タルトをひとくち食べさせて

「いつきくん、いつきくんってば!」

後ろから声をかけられてハッとなり、
足を止めた。

「ご、ごめん。友達と話してたのに……!?」

僕の言葉なんか聞いてないようで、
早瀬くんは僕を後ろから抱きしめた。

「いーよ。別に。てか友達っていうか同じ部活の奴らってだけ。仲良くなんかないよ。」

少し申し訳なさそうに優しくそれでもしっかりと僕を抱きしめる。

「…ありがとうね。」
「こちらこそ。」

初めて聞く彼の弱々しい感謝の言葉に、
すかさず僕も返答をする。

「何でこちらこそなの?…まぁいっか。」
「へへ。」
「なんか。助けられちゃったな〜。」
「不満なの?」
「いや?カッコよく夏祭りをエスコートしてあげようと思ってたんだけどな〜って。…って耳真っ赤だよ?どうしたの?」

多分、今いつもの意地悪な笑顔を後ろで浮かべてる。
確認しなくても声色でわかる。

「そ、そういう早瀬くんも、真っ赤なんじゃない?」
「へへ。お揃い、かもね?」
「うん。」

僕を抱きしめていた腕を外し、
向かい合うように僕の目の前にやってきた。
僕の目線の高さと合うように少し屈んで、
やっぱり真っ赤な顔で僕を見つめる。

「…ねぇ。さっきの、さ。アイツらとの会話のことなんだけど…」
「うん。」


早瀬くんの声が聞きたいのに、
僕の心臓がうるさい。
きっと早瀬くんにも聞かれているかもしれない。
でも、それでもいい。
その方がいいと思えた。


「俺、さ。

 いつきくんのこと。大好き。なんだよね。」


「僕、も早瀬くんのことが…だい、すきだよ!」

僕も彼を安心させたくて、
同じ気持ちだよっていうのを伝えたくて、
心からの笑顔を彼に向けた。

一瞬、鳩が豆鉄砲を的な顔をしたかと思うと
泣きそうな顔で僕を、今度は前から抱きしめた。

「ほんとに?」
「本当に。」

僕の答えに抱きしめる力が強まる。

「うれしい…!大好き!大好きだよ。いつきくん!」

ピュ〜〜…ドン!…ドンッ!

「わっ!花火!始まってる!ここからじゃ見れない!早く見えるとこ行こ!」

顔をゴシゴシと拭き、
僕の手を恋人繋ぎでしっかりと繋ぎ、
僕の歩くペースを熟知してる早瀬くんは、
ゆっくりと歩き出す。

「”来年”はさ、最初から見ようね!」
「うん。来年も、一緒に行こう。」