異世界で冒険を! 昭和時代でスローライフを! オレたちの世界交換ファンタジア!

 数日振りに純が帰って来たと思ったら、四十くらいの男を連れていた。

「お帰り。野宿していたわけではなさそうだな」

 てか、なんで背広なん? たんかモサくね? 昭和時代はこれがイケてんのか?

「ま、まーな。いろいろあったんだよ」

「まあ、なんでもいいさ。そちらは?」

 さらにもっさい背広を着ている。いい生地なのはわかるが。

「初めまして。初田《はつだ》孝治《たかじ》と申します」

 と、名刺をもらった。こんな時代から名刺ってあるんだな~。

「山形北新銀行の常務取締役ですか。学がないもので、どんなものか知らずすみません」

「いえ、銀行では中より上だと理解していただければよいかと」

 常務っていうくらいなんだからかなり上だろう。

「まあ、ここではなんなので、家にどうぞ」

 もう九月だが、まだまだ暑い日が続いている。外で話すのは辛いだろうと、家に招いた。

「……外とはまるで違いますな……」

「純から聞いているでしょうが、魔法で拡張しました。元の三倍くらいは広がっている感じですね」

 さすがに建て替えると手続きとか面倒になる。それなら中身だけ替えてしまえばいい。なにかあればすぐに元に戻せるし。

「……か、構わないので? 部外者たるわたしに見せても……?」

「ああ、大丈夫ですよ。誰も信じないでしょうからね」

 もちろん、それだけではない。ちゃんと対策はしてある。オレ、純、とーさんかーさんが招かなければ家に入ることは出来ない。入ったものにら記憶消失の付与を密かに施してある。しゃべろうとした瞬間に記憶は消失されるだろうよ。

 純にもしゃべるなら信頼出来る人だけにしろと言ってある。純の信頼を裏切ったヤツに優しくしてやる必要はない。

「そう警戒しないでくださいよ。オレは敬意には敬意で返しますから。もちろん、悪意には悪意で返しますがね」

 この二十年で酸いも甘いも噛み分けて来た。聖人君子な考えなど欠片も残さず噛み砕いてやったわ。

「あ、お茶よりラムネがいいでしょう。酒屋で仕入れてもらったんですよ」

 盥に氷を入れ、ラムネやビール、スイカも冷やしているのだ。あ、スイカは純が米沢の友人からもらったものだ。

 ラムネとスイカを切って出した。

「ありがとうございます。氷も魔法ですか? 家の中も涼しいですが」

「そうですよ。暑いとやる気が出ませんからね」

 平成の夏よりはマシだったとは言え、こうも暑いと畑仕事もしたくなくなる。この時代の人はよく働いているなと感心しるよ。

 まあ、付与魔法で暑さ寒さなど、どうとでもなるんだが、やはり日本の夏に慣れておかないと思ってな。まあ、あまりに暑いから家の中だけでも涼しくしたのだ。

「それで、オレになんの用で?」

 ラムネとスイカをいただいたところで本題に入るとする。

「若いのに迫力がありますな」

「年齢を言えば初田さんとそう変わりませんよ。こんな見た目ではありますが、四十手前ですから」

「…………」

 口を開けて驚く初田さん。まあ、無理もない。

「魔力があると老化が遅くなるんですよ。戸籍がないので証明は出来ませんがね」

「し、失礼しました!」

「いえいえ、お気になさらず。純と存在を交換するので畏まらないでください。人前では年下相手の扱いでお願いします」

 四十くらいの男が若僧相手に畏まっていたら周りが何事だと思うだろうよ。

「でも、年齢を重ねた人にはわかってしまうか。四十にも届くおっさんが若い振りをするのは難しいですね」

 まだ見た目で騙されてくれるが、やっている本人は痛々しい思いをしてんだよ。無理してんだよ。オレ、ダンディーなんだ、ぜ☆

「で、なんでしたっけ?」

 さらに痛々しいので話を戻させていただきます。

「金を売っていただきたい」

「いいですよ」

 何事かと思えばそんなことか。純を引き抜きに来たのかと思ったよ。

「どのくらいいります? 五百キロはあると思いますけど」

 計ったことはないが、まあ、そんくらいはあるんじゃないか?

「なんなら宝石もありますよ。ダイヤモンドとかルビーがたくさんありますよ。純、収納の指輪に入れて持って来てくれ」

 純に持って来てもらう。

「わ、わかった」

 家を出て行くのを見届け、初田さんを見た。

「なにに使うかは聞きません。オレには関係ないことですからね。ただ、あまり純を巻き込まないでください。あいつはいずれ旅立つんですから」

 取り込もうなど考えてもらっては困る。あいつはやっと自分の人生を生きようと立ち上がったのだからな。

「もちろんです。能己《のうみ》家にも無理強いはするなと言明されておりますから」

 能己家? 純はどこの権力者と関わって来たんだ?

「初田さんは、能己家の関係者なので? なにか恩みたいなものを感じますが」

 親族って口振りではなかった。偉い人に従うって感じでもない。なら、恩返し的なものではないかと思う。

「……娘を救っていただきました……」

「なるほど。そうでしたか」

 病気か怪我かは知らないが、段取りしたのら能己家だろうな。情と利を使うのが上手いヤツのようだ。純では太刀打ち出来んだろうな。

「こちらとしては能己さんが後ろ盾となってくれるのならありがたい限りだ」

「はい。ご要望があればなんなりと。可能な限り、お力となります」

「無茶なことは言いませんよ。法と税金の面で助けていただけると幸いです」

 銀行のお偉いさんが力となってくれるなら心強いってものだ。

「お任せください」

 ハイ、お任せしま~す。