異世界で冒険を! 昭和時代でスローライフを! オレたちの世界交換ファンタジア!

「……オレ、結婚することになっちゃった……」

 十月にも入り、そろそろ稲刈りか? って話をとーさんかーさんと話していたら、何日か振りに帰って来た純がそんなことを言いやがった。

「なんで?」

 動揺する純を落ち着かせ、なにがあったかを話させた。

「なるほど、大体の事情はわかった。まあ、この際だから結婚しろ。異世界に一緒に行きたいみたいだしな」

 そんな人がいたことには驚いたが、異世界でも飛び抜けた身体能力を持つヤツはいたし、それで通じるほど異世界は優しくない。獣人なら二千メートル級の山を登るくらい子供でも出来ることだ。

「オ、オレ、結婚しちゃうのか!?」

「しろよ。お前もいい歳なんだから」

 平成ならまだしも昭和時代だと結婚してないほうがおかしいらしい。オレも桜小町で結婚しろと勧められたこともあるし。

「お前の話しぶりでは気に入られているみたいじゃないか。それに、今ね時代はお見合い結婚も珍しくないそうだし。学さんも頭の隅で考えていたんじゃないか? 白鬼って呼ばれているのが女性だと知っていたんだから」

 確信を持って動いたわけじゃなかろうが、魔法や体力バケモノな純となら、と考えても不思議ではないだろうよ。

「……親父やお袋にはなんて……」

「それはオレに任せろ。二人には説明しておくから」

 二人の中ではもう純は息子でなくなっている。もちろん、親としての気持ちはあるが、二年の引きこもりで愛情は残り僅かになっている。結婚と言っても「そっか」ぐらいしか返ってこないだろうよ。

「そっちの家にはオレが行くよ。これでもお前の倍くらいは生きてんだからな」

 獣人の結婚には何度も参加している。まあ、昭和時代の作法とかは知らんが、あちらは知っているだろう。それに合わせて動けばいいだけだ。

「まずは学さんと話をするか。たぶん、あの人がお前の親代わりになってくれるだろうからな」

 オレも親のいないヤツの親代わりになったことがある。ここでは学さんがなってくれるだろうよ。

「新聞配達はいいのか?」

「こういう日のためにゴーレムを用意していたから大丈夫だ」

 もう一人のオレを召喚した。

「三月!?」

「オレの複製体だ」

 なにがあるかわからないからな。オレのコピーは異世界にいたときに創ってあり、学習させてきた。もう一人のオレと言ってもいいだろう。なんなら新たな命を生み出してしまったと言ってもいいくらいだ。

「オレ、頼むな」

「了ー解」

 ハイタッチで交代した。

「着替えてくる。手土産は梨でいっか」

 下では果樹園があり、梨や桃が作られている。桃は時期が過ぎたが、梨は今頃なので、所長さんの伝手で八箱くらい買ってあるのだ。

 部屋に戻り、前に山形に行ったときの服に着替えた。

「じゃあ、頼む」

 オレの要石を置いてもらっているが、やはり一度も行ったことがないところは失敗することもある。失敗すると変なところに出てしまうことがあるんだよ。

「わかった。今は酒田にいるからそこに転移する」

 酒田? 海のほうにある町だっけ?

 純が山形に行くようになったから地図を買って調べたが、地名まではっきりとは覚えてはいないんだよな。地名大杉くん!

 転移すると、どこかの屋敷の庭だった。

「かすかに潮の香りがするな」

「歩いて五分くらいで海に行けるよ」

 そんな近いところにあるんだ。潮とか流れて来ないんだろうか?

「こっちだ」 

 純の案内で江戸時代に出て来そうな屋敷に入り、座敷に案内されたら御一同が揃っていた。

「相原三月です。純の保護者みたいなものです」

 こんなところでの作法など知らんので、立ったまま一礼した。

「三月くん。手間を取らせてすまない。座ってくれ」

 学さんからくん呼びとは。なんかこそばゆいな。

 勧められた席に座り、お茶を出してもらい、一口だけいただいた。

「純からは聞いただろうか?」

「はい。急なことで戸惑いましたが。お相手はそちらのお嬢さんで」

 なんか現世にいてはならない格好をしている女性に目を向けた。

 白髪に白い着物。袖に隠しているのは手斧か? いてはならない格好をしていながら持っていてはいけないものを隠してんな。個性では片付けてはいけない女性だ……。

「仁井宏子。歳は二十だ」

 と、学さんが仕切っているようで女性の名前と歳を教えくれた。

「なるほど。確かに白鬼と呼ばれるだけはありますね。本物からしたら弱そうですが」

 異世界の白鬼なオーガみたいな体格をしており、自動車くらいな潰せる力を持っている。あれに比べたら可愛いものだ。

「宏子のことがわかるのかね?」

「まあ、ときどき産まれる特殊個体ですね。普通ならあまり長生き出来ないのですが、宏子さんは運がいいのでしょう。もしかして、よく食べたりします?」

「はい。よく食べます。本人は我慢して食べないようにしてますが」

「体温が高いから今は食べているってことですね。精神状態はどうです? 落ち着いてますか? それとも……血に飢えてますか?」

 宏子さんとやらを睨んだ。

「……ひ、宏子……?」

 オレの殺気もわかるのか。それともこれまで自分より異様な者を見たことがないから恐れているのかな?

「失礼。怯えさせてしまったようだ。オレは純と宏子さんが結ばれることに賛成です」

 この女性なら異世界でも生き抜けるだろうよ。