タルトをひとくち食べさせて

早瀬くんと出会って1ヶ月ちょっと。
お昼ご飯は毎日一緒に食べるようになり、
お互いの部活が休みの日は駅前のスイーツ巡り。
場所はいつも早瀬くんが決めてくれる。
どこも当たりのお店ばかりだ。

それと色んな話をするようになった。
学校の話題だけじゃなく、
好きな音楽、漫画、ゲーム、映画のことなどなど。

そんな日々を過ごす中、
いつしか梅雨は明けていて、
夏の一大イベント夏祭りがやってきた。
早瀬くんとは直接約束したわけじゃないけど、
開催日の1週間前に集合時間と場所が送られてきた。
とても彼らしくて、何より嬉しかった。

そして当日。
「あ、やっほー…って浴衣!?え、浴衣じゃん!」
「う、うん。家にあったやつ、着てみた。」
「えー似合ってるじゃん。いいねぇ〜」
「早瀬くん、も。その服かっこいいね」
「え、ほんと?!嬉しい〜この前買ったばっかなんだよね〜」

いつも通りを装ってるけど、耳が真っ赤だ。
早瀬くんはとてもわかりやすい。

「なんか浴衣、恥ずかしい、かも。」
「いやいや、大丈夫。似合ってるから…写真一緒に撮ろっか」
「う、うん。」
「じゃあ、はい!チーズッ!」パシャ

いつものようにスマホを確認し、

「うん。よく撮れてる」

そう言うと大事そうにスマホをポケットにしまった。

「じゃあ早速、夏祭り行っちゃおっか〜!」
「うん!」
「まずはりんご飴だよね。次はカステラとか…焼きそばも食べないとね。」

そしてまたいつも通り僕の手を優しく握り、僕を連れて行く。



「あれ…早瀬くん、どこだろ…」

お祭りを楽しみはじめて早1時間。
トイレ休憩から戻ると、
さっきまでそこにいたはずの早瀬くんの姿がない。
ここにいたはずなのにな。

周りを見ても見つからない。
トークアプリを見てみるが、何もきていない。

急に不安に襲われる。
もしかして、帰っちゃった…?
楽しくなかった、かな…
思考を巡らせてしまう。

いや。大丈夫。大丈夫…
この1ヶ月の早瀬くんとの日々がそれを証明してくれる。
大丈夫。とにかく周りを探してみよう。