異世界で冒険を! 昭和時代でスローライフを! オレたちの世界交換ファンタジア!

「あれ? しずかさん!?」

 桜小町のしずかさんと米沢の駅でばったりと会った。

「三月さん! どうしたんですか、こんなところで!」

「友人の家が米沢にあるんですよ。その友人の親戚が駅前にあるんです。桝谷商店って知ってます?」

 やっぱ駅から出発っしょっ、って思って駅に来たのですよ。桝谷さんも駅前だってことらしいのでな。

「はい、知ってますよ。米沢では有名ですから」

 へー。そんなに有名だったんだ。大きい店だとは純が言ってたが。

「しずかさんはなぜ米沢に?」

「わたしの実家が米沢なんです」

「へー。女将さんもそうなので?」

「いえ、伯母は母方のほうです。地元ではなく、近かったのが伯母だったので働かせてもらっているんです」

 なんか複雑な事情あり、って感じっぽい。

「近いんですか、実家?」

「西米沢です。時間があったので駅前でもと思って出て来たんです」

 西米沢? 西にあるってことか?

「時間があるならお茶でもどうです? 桝谷さんで飲みましょう」

 お茶を飲めるか知らんが、商店ならなんか飲むものは売ってんだろうよ。

 それとなく桝谷さんに誘導──することもなく、駅から三分も離れていなかった。

 ……デカいのか……?

 コンビニサイズくらいの店で、大きいとは言えなかった。奥があるんだろうか? それとも店は違うところにあるのか?

「こんにちは~。純の友達の三月というものでーす」

 店はなかなか繁盛しており、店内は奥に伸びていた。思ったより広いな。惣菜、いや、弁当も作っているのかな?

「はーい」

 奥から五、六十の女性が出て来た。

「初めまして。戸川純の友人です。指輪を創った者、と言えばわかりますかね?」

「あなたが!?」

「はい。相原三月と申します。いろいろ純がお世話になったようで。ありがとうございます」

「いえいえ、お世話になっているのはこちらのほうですよ。涼花さん、お客様が来たからお店をお願いね」

「はい、お義母さん」

「三月さん、奥へどうぞ」

 戸惑うしずかさんを連れて奥へと進み、お茶を出してもらえた。

「お、お萩ですか?」

「峠の力餅ってものよ。うちの店でも扱っているの。お土産にどうかしら?」

「いいですね。帰りに買わせてください」

 販売店や旅館に渡してやろう。

「旦那は出掛けていてごめんなさいね。山形に行っているのよ」

「純の結婚のことでしょう。桝谷さんも出席するので?」

「純くんにはお世話になっているしね、招待されたら喜んで出席させてもらうわ」

「仁井家とは繋がりがあるので?」

「話を聞くくらいよ。酒田では有名な家だから」

 米沢まで名前が届くんだ。どんだけの家なんだか。

「移動は任せてください。仕事が忙しいなら日帰りも可能ですから」

 転移のことは知っているはず。収納の指輪を渡したってことだからな。

「そちらのお嬢さんは、お付き合いしている方?」

「いえいえ、お世話になっている女性です。駅でばったり会ったんです」

「お、岡田しずかです。西米沢に実家があります」

「もしかして、岡田食堂の娘さんかしら?」

「は、はい。知っているのですか?」

 お、実家って食堂なんだ。だから飲み屋で料理を任されていたんだな。

「ええ。篠原商店に品を卸しているからね」

 米沢は狭いのかな? まさか桝谷さんが知っていたとは。

「あそこは、息子さんが継いでいたわよね?」

「はい。兄が継いでます。姉は妙寮庵《みょうりょうあん》に嫁ぎました」

「妙寮庵、知っているわ。うちで品を卸しているの」

 桝谷商店って何屋なんだ? 手広くやっているだけか?

「妙寮庵って?」

「蕎麦屋です。宴会場もある有名なところですよ」

 おー! 蕎麦屋か。蕎麦、まだ食ってなかったな。ざる蕎麦食いてー! 海老もついたらサイコー!

「いいな。昼に食べようかな~」

 なんだか口が蕎麦の口になってきた。もう蕎麦の味も忘れてんだけどさ。

「しずかさん、案内お願い出来ます? 支払いはオレがしますんで! そのあとも実家まで送らせてください」

 押しに圧してしずかさんより承諾をもぎ取った。よし、蕎麦だ! 蕎麦を食うぞ! おー!