異世界で冒険を! 昭和時代でスローライフを! オレたちの世界交換ファンタジア!

「おー! 結構発展してんじゃん!」

 駅から出て広がる町に三月が驚いている。 

 スマホの中の町はもっと発展していたが、異世界の家の周りからしたら数百年は進んでいるだろうよ。

「路面電車まであるんだ! 初めて見たよ」

「平成にはないのか?」

「函館とか博多にはある記憶があるな。他はどうだろう? 東京は全滅してたはずだ」

「激動は昭和が終わるまで続くのか」

「平成になっても激動だったよ。きっと何十年何百年過ぎようとも激動なんだろうさ、この世界は」

 見た目は若いが、四十年以上は生きている男。達観したことを言う。

「路面電車に乗るのか?」

「いや、歩いて行ける距離にある。乗るまでもない」

 あんな田舎に生まれ、自転車で何十キロと走るのに、一キロなんて庭を歩くようなものだ。なんなら十キロでも余裕で歩けるよ。

「結構車が走ってんだな。お、三輪自動車まであるんだ。なんかおもしろそうだな」

「資格はあるから買ってみるといい。四、五十万はするがな」

「大学卒の初任給が一万前後だっけか? 高級車じゃん。好景気か?」

「戦争が終わって、復興も落ち着いたとされているからな。商売で成功したヤツは多いんだろう」

「純は戦争を経験しているんだ」

「経験って言っても学生だったからな。まだ続いていたら戦争に出ていた、かもしれん」

 田舎だったから空爆されることも……あったか? 秘密工場があったから訓練が毎日のようにあったと聞いたっけ。オレとしては戦争に行きたかった。お国のためとかではなく、自分の夢のためにな……。

「異世界に行ったら魔物と戦ったり、山賊と戦ったりする毎日になるんだがな。死なないよう鍛えないと」

「お手やらかに頼むよ」

 そう聞いても止める気にもなれんし、怖じ気づくこともない。オレは、そんな毎日を求めていたのかもしれんな。フフ。

 十分くらい歩くと、明治からやっている質屋に到着した。

 ここにあることは知っていても利用することはなかった。どうすればいいんだ?

 まあ、わからないのなら訊くしかないと、店の中に入った。古い建物の臭いがする。

「いらっしゃい。今日はなんだい?」

 台の向こうに五十過ぎくらいの親父がいた。

「買い取りをお願いしたい。友人が国に帰るための資金が欲しいんだ」

 三月は魔法で外人の姿になっている。こんな田舎じゃ金髪は珍しいからすれ違う者、皆振り返っていたっけ。

「物はなんだい?」

 金のネックレスを出した。

「見せてもらうよ」

 ネックレスを手に取り、磁石みたいなものを使ったり、重さを量ったりしている。

「ちょっと削っても構わないか?」

「ああ。構わないよ。証明するものがないんだから」

 オレも金であることを証明の仕方なんて知らない。金とは無縁の人生だっ、たからな。

 奥に入り、十分くらいして戻って来た。

「四万五千なら買い取るよ」

 どうする? と、三月に視線を向けた。

「オッケー。ソレデイイデース」

 なんで片言? 外人ってそんな風にしゃべるのか?

「じゃあ、これに名前と住所、ここに指印をしてくれ」

 言われたとおりにする。

「四万五千円だ。確認してくれ」

 千円か。久しぶりに見るな。いや、四万五千って凄いな。束になっているよ。

「外人さんは、どこの生まれだい?」

「ミシガンシュウのデトロイトヨ。シッテル?」

「メリケンさんかい」

「メリケン? ナニソレ?」

 アメリカ人のことだが、当事者にはメリケンと言ってもわからんだろうよ。

「いや、いい。毎度あり」

 なんだ? と思いながらも質屋を後にした。

「疑われたか。まあ、アメリカのことは詳しくなかったから助かった」

「ミシガンシュウってウソなのか?」

「いや、本当にあるところだよ。自動車が有名なところだ。オレは行ったことないがな」

 行ったことがないのに知っているのかよ。有名なのか?

「純の見立てより少なかったが、大金ゲットだな」

「ゲット?」

「うーんまあ、捕まえたって意味だな。平成では有名なセリフだ」

 流行り言葉、ってことか? 未来でもあるんだな。

「帰りに寿司でも買って行かないか? とーさんやかーさんに食べさせてやろう。てか、オレが食いたい。あっちじゃ生で食べられなかったからな」

 寿司か。オレも何年と食べていない。うちでかっぱ巻きとかんぴょう巻きを食ったくらいだが。

「そうだな。一人千円くらいでかなりいいものが食えるはずだ」

 そんな話を聞いたことがある。真実はどうかは知らん。寿司は高いから。

「中華とかもあるんだ。ラーメンも食いてー」

「食いしん坊か」

「異世界じゃまともなものが食えなかったからな。すべて手作り。知識もないから見よう見真似。味噌モドキがやっとだった。あっちに行ったら現実を教えてやるよ。米の大切さ。味噌醤油の偉大さ。日本人の魂が揺さぶられる。募る思いに何度も泣いたよ」

 どんだけだよ? まあ、オレも戦時中は碌なもの食えなかったからな。食えるものなら美味いものが食いたいよ。

「次の質屋の近くに寿司屋があったはず。そこで食べてみるとしよう」

「おー楽しみ~」

 オレも楽しみ。マグロってどんな味だったっけな~。

 平成ではどんな寿司があったのかを聞きながら次の質屋へと向かった。