予報通りの雨。
いつもこの時間に窓から見えるはずの運動部達の姿は勿論ない。
無音の家庭科室に響く、
彼ら彼女らの少しうるさいくらいの掛け声や歓声をBGM代わりにしてる僕的には少し寂しい状況だ。
「梅雨、はやく明けないかな〜…」
ピピピッ!ピピピッ!ピピピッ!…
「わっ!」
反射的に音の出所、
テーブルの上にあるキッチンタイマーのボタンを押す。
タルトの完成の合図だ。
まぁ、もう少しやることが残ってるけど。
冷蔵庫から出したタルト生地は、見た目・香り・固さ全てにおいて美味しそうだった。
個人的に過去イチの出来かも。
最後の仕上げで生地の上にホイップや切り分けておいたイチゴを載せていく。
これにナパージュを塗り終わったら…
「かんせ〜い。」
雨音だけが響くぼっちの部室にも彩りを加えたところで、
イチゴのタルトの完成だ。
食べる前に部活動の記録用に色んな角度からタルトを撮っていく。
上から、横から斜めから。
写真を確認。
うん。どれも美味しそうに写ってる。
カメラをしまって、代わりに次は包丁を取り出す。
タルトを綺麗な4等分に切り分け、
ひとつを皿に載せて席に着く。
高校の部活、ましてや部員たった1人、かつ去年新設の調理部。
そこまで手の込んだものは作れないが、
一生懸命作ったスイーツを食べるこの時間は、
何にも代え難い至福の時間だ。
「いただきます。」
フォークで先端の方を刺しひとくち頂く。
…美味しい。やっぱり味も過去イチ。
口に運ぶ手が止まらないほど。
強いて言うならもう少し生地の焼き時間を…
「ねぇ、何食べてんの〜?」
「わっ!!」
「おっと。」
急に背後から声をかけてきた男は、
僕が椅子から転がりそうになったのを手で支えてくれた。
いきなりの出来事なのにすごい瞬発力。
誰かと思い、顔を見てみると、
ゲームや漫画とかでしか見ないようなすごく顔の整ったイケメンがそこにいた。
彼は僕を椅子に丁寧に座り直させ、机の上を覗き込む。
体操服姿…どこかの運動部の人?…だろうか…
「へぇ〜タルト?おいしそ!これ、君が作ったの?」
「え、あ、はい!…えとあの。誰…で、すか?」
「ん?俺?俺は、早瀬 海都だよ?」
さも”皆さんご存知の”みたいな感じだけど…
「はや…せ…?」
「…あれ、え!?知らない?!」
「はい…し、しらない…です。」
「、え!?」
僕の返答にだいぶびっくりした顔になっている。
鳩が豆鉄砲を〜ってこんな顔のこと言うのかな。
本物初めてみたかも。
「え、え、え!?陸上部の!”海都”だよ?いつもこの窓の目の前で良いタイム出して褒められてる短距離専門の”海都”!知らない?」
僕に思い出してもらうためなのか、様々な情報を出してくれるが全くピンとこない。
「カイト、さん…。…やっぱり知らないかも、です。ごめんなさい。」
「そっかぁ…ここ最近いっつも見てくれてるからさ、知ってくれてるかもって思ってたんだけどな。」
まあ思い当たる節はいくつもあるが、
別に特定の誰か1人を追っていた訳じゃない。
焼いたり冷やしたりの待ち時間にボーっとグラウンドを眺めてただけだし。
「ごめんなさい。わからなくて…」
「いやいや、別に!俺の思い上がりだし?」
「あははは…」
「で?君、名前は?なんていうの?」
「あ、すみません。えと、青井、一輝です…」
「いつきくん。いつきくんね。よろしく!んで、いつきくんは何でここでタルト食ってんの?」
「りょ、調理部なので、作った、ので。それで…」
「いつきくんは何年生?」
「え、っと2年です。」
「やっぱり一緒じゃん!はい!敬語今からなし!」
「は、はい。わかりまし…」
「敬語!!」
「うっ。わ、わかった…」
ものすごい速さで切り替わる会話に何とか着いていけて…
着いていけてるか?いや絶対着いていけてない。
まさか学校での久しぶりの会話がこんな陽キャ(しかもイケメン)とだなんて…
ちゃんと返答できてるんだろうか…
「…んね!聞いてる?いいよね?」
「え、あ、はい…」
「また敬語!もう一回!やり直し!」
早瀬くんは少し意地悪に笑った。
「う、うん。わかった。いい、よ。」
「ほんと!?やった!」
今度は子供のように嬉しそうに笑いながら、
食べかけていたタルトをひと欠片、口にした。
「うん。おいしい!やっぱりおいしい!見た目通り!いつきくんは料理が上手なんだね〜」
「え!…あ、ありがとう…」
「あ!やっと笑った!ねぇ残りのタルトも…」
キーン、コーン、カーン、コーン…
「あー!!!やっべ、もう下校時刻なるじゃん!」
「え、もうそんな時間?!」
「じゃあまたね!いつきくん!いつきくんも早く帰るんだよ!気をつけてね!ばいばーい!」
僕の返答を待たずに、
すごい速さで家庭科室を出ていく姿は、流石陸上部短距離専門って感じだった。
「”またね”、か…」
形式的なものなんだろうとわかっていても少し嬉しい。
いや、だいぶ嬉しい。
片付けをする手が止まっちゃうくらい嬉しい。
だって、
そんなこと言われたの初めてだったから。
