君の隣にいけるまで

(稜目線)

最初は不思議な人だと思った。

急に話しかけてきた、別クラスの橘くん。

受験の時に隣だったからって理由だけで、こんなに話しかけてくる人いるんだなと思った。

最初は廊下ですれ違った時とか、教室の前を通った時だけだった。

なのに今では――

「りょ〜ぉくん!」

図書室にまで来るようになった。

本を読んだり、机に突っ伏して寝たり、急に話しかけてきたり。

……何しに来てるんだろう、この人。

まあ、うちの高校の図書室は人がほとんど来ない。

別に迷惑ではないからいいんだけど。

そんなある日、ふと気になって聞いてみた。

「橘くんって、本好きなの?」

すると返ってきた言葉は、予想していたものとは全然違った。

「橘くん!?」

なんでそんな驚くんだろう。

「名前呼んでくれて嬉しいんだけど、澪って呼んでくれない?」

「……え?」

「距離感じる!お願い!」

あ…また始まった。

「お願いお願いお願い〜!」

(またこれだ……)

この人はよく甘えてくる。

しかも甘え方が上手い。

そして全然引かない。

結局、俺が折れるしかない。

「……わかったから」

小さくため息をつく。

「……みお」

一瞬静かになった。

「そう!それ!!ありがとう!」

なんで感謝されてるんだろう。

でも顔を見ると、すごく嬉しそうだった。

よくわからない。

よくわからないけど――

嬉しそうに笑う顔を見ていると、別にそれでもいいかと思えた。

そんなことを考えながら、俺はまた委員会の仕事へ視線を戻した。