異世界で冒険を! 昭和時代でスローライフを! オレたちの世界交換ファンタジア!

 え? しずかさん、結婚してたの!?

 年齢的に結婚をしていても不思議ではないが、そんな素振りなどまったくなかった。結婚指輪とかもしてなかったからな。

「友美《ともみ》、ただいま」

 娘さんを嬉しそうに抱き締めた。離れて暮らしていたようだ。

「元気にしてた?」

「うん! 元気にしてた!」

 なにやら複雑な家庭環境のようだ。あまり深く関わらないほうがいっかな?

 しばし、再会を確かめ合い、やっと落ち着いてくれたしずかさんが照れ臭そうにオレを見た。 

「すみません」

「いえいえ。謝るのはこちらのほうですよ。なんか娘さんとの再会を邪魔しちゃったみたいで」

「いえ、気にしないでください。汽車を待つ時間がありましたから」

 とは言うが、嬉しそうな娘さんを見ていると申し訳なさが勝つ。なにかお詫びしないとな。

「さあ、どうぞ」

 しずかさんに招かれて店へと入った。

 家族経営なのか、店内はそんなに広くない。カウンターに三人。四人用テーブル二つ。畳みにテーブル二つだった。

 お客はおらず、厨房で料理をしているのが三人いた。

「ただいま、お母さんお父さん、お兄ちゃん」

「あら、お帰りなさい。元気なようね」

 定期的に帰って来ているようで、母親らしき女性はそれほど感慨はない。

「あら、そちらさんは?」

「相原三月です。桜小町の常連です。偶然、駅でしずかさんと会ったので、お姉さんのところに案内してもらいました」

「桝谷さんの知り合いだったのよ」

「あの桝谷さんとかい。福島の人?」

「はい。友人が酒田で結婚するので、米沢にいる友人のところに会いに来たんですよ。稲刈りの手伝いもあるので。あ、これ、エビとイカです。福島の海で買ったものです。皆さんに配っているので食べてください」

 店で出す量ではないが、家族で食べるには大量だ。

「こんなによろしいので?」

「はい。たくさん買いすぎて困ってたんですよね。食べ切れないとにばご近所にお裾分けでもしてください」

 どうぞどうぞと受け取ってもらった。

「あ、注文いいですか? かつ重が食べたくなっちゃったんで。中華ソバもお願いします」

 蕎麦は食ったから次はラーメンといこうじゃないか。

「お母さん。あとはお願いね。三月さん、ゆっくりして行ってください」

「はい。おにいさんのコーヒーも楽しみなので」

 ゆっくり娘さんと再会を深め合ってくださいな。オレは美味いものをいただかしてもらうので。

 待っている間にお客が三人入って来る。あ、餃子とかもあったんかい! 気付かんかったわ!
 
「すみません。餃子って持ち帰り出来ますかね? 友人の家にお土産にしたあんで。大丈夫ならこの重箱に入れてもらえますか?」

 持ち帰りのパックがないのが辛いよな。あのパックはいつの時代から使われるんだ?
 
「今日は大繁盛だ。何人前です?」

「五人前は入りますかね? 余裕があるならもっと入れてください」

「はいよ」

 しばらくしてかつ重が運ばれて来ていただきます。うめー!

 まだ一時間も過ぎてないが、オレの胃袋はまだまだ余裕がある。魔力回復でエネルギーを使うので、食べようと思えば牛一頭は食える。さすがに完食するまで半日は掛かるだろうがな。

 半分くらい食べたら中華ソバが運ばれて来た。あーいい匂い。煮干しかな?

 かつ重も中華ソバも綺麗に食べた。まったく、毎日美味いものが食えて幸せだよ。親子丼も食いたかったぜ。

 水を飲んで一息。あー美味かった。

「はい、コーヒーだよ」

「しずかさんのおにいさんで? おねえさんとそっくりですね」

 男女の差はあるが、なんか似てる。

「一恵《かずえ》とは双子なんだよ。二卵性だからそんなに似てはいないんだがな」

「目許や雰囲気が似てますよ。知らなければ双子とはわからないでしょうが」

 そう言ってコーヒーを飲むとメッチャ美味かった!

「こんな美味いコーヒー、初めてですよ! プロですか!?」

「アハハ。趣味だよ。料理の腕はあんまりだが、コーヒーを淹れるのは才能があったようだ」

「これは、通いたくなる美味さですね。喫茶店とかやって欲しいくらいですよ!」

 コーヒーなんてそんなに飲まなかったが、大人になってコーヒーの味がわかるようになったようだ。

「喫茶店をやるのが夢だったんだが、金の問題で諦めたよ。ここでも飲みに来てくれる人はいるからな」

 もったいない。こんな腕のいい人が埋もれているなんて。どうにかならないだろうか?

 一杯を飲み干し、お代わりをお願いした。

「あ~美味いな~」

 なんかコーヒーに目覚めてしまった感じがする。

「そんなに美味そうに飲んでもらえると嬉しいよ」

「これは、次の世代に残すべき味ですよ。アイスコーヒーもいいかも」

「アイス? 冷やしコーヒーかい?」

 昭和ではアイスコーヒーって言わんのか? ここだけの言い方なのか?

「あ、水筒があるので作ってもらえませんか? お代は支払いますんで! むしろもっとコーヒーを研究してください。支援しますんで!」

 千円札の束を出しておにいさんに押し付けた。

「こ、こんなにもらえないよ! いくらあんだよ!?」

「まあまあ、気にしないでくださいよ。オレは美味いものには金に糸目をつけないので。これで豆とか道具を揃えてください。また飲みに来ますんで。あなたの淹れるコーヒーに惚れました!」

 この人は確保すべき人だ!