕の頭を左右に振った。
それに合わせて僕の視界もゆらゆらと揺れる。
「うるさい。佐藤楓。俺は帰るから。じゃあな」
そう言った先輩は、僕の頭をパッと離して駅の方へ歩いて行った。
僕は、その場でペシャリと座り込み、黒峰先輩の後ろ姿を見送った。
「今、僕の名前、呼んでくれた……よね」
黒峰先輩が自分の名前を呼んでくれた。
それだけで先輩に近づけたような気がして嬉しくなる。
それに黒峰先輩は毎回断るけど、僕を避けたり、変な噂を立てたり、僕を傷つけるようなことは絶対にしない。
それどころか、毎回なんだかんだ断るところまで付き合ってくれる。
ふてぶてしい態度ばかり取ってくるけど、本当は優しいと思う。
それからの僕は何度も何度も、チャンスを見つける度に黒峰先輩を野球部に誘い続けた。
手応えはさっぱりではあったけど、毎回「佐藤楓」と僕の名前を呼んでくれるようになった。
毎回、名前を呼ばれる度にちょっとだけ心がむず痒くなる。
断られてショックなはずなのに、名前を呼ばれるたびに嬉しくなってしまう。
勧誘二日目。
「黒峰先輩!野球部に入ってください!」
「無理」
朝の登校時を狙って勧誘してみたものの、一瞬で玉砕。
多分、朝の慌ただしいタイミングが良くなかったのだと思う。
勧誘三日目。
「先輩!野球部に入って欲しいです!」
「だから嫌だって」
放課後になった瞬間に先輩の教室に乗り込んで頼んだけど、すぐに断られた。
先輩は返事をしたら、机に突っ伏して眠ってしまった。
勧誘四日目。
「先輩、先輩。これ読んでください」
僕はどれほど黒峰先輩に入部して欲しいかと書いた手紙をまた放課後になって直ぐに渡した。
だけど、手紙を一通り読んだ先輩からは、決まり文句のように「入らない」と断られてしまった。
連日突撃して、連日失敗。
全然うまくいかない。
こうして、毎日のように野球部に誘い続けて、一週間以上が経った。
勧誘十日目。
「あ、黒峰先輩っ!ご飯、なに食べてるんですか!あの、野球……」
「うるさい。昼飯食べるなら黙って食え」
「はい……」
偶然、食堂で会った先輩に突撃したら、静かに食べるように説教された。
ご飯中なんだから当たり前だった。だから、先輩の隣で静かに食べた。
勧誘十五日目。
「先輩っ、今日こそ野球部に入ってくださいっ」
「だから、嫌だって」
「お願い、お願いっ」
「……可愛い顔したからって駄目だ」
「ちぇっ」
「おい、舌打ち」
やけくそになってぶりっ子をしてみたのに、黒峰先輩には効かなかった。
勧誘二十日。
「あー!先輩っ!待って」
「なに」
「野球部にっ、入ってくださ……」
「だから無理だって。毎日言ってきても無駄だからな。このふわふわ頭」
野球部の練習終わりに校門の近くで見つけて駆け寄ったけど、しっかり断られた。
しかも、変なあだ名をつけられて。
ふわふわ頭か。
そういえば、僕、これだけ先輩に突撃しているけど名前を名乗ってなかったかもしれない。
これはちゃんと名前を知ってもらうところから始めないとダメだ。
勧誘二十一日目。
また練習終わりに、校門の近くで黒峰先輩を見つけて駆け寄った。
「黒峰先輩っ。あ、待って」
僕を見つけた途端、先輩はくるりと方向転換をしてスタスタと歩いて行ってしまった。
「待って。あの、僕は佐藤楓って言います。ふわふわ頭じゃないです」
「……で?ふわふわ頭」
「いや、だからふわふわ頭じゃないんですって!佐藤楓ですって。佐藤っていっぱい居るんで、楓って呼んでください」
「はぁ……」
「じゃ、野球部に入ってくださ……んあっ」
僕が話し切る前に黒峰先輩の大きな手に、僕の頭は正面からがっしりと掴まれてしまった。
「わわわ……」
僕の頭を掴んだ先輩は、ぐいぐいと何度か僕の頭を左右に振った。
それに合わせて僕の視界もゆらゆらと揺れる。
「うるさい。佐藤楓。俺は帰るから。じゃあな」
そう言った先輩は、僕の頭をパッと離して駅の方へ歩いて行った。
僕は、その場でペシャリと座り込み、黒峰先輩の後ろ姿を見送った。
「今、僕の名前、呼んでくれた……よね」
黒峰先輩が自分の名前を呼んでくれた。
それだけで先輩に近づけたような気がして嬉しくなる。
それに黒峰先輩は毎回断るけど、僕を避けたり、変な噂を立てたり、僕を傷つけるようなことは絶対にしない。
それどころか、毎回なんだかんだ断るところまで付き合ってくれる。
ふてぶてしい態度ばかり取ってくるけど、本当は優しいと思う。
それからの僕は何度も何度も、チャンスを見つける度に黒峰先輩を野球部に誘い続けた。
手応えはさっぱりではあったけど、毎回「佐藤楓」と僕の名前を呼んでくれるようになった。
毎回、名前を呼ばれる度にちょっとだけ心がむず痒くなる。
断られてショックなはずなのに、名前を呼ばれるたびに嬉しくなってしまう。



