異世界で冒険を! 昭和時代でスローライフを! オレたちの世界交換ファンタジア!

 その日は、良二一家と寿司と酒で盛り上がった。

 オレも久しぶりの良二との再会にはしゃいでしまい、思った以上に酒を飲んでしまい、昼近くまで寝てしまった。

「……おはよう」

 良二の息子、えーと、良太、だっけか? 障子の隙間からこちらを覗いていた。

 母屋のほうに泊ったので、どこからでも入って来れる。三歳でも自分のうちなら怖くないのだろう。

 挨拶したが、逃げられてしまった。子供は意味わからん。

 母屋はまだ水道は通ってないようなので、外にある井戸で顔を洗った。

「どうした?」

 また良二の息子が現れた。そんなにオレが気になるのか?

 子供に好かれる、なんてことなかったから好奇心で動いているのだろう。

 近くの石に座り、飛翔の指輪で浮いてみせた。

「────」

 三歳でも空を飛ぶのは驚くんだ。

「…………」

 好奇心旺盛なのか、良太が近付いて来た。

「おじちゃんは、純だ。良太のとうちゃんの友達だ。わかるか?」

 ちょっと考え、わかんないと首を振った。そこはわからないんだ。

「良太も飛んでみたいか?」

「うん!」

 そこはわかるんだ。三歳が本当によくわからんよ……。

 いい感じのザルがあったので借りることに。

 良太を乗せて、持ち上げて底が抜けないかを確かめた。うん、三歳の体重なら問題なさそうだ。

 飛翔訓練でわかったことがある。飛ぶときは体の周りに魔力が展開され、風を生み出して飛んでいると。

 その魔力は荷物を持つと、荷物まで魔力で覆われた。ってことは、ザルでも同じ効果を見せるってことだ。

 ザルを両手で持ち、体の一部だと念じた。

 指輪を嵌めた者の意思で動く。きっと三月がそう設定したのだろう。凝り性なところがあるから。

 ザルも体の一部となり、そして、良太も魔力で覆われた。

 魔力の消費は激しくなるが、手とザルを魔力の糸で繋げると、ザルだけが浮いているように見える。

「良太。暴れると落ちるから大人しくしているんだぞ」

「うん!」

 落ちても大丈夫な高さでザルを動かしてやる。

 キャッキャと嬉しそうな良太。子供は無邪気だよ。

 いや、オレも空を飛べることに無邪気に喜んだな。三歳児となんら変わらんな、オレ……。

 良太を飛ばして遊んでいると、良二が帰って来た。昨日の酒はまったく残っている感じはなかった。

「なんだこりゃ?」

「良太を飛ばして遊んでた」

「空も飛ばせんのかよ?」

「飛翔の指輪でな。ただ、一週間くらいは練習しないと上手くは飛べない。オレも朝から晩まで練習した。失敗して骨を折ったこともあったよ」

 三月が作った薬で一瞬にして完治したがな。

「良二も飛ぶか?」

「遠慮しておくよ。おれは高所恐怖症だ」

 そうだった。崖の側に立つことも嫌がってたっけ。

「それなら良太は、嫁さん似だな。喜んでいるし」

「だな。昼飯にするか。良太、終われよ」

「ヤダ! もっとする!」

「普段はポヤポヤしゃべるクセに拒否だけはしっかりしゃべりやがって」

「じゃあ、このまま連れて行くよ」

 昼は母屋で食べるようで、畑仕事から帰って来た親父さんたちに驚かれてしまった。

 ただ、収納の指輪で耐性が出来たのか、すぐにザルを揺らしたり、本当に飛んでいるのかを確かめていた。

 浮かしたまま良太に食べさせ、腹一杯になったら眠ってしまった。

「子供だな」

 案外、子供って可愛いものだな。うるさいから苦手に感じてたんだが。
 
 ザルを降ろして嫁さんに良太を任せた。

「純、今日も泊まっていけ」

「いや、さすがに二日も泊まれんよ。悪いだろう」

「構わないよ。だから、ちょっと手伝ってくれ。飛べるなら田んぼの雑草を抜いて欲しいんだよ」

「お前って、オレより指輪の使い方を思い付くよな」

 昨日もそうだったが、すぐに思い付くとか天才か? オレも使い方を考えるとしよう。

「雑草を抜くだけでいいのか?」

「今はそれで構わないよ。また収穫時に来てくれ。ちゃんと手間賃は出すから」

「別に手間賃はいらないよ。これからは機械の時代になるんだから貯めておけ」

 農家も機械を使うようになってきた。段々と馬や牛の出番はなくなってくるだろうよ。

「じゃあ、米や野菜で払うよ」

「そのほうが助かる。だだちゃ豆は、今だっけ? あれ、美味いよな」

「なら、吉川さんちからもらうか?」

「わがっだ」

 親父さんとお袋さんが知り合いが作っているそうなので、もらって来てくれるそうだ。

「よろしくお願いします。雑草はすべて抜くんで」

 なんて安請け合いして後悔した。米農家の畑の広さをナメていた。小学校が四つは余裕で入る広さがあった。

 それでも口にした以上、必死になって雑草を抜いてやった。

「いや、役に立つ男だよ、お前は!」

 魔法で飛んでるとは言え、うつ伏せになりながら雑草を抜くという動きをして筋肉痛になってしまった。

 ……明日、帰れるだろうか……?

「んー」

 井戸で体を洗っていると良太がザルを持って来た。

「あはは。すっかり良太に懐かれたな」

 苦笑いしか出ない。子供は本当によくわからんよ。

「わがったよ。今日でお仕舞いだからな。おじちゃん、そろそろ帰らないとならないからな」

 体力のなさを痛感した。あんなに走ったのにまだまだのようだ。

「良二、ちょっと空を飛んで来るよ」

「夕飯までは帰って来いよ」

 いいんかい? なんか雑というかなんというか、まあ、良太にも空の素晴らしさを教えてやるとしよう!

「行くぞ、良太!」

 半裸のまま空へと飛び上がった。