異世界で冒険を! 昭和時代でスローライフを! オレたちの世界交換ファンタジア!

 家の前にはたくさんの人が集まっていた。

 田植えもだが、稲刈りも大仕事だ。すべて手作業なので人を集めなくちゃならない。親戚や知り合いが集まる。

 良二のところも奥さんの姉妹が集まり、その旦那さんも駆り出されている。

 ……どこも同じなんだな……。

「純!」

 呼ばれて振り向くと、三月と……見知らぬ女性、そして、五歳くらいの女の子がいた。

「三月、そちらは?」

「岡田しずかさんと登子《とうこ》ちゃんだ。昼食の準備に雇わしてもらった。十時とお昼、十五時にいろいろ出してもらう」

 こいつはどんだけ食欲魔神なんだ? これだけのために雇うとかやりすぎだろう……。

「しずかさん。こいつが本物の戸川純です」

 なんだよ、本物って? まあ、交換するんだから間違ってはいないがよ。

「は、初めまして」

「すみません。三月が無理を言ったみたいで。無理強いされたなら断っていただいて構わないですからね」

 三月の無茶に謝った。オレにも責任があるからだ。

「あ、いえ、無理強いではありません。伯母が商店街の旅行に行ってしまったので、三月さんからのお願いは助かりました」

 まさか、それってと三月を見た。

「さすがにそんな仕込みはしないよ。前々から計画された旅行だ」

 こいつならと思ったが、どうやらそうではないようだ。

「しずかさんの家は料理人の家系だから、美味しいものを作ってくれるぞ。煮物も前日から作ってくれたんたんだぞ!」

 なんでお前が胸張ってんだよ? 作ったのはしずかさんとやらだろうが。

「すみません、しずかさん」

 再度、頭を下げた。

「アハハ! 頭を下げられて偉いぞ~。オレは気に入らないことには絶対頭を下げないからな。強制するヤツは拳で黙らせる」

 まったく冗談に聞こえない。こいつは仲間たちと魔王を倒し、王国ともケンカして生き抜いた男だ。強制するヤツは本当に拳で黙らせることだろうよ。

「おはようございます! そろそろ始めまーす!」

 良二がやって来て、畑に移動した。しずかさんは、初子さんと食事の準備に向かった。

「純、楽しみだな」

「そうだな。宏子さんは、稲刈りをしたことはありますか?」

「ないです。小さい頃は山に逃げてましたから」

「山ですか。実家から山までかなりの距離がありましたよね?」

 二十キロはあったんじゃないか? 今のオレなら朝飯前な往復出来る距離にったがな。

「はい。朝に出て、夜には帰って来ました」

「オレも小さい頃から鍛えたかったです。二十歳を越えてからはなかなか体力がつきませんからな」

 宏子さんは、子供の頃から鍛えていたんだな。オレも見習わなければ。

 畑に着いて良二が段取りを説明。オレと三月、宏子さんが稲刈りを任せられた。

「畑ってどのくらいあるんだ?」

「このくらいの田んぼが八つだ」
 
「へー。意外と少ないんだな」

 三月には少なく見えるらしい。

「この人数で四日から五日は掛かるそうだ」

 十数人が集まっても稲刈りだけで四、五日は掛かる。オレの感覚ではかなり広いと思うんだがな。

「純。オレが稲を刈っていいか?」

「ああ。って、やったことないんだよな?」

「昨日、稲刈りしているところを見たから大体は理解した」

 まあ、稲刈りをしている家はある。見て覚えても不思議ではないか。こいつの場合は。

「よし! やりますか」

 体を動かし、鎌を持って田んぼに入る三月。次の瞬間、とても人間とは思えない速さで稲を刈っていた。

「……バケモノ……」

 そう言われてきた人が真のバケモノの前では小さく見える。まあ、オレなんかさらに小さく見えるだろうがな。

「じゃあ、オレたちは束ねましょうか」

 下手にあの速さの前に立つのは危険だ。牽かれないよう稲を束ねるとしよう。

 昨日のように急ぐこともない。宏子さんに束ね方を教えながらのんびりやるとする。