「檜山ー」
「おっせぇマジで!」
「マジでごめん!電車乗り遅れた!」
しょーがねーなぁーって笑う檜山に、もう一度ごめん!と謝る。スタバ奢るならよし!なんて言い始めた檜山に苦笑いをしながら頷く。謹んで奢らせていただきます。
「てか顔色いいじゃん。どしたの?」
「ん?あぁ、佐柳がいてくれてるからね。そりゃ顔色もいいってもんよ?」
俺の言葉に、檜山は途端に怪訝そうな顔をする。
「なに言ってんだよ」
——佐柳はもう何年も戻ってきてないだろ
「……え?」
檜山の言葉に、足の動きも、呼吸も止まる。
戻ってきていない?いや、んなわけない。だって、だって佐柳は今……。
「声も聞いてねぇからもう思い出せねぇわ」
「いや、そんな……」
はた、と言葉が止まる。
佐柳の声は、どんな声だった?
いや、忘れてなんてない。だって数週間前までは毎日のように聞いていた声だ。
忘れるなんて……——
「朝野、もう佐柳のことは忘れようぜ?あんな奴に時間割くのもったいないって」
「ひや、ま……?」
あの一年、何度も何度も言われたこと。半年前まで、よく聞いていたこと。
上手くまだ話し合えていないけど、満身創痍だった佐柳は俺と別れたあともずっと、ずっと大事だって、ずっと好きだって言ってくれて。
『俺の事情に、朝野を巻き込みたくなかった。傷ついて欲しくなかったから』
『朝野とまた一緒にいたい、けど、虫が良すぎるから、嫌なら嫌って言って』
カラオケの一室で話したあの日、あまりにも寂しそうな顔で、佐柳はそう言った。
隣の部屋から聞こえてくる歌声に掻き消されそうな声に、堪らずに痣だらけの身体を抱きしめた。
ちゃんと覚えてる。忘れるわけがない。
「あ、そういや知ってる?」
「……なに?」
目の前の檜山の顔が見えない。
ぼやけて掠れて、それでも声はハッキリと聞こえてくる。
「誰かが死んじゃった時、人って声から忘れてくんだって」
「おっせぇマジで!」
「マジでごめん!電車乗り遅れた!」
しょーがねーなぁーって笑う檜山に、もう一度ごめん!と謝る。スタバ奢るならよし!なんて言い始めた檜山に苦笑いをしながら頷く。謹んで奢らせていただきます。
「てか顔色いいじゃん。どしたの?」
「ん?あぁ、佐柳がいてくれてるからね。そりゃ顔色もいいってもんよ?」
俺の言葉に、檜山は途端に怪訝そうな顔をする。
「なに言ってんだよ」
——佐柳はもう何年も戻ってきてないだろ
「……え?」
檜山の言葉に、足の動きも、呼吸も止まる。
戻ってきていない?いや、んなわけない。だって、だって佐柳は今……。
「声も聞いてねぇからもう思い出せねぇわ」
「いや、そんな……」
はた、と言葉が止まる。
佐柳の声は、どんな声だった?
いや、忘れてなんてない。だって数週間前までは毎日のように聞いていた声だ。
忘れるなんて……——
「朝野、もう佐柳のことは忘れようぜ?あんな奴に時間割くのもったいないって」
「ひや、ま……?」
あの一年、何度も何度も言われたこと。半年前まで、よく聞いていたこと。
上手くまだ話し合えていないけど、満身創痍だった佐柳は俺と別れたあともずっと、ずっと大事だって、ずっと好きだって言ってくれて。
『俺の事情に、朝野を巻き込みたくなかった。傷ついて欲しくなかったから』
『朝野とまた一緒にいたい、けど、虫が良すぎるから、嫌なら嫌って言って』
カラオケの一室で話したあの日、あまりにも寂しそうな顔で、佐柳はそう言った。
隣の部屋から聞こえてくる歌声に掻き消されそうな声に、堪らずに痣だらけの身体を抱きしめた。
ちゃんと覚えてる。忘れるわけがない。
「あ、そういや知ってる?」
「……なに?」
目の前の檜山の顔が見えない。
ぼやけて掠れて、それでも声はハッキリと聞こえてくる。
「誰かが死んじゃった時、人って声から忘れてくんだって」