いつもこの時間に窓から見えるはずの運動部達の姿は勿論ない。
無音の家庭科室に響く、
彼ら彼女らの少しうるさいくらいの掛け声や歓声をBGM代わりにしてる僕的には少し寂しい状況だ。
「梅雨、はやく明けないかな〜…」
ピピピッ!ピピピッ!ピピピッ!…
「わっ!」
反射的に音の出所、
テーブルの上にあるキッチンタイマーのボタンを押す。
タルトの完成の合図だ。
まぁ、もう少しやることが残ってるけど。
冷蔵庫から出したタルト生地は、見た目・香り・固さ全てにおいて美味しそうだった。
個人的に過去イチの出来かも。
最後の仕上げで生地の上にホイップや切り分けておいたイチゴを載せていく。
これにナパージュを塗り終わったら…
「かんせ〜い。」
雨音だけが響くぼっちの部室にも彩りを加えたところで、
イチゴのタルトの完成だ。
食べる前に部活動の記録用に色んな角度からタルトを撮っていく。
上から、横から斜めから。
写真を確認。
うん。どれも美味しそうに写ってる。
カメラをしまって、代わりに次は包丁を取り出す。
タルトを綺麗な4等分に切り分け、
ひとつを皿に載せて席に着く。
高校の部活、ましてや部員たった1人、かつ去年新設の調理部。
そこまで手の込んだものは作れないが、
一生懸命作ったスイーツを食べるこの時間は、
何にも代え難い至福の時間だ。
「いただきます。」
フォークで先端の方を刺しひとくち頂く。
…美味しい。やっぱり味も過去イチ。
口に運ぶ手が止まらないほど。
強いて言うならもう少し生地の焼き時間を…
「ねぇ、何食べてんの〜?」
「わっ!!」
「おっと。」
急に背後から声をかけてきた男は、
僕が椅子から転がりそうになったのを手で支えてくれた。
いきなりの出来事なのにすごい瞬発力。
誰かと思い、顔を見てみると、
ゲームや漫画とかでしか見ないようなすごく顔の整ったイケメンがそこにいた。
彼は僕を椅子に丁寧に座り直させ、机の上を覗き込む。
体操服姿…どこかの運動部の人?…だろうか…
「へぇ〜タルト?おいしそ!これ、君が作ったの?」
「え、あ、はい!…えとあの。誰…で、すか?」
「ん?俺?俺は、早瀬 海都だよ?」
さも”皆さんご存知の”みたいな感じだけど…
「はや…せ…?」
「…あれ、え!?知らない?!」
「はい…し、しらない…です。」
「、え!?」
僕の返答にだいぶびっくりした顔になっている。
鳩が豆鉄砲を〜ってこんな顔のこと言うのかな。
本物初めてみたかも。
「え、え、え!?陸上部の!”海都”だよ?いつもこの窓の目の前で良いタイム出して褒められてる短距離専門の”海都”!知らない?」
僕に思い出してもらうためなのか、様々な情報を出してくれるが全くピンとこない。
「カイト、さん…。…やっぱり知らないかも、です。ごめんなさい。」
「そっかぁ…ここ最近いっつも見てくれてるからさ、知ってくれてるかもって思ってたんだけどな。」
まあ思い当たる節はいくつもあるが、
別に特定の誰か1人を追っていた訳じゃない。
焼いたり冷やしたりの待ち時間にボーっとグラウンドを眺めてただけだし。
「ごめんなさい。わからなくて…」
「いやいや、別に!俺の思い上がりだし?」
「あははは…」
「で?君、名前は?なんていうの?」
「あ、すみません。えと、青井、一輝です…」
「いつきくん。いつきくんね。よろしく!んで、いつきくんは何でここでタルト食ってんの?」
「りょ、調理部なので、作った、ので。それで…」
「いつきくんは何年生?」
「え、っと2年です。」
「やっぱり一緒じゃん!はい!敬語今からなし!」
「は、はい。わかりまし…」
「敬語!!」
「うっ。わ、わかった…」
ものすごい速さで切り替わる会話に何とか着いていけて…
着いていけてるか?いや絶対着いていけてない。
まさか学校での久しぶりの会話がこんな陽キャ(しかもイケメン)とだなんて…
ちゃんと返答できてるんだろうか…
「…んね!聞いてる?いいよね?」
「え、あ、はい…」
「また敬語!もう一回!やり直し!」
早瀬くんは少し意地悪に笑った。
「う、うん。わかった。いい、よ。」
「ほんと!?やった!」
今度は子供のように嬉しそうに笑いながら、
食べかけていたタルトをひと欠片、口にした。
「うん。おいしい!やっぱりおいしい!見た目通り!いつきくんは料理が上手なんだね〜」
「え!…あ、ありがとう…」
「あ!やっと笑った!ねぇ残りのタルトも…」
キーン、コーン、カーン、コーン…
「あー!!!やっべ、もう下校時刻なるじゃん!」
「え、もうそんな時間?!」
「じゃあまたね!いつきくん!いつきくんも早く帰るんだよ!気をつけてね!ばいばーい!」
僕の返答を待たずに、
すごい速さで家庭科室を出ていく姿は、流石陸上部短距離専門って感じだった。
「”またね”、か…」
形式的なものなんだろうとわかっていても少し嬉しい。
いや、だいぶ嬉しい。
片付けをする手が止まっちゃうくらい嬉しい。
だって、
そんなこと言われたの初めてだったから。
