1ミニッツ短編集ボックス

「あなたは冒険者になりました。なので、あそこを目指してもらいます」

金色の杖を持った女神が囁く。
彼女の指さす先には、桃源郷と名高い土地があった。そこへ向かえば、きっと最高の幸福が待っている――そう下界の人間たちは口を揃えて言っていた。

集められた数多の冒険者たち。
それぞれが武器や防具を身につけ、無言で女神の言葉を待っている。

女神は一歩前に出て、静かに告げた。

「あの桃源郷のような土地には、桃源人と呼ばれる“成しえた人たち”が住んでいます。
彼らは特別に貴い存在ではありません。あなたたちと同じ、人間という種類です」
女神は冒険者たちを見渡した。

「さて、その土地へ行く方法は二つあります」

まず、彼女は遠くの山並みを示した。

「一つは、敵の待ち構える山道を歩く方法」

次に女神は地面を指した。

「もう一つは、エレベーターです。
乗っているだけで、今すぐにでも桃源郷へたどり着くことができます。今の装備のままでも構いません」

冒険者たちはざわめき始めた。

女神は淡々と続ける。

「あなたたちにできることは、この二つの道のうち、どちらを選ぶかを決めるだけです」

金色の杖が静かに床を叩く。

「さあ――
どちらの道から、桃源郷へ向かいますか?」