異世界で冒険を! 昭和時代でスローライフを! オレたちの世界交換ファンタジア!

 最初、獣と人を足したようなヤツらにびっくりはしたが、力試しとして相撲をしたら仲良くなれた。

 三月からも力を示せば仲良くなれると聞いていたが、まさか相撲の技でここまで仲良くなれるとは。オレはこういうのがわかりやすくて好きだな……。

「ジュンは、酒が弱いな」

「そっちが強いだけだ」

 オレよりたくさん飲んだはずなのに、獣人たちは平然としている。日本酒はそんな甘くない酒なんだがな……。

「ロベルタ、また酒を飲ませてくれな」

「構わないが、酒は高いんだから当分先になるからな」

 ロベルタとは三月の異世界名だ。オレも異世界名を付けたほうがいいのか?

「三月も酒に強いんだな」

「レベルアップすると毒耐性も上がるんでな、あれくらいの量じゃ酔えないんだよ。味までわからなくなっていたら人生を終わらせていたところだ」

 確かに味がわからないとか嫌すぎるな。こうして美味いものが食える幸せを知ってしまうと……。

「オレはあっちに行くな。もう朝だろいからな」

 朝か。こっちはまだ夜明け前だ。時差があると不便で仕方がない。まあ、酔い潰れて眠ったから昨日の疲れは抜けてくれた。

 野営の訓練もあるから滝にでも行って目を覚ますか。
 
 オレも用意してあちらに戻り、滝に向かって飛び上がった。

 近くの滝で酒を洗い流し、完全に目が覚めたら米沢へと飛び、桝谷商店で下りた。

 桝谷商店は弁当も手掛けており、観光客向けに出している。来年には駅弁として売るのも決まっているそうだ。

「おはようございます。今日も弁当お願いします」

 女将さんが店の前にいたので挨拶する。

 ここの米沢牛弁当は絶品だ。百八十円と高いが、高いだけの味はしている。もう六日は食べているが、まったく飽きが来ないでいるよ。

「いらっしゃい。今日も海を目指すのかい?」

「今日は山形市へ資金調達ですね。酒を買おうと思いまして」

 獣人たちのために酒を買っておいてやろうと思ってな。また五万円くらい調達するとしよう。

「ちょっと旦那を呼んで来るから待ってておくれ」

「え? あ、はい。わかりました」

 なにか真剣な表情だった。なんかあるのか?

 しばらくして旦那さんを連れて戻って来た。

「山形に行くんだって」

 ここも山形ではあるが、米沢の人は山形市ではなく山形呼びなんだな。

「はい。質屋で金を買い取ってもらおうかと思いまして」

 さすがに同じ質屋で買い取ってもらうのは怪しいだろうからな。繋がりのない町に行ったほうがいいだろうと思ってだ。

「つかぬことを訊くが、病気を治せる魔法とかあったりしないか?」

「魔法ではないですが、万病に効く薬ならありますよ。うちのお袋もその薬で心臓の病気が治りましたから。ただ、こちらの病気ならなんでも効くかどうかはわからないと言ってました。環境がまったく違うからと」

 お袋のときは咄嗟だったので飲ましたが、この時代の病院に行って診てもらったほうがいいとも言っていたな。

「飲んでみます? なにもなければ体から排出されるだけですから。オレも飲んで確かめましたんで」

 健康に産んでもらったからか、これと言った効果はなかった。強いて言うなら快便になったくらいか? それまではなんか便秘気味だったんだよな。

「こ、高価なものじゃないのか?」

「高価は高価みたいですが、もう二度と作れないものじゃないとは言ってましたね。そもそも健康的な生活を送っていたら病気にもならない、ってヤツですから、あったもの十五本を渡されましたよ」

 レベルアップすると病気にも強くなるんだろうよ。よく知らんが。

 収納の指輪からエクサリーを二本出した。

「味は草なので美味いとは言えないものですが、お猪口半分の量なので一気に飲み干せば苦にはならないでしょう」
 
 飲む者のことをまったく考えてない味なんだよな。量が少ないってことが救いだろうよ。

「気にせず飲んでください」

 わけのわからないものを飲むのは不安だろうからオレも封を切ってエクサリーを飲んでみせた。うん、苦っ!

 二人も勇気を出して封を切ってエクサリーを飲み干した。

「に、苦い」

「……え、ええ……」

「どうです? 重い病気なり腕や足が欠損していたらすぐにわかるようなんですが」

 二人とも元気そうだからわからんか?

「……腰の痛みがなくなった……」

 旦那さんは腰痛持ちだったのかな?

「わたしは、お腹が軽くなったような気がするわ」

 腹? 腹はよくわからんな。病気だったのかな?

「今度、健康診断にでも行ってみて確認してみてください。それで治ったかどうかわかるでしょう」

 さすがに見た目だけではわからない。そういうのは病院に頼るしかないだろうよ。

「いや、効果は出ているぞ。こんなに体が軽く感じたのはいつぶりだろう? なんだか若返ったようだ!」

「わたしもなんだか若返った気分よ。手が二十は若返ったような艶をしているわ」

 喜ぶお二人さん。まあ、元気になってなによりだ。

「実は、おれの友達が病気でな。余命僅かと言われているんだ。今は畳の上で死にたいと家に戻っている状況なんだよ」

 現代医療でも治せないのか? どんな病なんだろうな?

「内緒に出来る人なら飲ませてください」

「それは大丈夫だ。口が固い男だから」

 それなら問題ないだろうと、桝谷商店の車で向かうことになった。