旋盤女子高生

「いやー先月、急に1人辞めちゃってね!助かったよ!」



 週末、やってきたのは自宅から自転車で10分くらいの場所にあるホームセンター。履歴書の書き方をネットで検索し、親と学校の先生からの許可証みたいなのを渡すと店長代理と書かれた名札を下げた「田中さん」という男の人が面接をしてくれた。



「話は聞いてるよ、新田さんのお友達だっけ、それでなんでバイトしたいの?」



「あー・・・、社会勉強で・・・」



 こういう時みんなはなんて返事をするのだろうか。かなちゃんに聞いとけば良かった。



「ふふん。わかるよ、高校生だもんなぁ、お金必要だよな」



「ええ・・・そうなんですよ」



 田中さんは机の引き出しから紙を出すと私に見せてきた。



「つい最近レジはセルフサービスのシステムを導入してね。だから基本的にレジ打ちは無い。使い方が分からないお客さんに教えに行くって言うのはあるけど、これはウチの規則で社員がやることになってる」



「なるほど」



「だから滝沢さんには商品の品出しがメインのお仕事をしてもらうことになるわけで・・・もちろん力仕事も多いんだけど、大丈夫そう?」



「はい、やります!」



 田中さんは早速教育係として一色さんという方を紹介してくれた。40代前半くらいの女性の方で社員さん。取り合えず1週間くらいの教育期間を設けたあとに正式にアルバイトになるらしい。



「よろしくね、滝沢さん」

「はい、よろしくお願いします」



 そこからやることを教えて貰ったのだけれど、田中さんが言うように確かに品出しが多い。さらには掃除とかもやるとのこと。早速言われた段ボールを台車へ積み込んだり、棚の中を整えたりすることに。



「確かに種類が多い」



 とかなちゃんが言っていたことを思い出した。ここのホームセンターはいわゆる田舎にあるような店舗で、資材販売には一人では持てないような角材、色んな花が売られていたり、肥料袋がある園芸コーナー、そして水草から熱帯魚など、ペット用品まで販売している。



 しばらく作業をしていると一色さんがやってきて「休憩してきていいよ」と言って200円を渡してきた。



「これでジュースでも飲みなさいな」



「あ、でもここの自販機100円ですよね?これ200円ありますけど」



 一色さんは私の後ろの通路に指をさす。



「・・・あそこで見ているもうひとりの女子高生と行ってきなさい。さっきから気になってるみたいよ」



「あっ」



 通路を見るとそこには同じエプロンを付けたかなちゃんが私を見ていた。



「声かけてくれればよかったのに・・・かなちゃんは何飲む?この炭酸のやつでいい?」



「うん、それでいいです」



 店の裏にある自動販売機。その近くにあった木製のベンチに座ると缶ジュースのプルタブを引っ張って開けた。



「新商品だってさ、おいしいのかな」



「おいしいよそれ」



 なんだかいつもの調子と少し違うかなちゃん。どうしたのだろうか。



「なんか学校と違うね。大人しいというかなんというか」



「・・・猫かぶっておかないと」



「なんで?」



「ほら、ここ親戚が見てるし」



 そういえばそうだ。かなちゃんの親戚の人がいるっていっていたけど、誰なんだろうか。



「あの田中さんって人?」



「ううん、違う。苗字は同じ新田理子っていう女の人なんだけど、いま本社研修に半年行ってていないの。だからあの人は副店長。今は店長代理だけど」



「あーそれで名札がね」



 名札に書かれていた店長代理の意味が分かった。そうか。でもそれなら別に普段通りのかなちゃんでも別にいい気がするのだけれど、と思った。



「わかってないなぁ、あおいは・・・。まあ理子さんが帰ってきたら何となくわかるよ」



「ふうん」



 私は持っていたジュースを飲むと空を見上げた。