大学の講義が終わり、ぐーっと伸びをする。
ついついあれもこれもと、興味があるもの全てを取ったせいで、俺——朝野光太は常に課題に追われていた。
そんな日々の中で数少なく講義が早く終わる日。暗くなる前に帰りたいけど、その前に夕飯のこと考えねーとだし……。
とぼんやり考えながらスマホの画面を見ると、珍しい奴からの連絡が入っていた。
佐柳遥。
高校の時から付き合っている、同い年の男。
佐柳について説明しろ、と言われたら俺は迷わずに「何を考えているのかわからない」と答える。
表情差分が三枚しかないような無表情っぷり。自己主張というものが欠落したかのような受動的な性格。あまり話さない、人見知りで臆病な奴。その癖、人一倍お人好しで穏やか。子供や動物にやたらと懐かれる、不思議な奴。
この時間はまだ講義中だろうに、どうかしたのか。トーク画面を開き、文字を目で追う。
『声、出なくなった』
短い一文から、今にも泣きそうな佐柳の声が聞こえた気がして、迷わず鞄を引っ掴み、教室を飛び出した。

