外に出るのも疲れるし出前も味気ないとの意見で一致したので、夜は適当にふたりでつくることにした。
「ところで、できるの。おまえ」
まったく信用していない様子に、最低限はと素直に申告する。日本にいるあいだは寮だったし、ドイツに行ってからは、食事や部屋の掃除といった管理は人に任せている。
台所に立った俺の手つきを見守っていた先輩が、本当に最低限だなと呟く。
「先輩も俺と似たり寄ったりだと思ってました」
うまいとは言わないが、やりなれている風情なのが少し意外だった。
「おまえな、こっちが何年ひとり暮らししてると思ってんだよ」
「でも仕事、夜遅いんでしょ?」
「つくれるときはつくる。適当だけど」
白菜をざく切りしながら、おもむろに先輩が言った。
「でも、富原のほうがうまいな」
「なんで富原さん?」
「たまにうちで飲むから」
当たり前の顔で言うのに、変わらないなぁと懐かしくなる。
同室だからといって必ずしも仲がよくなるわけではないから、純粋に性格の相性がよかったんだろう。俺の知る限り、あの世代のチームメイトのなかではこのふたりの仲が一番いい。
「そのときにいそいそつくってる。あいつ凝り性だから」
「なんかいいな」
「頼んだら喜んですると思うから、頼んでやれば? あいつ人の世話焼くの好きだよな」
誰の世話でも好き好んで焼くわけではないと思うし、いいなと思ったのはそこではなかったのだが、そうですねと頷く。
「ちなみに、俺がつくっても進化のない味って言われるんだけど」
「なんかいいな」
「なにが」
いや、そういう変遷を知っているということが。
言ったところで、よくわからないという顔をされると思ったので、へらりと笑う。
「なんとなく。あいかわらず仲がよさそうで」
「べつに普通だけど」
答えながら、先輩がものすごく適当に調味料をぶち込んでいて、だからだと思った。言わなかったが。
手慣れているから目分量でというよりは、はかるのも面倒だし、まぁこのくらいで大丈夫だろうというのが透けて見える雑さ加減。
基本的に真面目なくせに、他人に迷惑をかけないと判断すると途端にずぼらになる。そういうところも昔から変わっていないらしかった。
「イギリスの料理って合理的だと思うんだよなって言ったら、鼻で笑われた」
「合理的?」
「薄味でつくっといて、食うやつが自分に都合のいいように調味料かけて調整しろってやつ」
「あぁ」
なんというか、想像にやすかった。
「だから、適当になんとかして」
「まぁ、これ、イギリス料理でもなんでもなくなべですけどね」
思わず言ってしまってから、あ、と思ったが、先輩は呆れたように笑っただけだった。
「本当にかわいくなくなったな、おまえ」
「ところで、できるの。おまえ」
まったく信用していない様子に、最低限はと素直に申告する。日本にいるあいだは寮だったし、ドイツに行ってからは、食事や部屋の掃除といった管理は人に任せている。
台所に立った俺の手つきを見守っていた先輩が、本当に最低限だなと呟く。
「先輩も俺と似たり寄ったりだと思ってました」
うまいとは言わないが、やりなれている風情なのが少し意外だった。
「おまえな、こっちが何年ひとり暮らししてると思ってんだよ」
「でも仕事、夜遅いんでしょ?」
「つくれるときはつくる。適当だけど」
白菜をざく切りしながら、おもむろに先輩が言った。
「でも、富原のほうがうまいな」
「なんで富原さん?」
「たまにうちで飲むから」
当たり前の顔で言うのに、変わらないなぁと懐かしくなる。
同室だからといって必ずしも仲がよくなるわけではないから、純粋に性格の相性がよかったんだろう。俺の知る限り、あの世代のチームメイトのなかではこのふたりの仲が一番いい。
「そのときにいそいそつくってる。あいつ凝り性だから」
「なんかいいな」
「頼んだら喜んですると思うから、頼んでやれば? あいつ人の世話焼くの好きだよな」
誰の世話でも好き好んで焼くわけではないと思うし、いいなと思ったのはそこではなかったのだが、そうですねと頷く。
「ちなみに、俺がつくっても進化のない味って言われるんだけど」
「なんかいいな」
「なにが」
いや、そういう変遷を知っているということが。
言ったところで、よくわからないという顔をされると思ったので、へらりと笑う。
「なんとなく。あいかわらず仲がよさそうで」
「べつに普通だけど」
答えながら、先輩がものすごく適当に調味料をぶち込んでいて、だからだと思った。言わなかったが。
手慣れているから目分量でというよりは、はかるのも面倒だし、まぁこのくらいで大丈夫だろうというのが透けて見える雑さ加減。
基本的に真面目なくせに、他人に迷惑をかけないと判断すると途端にずぼらになる。そういうところも昔から変わっていないらしかった。
「イギリスの料理って合理的だと思うんだよなって言ったら、鼻で笑われた」
「合理的?」
「薄味でつくっといて、食うやつが自分に都合のいいように調味料かけて調整しろってやつ」
「あぁ」
なんというか、想像にやすかった。
「だから、適当になんとかして」
「まぁ、これ、イギリス料理でもなんでもなくなべですけどね」
思わず言ってしまってから、あ、と思ったが、先輩は呆れたように笑っただけだった。
「本当にかわいくなくなったな、おまえ」



