104Hzから愛を込めて

 小さな悲鳴を上げて、飛び起きる。
 外はまだ暗い。時計が見えないからわからないけど、多分まだ深夜だ。
 隣で寝ていた佐柳の姿に、ほっと息を吐く。

「……っ、……ン」
「ぁ……ごめ、起こした……」

 すぐ寝る、という前に、佐柳の手が伸びる。そっと涙を拭われ、腕を引かれた。ぽすんっと腕の中に入れられ、柔らかく抱きしめられる。
 トクトクと優しく響く心音に、ほぅ……と息を吐く。どこか甘い匂いと、俺が愛用しているシャンプーの匂いが混ざって、ゆったりと眠気を運んでくれた。

「ん、ふふ……くすぐってぇよ」

 わしゃわしゃと襟足を撫でられ、思わず身を捩る。薄らと開いた目が、じっと俺を見つめている。暗闇でもわかる綺麗な目に、どうしようもなく泣きたくなった。
 いつもなら、取るに足らない話か、歌詞のない歌を歌ってくれる掠れた声がない。
 たったそれだけで、寂しく思ってしまう。あーだめだめ、嫌な夢見て弱ってんだ、俺。
 一番困ってて、大変なのは佐柳なのに。ワガママなんて言ったら駄目デショ。
 泣きそうな顔でもしてたのか、いつもなら目を閉じるのに、ずーっと開いたまんまになっている。逸らすことなく見つめられて、少し気恥ずかしくなってしまう。

「さーなぎ」

 頬を撫でながら、俺は佐柳を呼ぶ。
 開いた目は「なに?」と言いたげで、それと同じくらい眠たそうだ。

「ありがとね」

 それだけ告げると、佐柳はようやく目を閉じた。
 数分もしないうちに、規則正しい寝息が聞こえてくる。俺よりも背が低く、男にしては少し華奢な身体を抱きしめ、同じように目を閉じた。