治癒院にカレルはいなかった。
街の外れの丘に行けばカレルに会える、という治癒院の人の言葉に、リアは心躍らせながら丘に向かって歩いていた。
ロンネルが一緒に行くと言ったけど置いてきた。
あいつは余計な一言が多いから雰囲気をぶち壊しにしかねない。
街を見下ろす丘には緑の若草にポツポツと岩が目立つ。一番見晴らしの良いところに自然の岩ではない岩がひとつ。
彼はそこで何人かの村人と共に石に祈りを捧げていた。
顎のすぐ下で手を組み、一心に祈りを捧げる姿に胸が高鳴る。
伏せた目のまつ毛は長く、鼻はすっと細くとおり、柔らかな唇を引き締めていた。金色の髪が、暖かな風になびいている。悲しげな横顔が儚くも美しい。
思わず緩みそうになる口元を慌てて引き締めた。
不謹慎だ。
というのも彼が祈っているあの石。
あれは墓石に違いない。戦や魔獣に襲われたりで、亡骸が戻らなかった故人の冥福を祈るための共同の墓石。
石の前で祈りを唱えていた僧衣姿の初老の男が、本を閉じる。
それが儀式が終わった合図のように、みなが祈りをやめて目を開けた。
涙をぬぐう者もいれば家族同士抱き合う者もいる。
カレルは一人、立ち尽くし石を見つめていた。
声をかけるタイミングに悩む。
いったん引き返して仕切り直そうかなと思った時、こちらに向いた一人が、リアに気づいた。
「あの方はたしか……」
ざわざわと囁き合い、みなの視線が集まる。
「ベロック村で助けてくれたという……」
そしてあっという間に囲まれた。
一番前にきた僧衣のおじいちゃんがにこやかに話しかけてくる。
「貴方様はベロック村で治癒魔法を使い怪我人を手当てしてくださった魔法使いですね」
「そ、そうだけど」
そう答えるとおじいちゃんが帽子を頭から外すと薄くなった頭を恭しく下げた。
「お噂には伺っておりましたが、こんなにお若い方とは。村の者たちに代わりにお礼を申し上げます」
僧侶に習い周りの人たちも頭をさげる。
村人たちの真剣さに一歩下がりたじろいだ。
……こんなに感謝されるとは思わなかった。
あの時、人助けをしたのは本意じゃない。
魔獣が邪魔だから、ロンネルに追い払うように言ったら、ロンネルがでは怪我人の方を頼む、って行ってしまったから渋々だった。
「た、たまたまだから。それに私もこの街の人に助けてもらったし」
カレルの方に視線を向ける。
と、遠巻きに見ていた彼と目が合う。
すると悲しげだった表情がふわりとほころび、目を細めて微笑んでくれた。あの反応は私のことを覚えてくれてる。
「か、介抱してくれたあの人に、お礼を言いに来たんだ」
「ああ、そうでしたか。カレル」
おじいちゃんがカレルを呼ぶ。
「わざわざお礼を言いに来てくださったそうだ。我々は街に戻るから、この辺を案内して差し上げなさい」
気がきくとっても良い人。ロンネルとは大違い。
このおじいちゃん大好きかも。
街の外れの丘に行けばカレルに会える、という治癒院の人の言葉に、リアは心躍らせながら丘に向かって歩いていた。
ロンネルが一緒に行くと言ったけど置いてきた。
あいつは余計な一言が多いから雰囲気をぶち壊しにしかねない。
街を見下ろす丘には緑の若草にポツポツと岩が目立つ。一番見晴らしの良いところに自然の岩ではない岩がひとつ。
彼はそこで何人かの村人と共に石に祈りを捧げていた。
顎のすぐ下で手を組み、一心に祈りを捧げる姿に胸が高鳴る。
伏せた目のまつ毛は長く、鼻はすっと細くとおり、柔らかな唇を引き締めていた。金色の髪が、暖かな風になびいている。悲しげな横顔が儚くも美しい。
思わず緩みそうになる口元を慌てて引き締めた。
不謹慎だ。
というのも彼が祈っているあの石。
あれは墓石に違いない。戦や魔獣に襲われたりで、亡骸が戻らなかった故人の冥福を祈るための共同の墓石。
石の前で祈りを唱えていた僧衣姿の初老の男が、本を閉じる。
それが儀式が終わった合図のように、みなが祈りをやめて目を開けた。
涙をぬぐう者もいれば家族同士抱き合う者もいる。
カレルは一人、立ち尽くし石を見つめていた。
声をかけるタイミングに悩む。
いったん引き返して仕切り直そうかなと思った時、こちらに向いた一人が、リアに気づいた。
「あの方はたしか……」
ざわざわと囁き合い、みなの視線が集まる。
「ベロック村で助けてくれたという……」
そしてあっという間に囲まれた。
一番前にきた僧衣のおじいちゃんがにこやかに話しかけてくる。
「貴方様はベロック村で治癒魔法を使い怪我人を手当てしてくださった魔法使いですね」
「そ、そうだけど」
そう答えるとおじいちゃんが帽子を頭から外すと薄くなった頭を恭しく下げた。
「お噂には伺っておりましたが、こんなにお若い方とは。村の者たちに代わりにお礼を申し上げます」
僧侶に習い周りの人たちも頭をさげる。
村人たちの真剣さに一歩下がりたじろいだ。
……こんなに感謝されるとは思わなかった。
あの時、人助けをしたのは本意じゃない。
魔獣が邪魔だから、ロンネルに追い払うように言ったら、ロンネルがでは怪我人の方を頼む、って行ってしまったから渋々だった。
「た、たまたまだから。それに私もこの街の人に助けてもらったし」
カレルの方に視線を向ける。
と、遠巻きに見ていた彼と目が合う。
すると悲しげだった表情がふわりとほころび、目を細めて微笑んでくれた。あの反応は私のことを覚えてくれてる。
「か、介抱してくれたあの人に、お礼を言いに来たんだ」
「ああ、そうでしたか。カレル」
おじいちゃんがカレルを呼ぶ。
「わざわざお礼を言いに来てくださったそうだ。我々は街に戻るから、この辺を案内して差し上げなさい」
気がきくとっても良い人。ロンネルとは大違い。
このおじいちゃん大好きかも。



