旋盤女子高生

 それから1ヵ月後、給料日、2万円。旋盤を直す代金を支払って、作業服を購入してもおつりがくる金額。早速佐藤さんに連絡を入れると「はいよ、こっちも連絡しておくから」とのことだった。



 その後、佐藤さんから連絡が来て修理は今週の土曜日にしてもらうことに。私が休みで修理を見られるようにしてくれたんだと思う。



そして土曜日。佐藤さんと修理の人は時間通りに私の家にやってきた。



「こんにちは、高崎です」



 軽バンから出てきたのは高崎さんという人。実は何回かここに来て旋盤を修理したことが有るらしく、私の事を何となく知っていた。



「まさか昭一郎さんのお孫さんがねぇ」



 そう言いながら荷台から工具箱と交換する新品のベルトを取り出すと工場の中に佐藤さんと一緒に入っていった。



 早速カバーを外すとついていた3本のベルトを外し、新品のベルトに交換していく。何をどうしているのかはよく分からなかったけれど、結構力が必要な事は何となく見ていてわかった。



 そしてまたこの間と同じようにテンションメーターを押し当てて佐藤さんと数字を確認すると「これで使えるよ」と一言。



「ちょっと回して見てくれませんかね」



 高崎さんが佐藤さんにそう言うと、佐藤さんは「ちょっと待っててね」と言って壁に取り付けられていた金属製の箱を開けていくつかのレバーをあげていく。



 すると旋盤に赤いランプが灯った。



「いいですよ」

佐藤さんがボタンを押すと旋盤が回り始めた。



 私の耳に届いたのはいつも聞いていたあの音。まさに機械が動く音。その音に耳を傾けるとなぜだろうか、おじいちゃんがそこに居るような気がしてならなかった。



「大丈夫そうだね」



 佐藤さんはそういうと足で旋盤台の中央に有るレバーのようなものを踏んだ。すると旋盤は停止して、青いランプから赤いランプに点灯が切り替わった。



「じゃあ私はこれで・・・あおいさんでしたっけ?ぜひ、楽しんでくださいね」



「あ、ありがとうございました!」



 反射的にお礼を言ってお辞儀をする。佐藤さんは高崎さんと少しだけ話した後、私が代金を支払い、領収書を受け取った。高崎さんはこの後も仕事があるらしく、工具をしまうと車に乗り込んで行ってしまった。



 佐藤さんと私はそれを見送ると工場の中に再び戻った。



「さてと、どうする?早速やる?」



「あ、もうできるんですか?」



「うん。できるよ、少しだけ説明いるけど」



 というと佐藤さんはさっきと同じように壁に取り付けられていた鉄の箱を開けた。



「この左側の大きいのがメインのブレーカー。それでその隣にある一杯並んでいるブレーカーがそれぞれの機械に繋がってる」



「はい」



「で、今から使う旋盤。この3番ブレーカーを入れると電源が入る」



 ブレーカーがONになると同じようにランプが点灯した。

「ランプが赤色。電気がきてます、今から動けますよって合図ね」



「わかりました」



「で・・・なんだけど」



 佐藤さんはそういうと後ろの棚からいくつか物を持ってきた。



「これが削る材料。ワークって言われるやつね、これを旋盤台に固定するんだけど、固定する場所にある爪のことをチャックっていうのよ。それでこのT字のクランクでチャックを動かすことができるから」



 とワークとそのクランクを渡してきた。



 私は慣れない手つきでチャックをクランクで開くとワークを入れ込み、再度閉めて固定した。



「こんなんでしたよね」



 おじいちゃんもそうだけど、佐藤さんがこうやっているのを昔に見たことがあって何となくどうなるのかはわかっていた。でも今はそれを後ろからじゃなくて本当に自分の手元でやっているのが何だか不思議な感じがした。



「うん。それでいいよ」



 今度は時計のようなものが付いたものを持ってきた。



「これはダイヤルゲージ。ワークの芯出しをするときに使うやつ」



「・・・芯出しってなんですか?」



「まあ簡単に言うと、ワークがキチンと回転するために必要な作業なんだけど・・・これは少し難しいから今回は僕がやるよ」



 そういうと佐藤さんはダイヤルゲージを旋盤に取り付け、クランクで調整してくれた。