玄関で偶然鉢合わせた私と桐生さんは軽く挨拶を交わしたあと、予約されていた個室へ向かった。
和風のお店で床も壁も木で統一されていて、ほっとするような温かみがある。
部屋へ向かうあいだ彼は無口で、特に何も話さなかった。
個室に入ると、すでにメンバーは揃っていた。
男性四人に女性四人。私たちを合わせて十人。なるほど五対五の合コンらしい。
席はすでに埋まっていて、私は必然的に端の席に腰を下ろした。
目の前には桐生さんが座る。
そっと視線を向けると目が合って、ドキッとした。すぐ逸らしてしまう。
……やりにくい。
こういう対面ってどこに視線を置けばいいのかわからなくなる。
席は掘りごたつになっていて、そっと足を伸ばしたとき足先が何かに触れた。
「あ、ごめん」
桐生さんがすぐにそう言った。
どうやら、彼の足に当たってしまったらしい。
「い、いえ……」
気まずくて、思わず下を向く。
桐生颯真。
彼も、この合コンのメンバーだったらしい。玄関で挨拶したときに、初めてその事実を知った。
まあ、そりゃ誘われるよね。彼、すごく人気あるし。
でも、ちょっと意外かも。来るんだ、こういうところ。
彼女いないのかな。すごくモテそうなのに。いや、絶対いるでしょ。
そんなことを考えながら見つめていると、彼の視線がふっとこちらを向いた。
目が合って心臓が跳ねる。また、すぐ逸らしてしまった。
し、しまった。またやった……。さすがに失礼だよね。
恐る恐る視線を戻すと、まだ彼は私を見ていた。今度は視線がしっかり重なる。
逸らしたい気持ちを必死に堪え、ぎこちなく笑った。
「聞いていいかな? 望月さんはなんでここに来たの?」
しれっと聞いてくる。直球だな。
まあ、こういうときにズバッと聞くのは、桐生さんらしい。彼は誰に対しても臆することなく、意見をはっきり言えるから。
私はそうじゃないけど。
でも、ちょっと引っかかるな。どういう意味なんだろう。
合コンに来るのが意外、ってこと? 私には似合わない? ……まあ、自分でもそう思うけど。
人から言われると、あまりいい気分じゃない。
「誘われたんです、同僚に。私が合コンに来ちゃいけませんか?」
少しだけ意地を込めて言った。
「いや、違うんだ。
なんというか……君は、こういうところに来るタイプには見えなかったから」
怒らせたと思ったのか、桐生さんは少し焦ったように視線を泳がせた。
まあ、確かに私はそういうタイプじゃない。
誘われたから来ただけで、普段なら声もかからないし、自分から参加することもない。
やっぱり、他人から見てもそう映るんだ……別にいいけどさ。
「桐生さんはなんで来たんですか? あなたも、こういうところに来るタイプじゃないと思ってました。
彼女はいないんですか?」
少しきつい言い方になってしまった。
私らしくない、なぜだろう。
この人の空気かな。思ったより柔らかくてつい。
桐生さんは苦笑した。
「俺も君と同じだよ。同僚から頼まれた」
そう言うと彼はすっと私のほうへ身を寄せてきた。
急に縮まる距離。端正な顔が近くなり、心臓がばくっと跳ねる。
彼は口元を手で隠し、こそこそと囁いた。
「あいつ……川本」
視線の先を追うと、川本さんがいた。同じ部署の男性社員だ。
なるほど。桐生さんも巻き込まれた側らしい。
「そうだったんですね」
小さくつぶやいて、私は急いで距離を取った。
近すぎて緊張する。
桐生さんも姿勢を戻すと、今度は正面からまっすぐに私を見てきた。
「それに、彼女はいないよ」
その声音はなぜか少し強かった。揺れる瞳が、じっと私をとらえる。
な、なに? なんでそんな目で。
ていうか。
彼女、いないって――マジで?
和風のお店で床も壁も木で統一されていて、ほっとするような温かみがある。
部屋へ向かうあいだ彼は無口で、特に何も話さなかった。
個室に入ると、すでにメンバーは揃っていた。
男性四人に女性四人。私たちを合わせて十人。なるほど五対五の合コンらしい。
席はすでに埋まっていて、私は必然的に端の席に腰を下ろした。
目の前には桐生さんが座る。
そっと視線を向けると目が合って、ドキッとした。すぐ逸らしてしまう。
……やりにくい。
こういう対面ってどこに視線を置けばいいのかわからなくなる。
席は掘りごたつになっていて、そっと足を伸ばしたとき足先が何かに触れた。
「あ、ごめん」
桐生さんがすぐにそう言った。
どうやら、彼の足に当たってしまったらしい。
「い、いえ……」
気まずくて、思わず下を向く。
桐生颯真。
彼も、この合コンのメンバーだったらしい。玄関で挨拶したときに、初めてその事実を知った。
まあ、そりゃ誘われるよね。彼、すごく人気あるし。
でも、ちょっと意外かも。来るんだ、こういうところ。
彼女いないのかな。すごくモテそうなのに。いや、絶対いるでしょ。
そんなことを考えながら見つめていると、彼の視線がふっとこちらを向いた。
目が合って心臓が跳ねる。また、すぐ逸らしてしまった。
し、しまった。またやった……。さすがに失礼だよね。
恐る恐る視線を戻すと、まだ彼は私を見ていた。今度は視線がしっかり重なる。
逸らしたい気持ちを必死に堪え、ぎこちなく笑った。
「聞いていいかな? 望月さんはなんでここに来たの?」
しれっと聞いてくる。直球だな。
まあ、こういうときにズバッと聞くのは、桐生さんらしい。彼は誰に対しても臆することなく、意見をはっきり言えるから。
私はそうじゃないけど。
でも、ちょっと引っかかるな。どういう意味なんだろう。
合コンに来るのが意外、ってこと? 私には似合わない? ……まあ、自分でもそう思うけど。
人から言われると、あまりいい気分じゃない。
「誘われたんです、同僚に。私が合コンに来ちゃいけませんか?」
少しだけ意地を込めて言った。
「いや、違うんだ。
なんというか……君は、こういうところに来るタイプには見えなかったから」
怒らせたと思ったのか、桐生さんは少し焦ったように視線を泳がせた。
まあ、確かに私はそういうタイプじゃない。
誘われたから来ただけで、普段なら声もかからないし、自分から参加することもない。
やっぱり、他人から見てもそう映るんだ……別にいいけどさ。
「桐生さんはなんで来たんですか? あなたも、こういうところに来るタイプじゃないと思ってました。
彼女はいないんですか?」
少しきつい言い方になってしまった。
私らしくない、なぜだろう。
この人の空気かな。思ったより柔らかくてつい。
桐生さんは苦笑した。
「俺も君と同じだよ。同僚から頼まれた」
そう言うと彼はすっと私のほうへ身を寄せてきた。
急に縮まる距離。端正な顔が近くなり、心臓がばくっと跳ねる。
彼は口元を手で隠し、こそこそと囁いた。
「あいつ……川本」
視線の先を追うと、川本さんがいた。同じ部署の男性社員だ。
なるほど。桐生さんも巻き込まれた側らしい。
「そうだったんですね」
小さくつぶやいて、私は急いで距離を取った。
近すぎて緊張する。
桐生さんも姿勢を戻すと、今度は正面からまっすぐに私を見てきた。
「それに、彼女はいないよ」
その声音はなぜか少し強かった。揺れる瞳が、じっと私をとらえる。
な、なに? なんでそんな目で。
ていうか。
彼女、いないって――マジで?
