異世界で冒険を! 昭和時代でスローライフを! オレたちの世界交換ファンタジア!

 しばらくして宏子さんと三月が戻って来た。

「すみません。お風呂を沸かしてもらえます? 泥だらけにしちゃったもので」

 砂まみれで、髪は濡れていた。砂浜に行ったのか?

「三月!」

「大丈夫。お前の嫁さんの実力を見て来ただけだ。お前もより一層修業しないと宏子さんのお荷物になるぞ」

 それはわかっている。自分が宏子さんより弱いことをな。だが、それに腐っても仕方がない。

「学さん。純の……なんでしたっけ? 親みたいな立場になるの?」

「後見人か?」

「あー、それそれ! それをお願い出来ますか? オレ、そういうの詳しくないんで。掛かる費用はオレが出しますんで。ゆい、ゆいの、なんでしたっけ?」

「結納金」

「そう、それ! 現金じゃなくても宝石でもいいですかね? 宝石ならたくさんあるんで」

「大丈夫だ。それは能己家で出す。純や君には命を助けられたからな。むしろ、出させて欲しいくらいだ」

「あー……じゃあ、お願いします。花嫁道具、ではありませんが、必要なものはオレが用意しますんで」

 異世界で使うものか? それなら充分すぎるほど小屋にあっただろうに?

「純。結婚式は稲刈りが終わってからにしろよ。友達を呼ぶんならな早めに伝えておけな。学さん、あとはお任せしてもよろしいでしょうか? オレは二人の新居を用意するので」

「ああ、任せてもらおう」

「オレは失礼しますね。仁井家の方々。純を受け入れていただきありがとうございました」

 深々と頭を下げる三月。なんか恥ずかしくなる。オレはなんて情けないんだろうと。流されるままだ……。

「いえ、こちらこそ、娘を受け入れてくださりありがとうございます。宏子は表に出せぬ娘でしたから」

「いい娘さんでしたよ。純にはもったいないくらいのね。まあ、嫌だと言っても純と結婚させますが。こいつは、嫁の尻に敷かれるくらいがちょうどいいですからね。では」

 あっさりと去って行ってしまった。まだいて欲しかった……。

「藤次郎《とうじろう》さん。婚礼は酒田で行いましょう。参加するのは十人もいないだろうからな」

「わかりました。神前式でよろしいか? 宮司には話を通しておきますので」

「お願いします。玉串料は能己家で納めさせていただく」

 なんかどんどん話が進んでいく。

 その日も仁井家に泊めてもらい、親類縁者を呼んで報告会というなの酒盛りが行われた。

 酒はそんなに飲めないが、解毒の指輪を嵌めていたので、いろんな人からの酒を飲むことが出来た。お陰で親類縁者の名前も顔も覚えられなかったよ……。

 朝は普通に起きられた。

 仁井家は大きい屋敷で、別邸もあったりする。さすが江戸時代から続く家だ。宏子さんっていいところのお嬢様だったんだな。

 ……幽気で狂気な姿が激しくてお嬢様って思えないがな……。

 布団から抜け出し、走る用の服に着替える。二日も走り込みしてない。皆が起きるまで全力疾走でもしてこよう。

 静かに外に出ると、門のところに誰かいた。

「宏子さん!?」

 花柄のワンピース? を着ていたから近所の人かと思ったらまさかの宏子さんだった。どうした?!

「おはよう」

「あ、おはようございます。早いのですね」

「いつもこのくらいに起きる」

「オレもです。いつもは素振りをして朝食を食べたら走りにでます」

 洋服姿でも幽気がだだ漏れてんな。夕方に電灯の下にいたら子供は絶対に逃げるだろうよ。

 基本、いや、たぶん、顔は整っているのだろう。他の女性より背も高い。体付きもいい。だが、それを貫くほどの幽気と狂気を纏っている。オレはこの人と結婚するんだな……。
 
「わたしも付き合います」

「さすがにその格好では」

 と、スカートを捲り上げたら半ズボン? を履いていた。き、綺麗な脚──ではない! スパッツってヤツか? 三月も履いていた。

「走れる」

「わ、わかりました。海まで案内お願いします」

「うん」

 と、全力疾走に近い速さで走り出した。ちょっ、いや、速すぎ!

 オレも全力疾走で追い掛けた。