異世界で冒険を! 昭和時代でスローライフを! オレたちの世界交換ファンタジア!

「おぉ! 耕運機まで入ったよ!?」

 収納が楽しくなったのか、家中のものを指輪の中に入れてしまった。

「魔力で動いているから消えたら中のものが一気に噴き出すから注意しろ。満杯にしなければ三年は持つようだから。なんなら収穫時に連れて来るよ。また米を買いに来るからな」

 収穫は人力だ。手伝いとして呼べば自然と紹介出来るだろうよ。

「秋か。なら、どんどん入れても構わないな」

「まあ、そうだな。世間に知られないようにしろよ。取り上げられるかもしれんから」

 これが世に出たらとんでもないことになる。三月が内緒に出来るヤツならって言ったのも頷ける。

「わかっている。これって貴重なのか?」

「いや、まだあるぞ」

 一応、予備として三個は持って来た。

「あんのかよ!」

「これを作ったヤツは拘りがあるのか、三十個くらいあったよ」

 たくさんあったから貴重な思いには至らなかった。飛翔の指輪も同じくらいあったし……。

「……なんか、とんでもねーな……」

「そうだな。六十年後の未来のヤツで、別の世界で生きていたヤツだから」

「これを見てウソだとは言えんな。頭ん中に入っているものがわかるんだから……」

「必要ならもう一つやるが、なにを入れるんだ? 一つでもかなりの容量だぞ」

「水を入れようと思ってな。今年はちょっと水が足りないんだよ。多いときは入れることも出来る。それに、親父さんの姉が温泉旅館に嫁いだからいろいろ持ってってやりたいんだよ」

「白布温泉だっけ? なんかお前の結婚式のときに熱く宣伝されたよ」

 強烈な人だったから今でも覚えているよ。

「アハハ。あの伯母さんは商売人だからな」

「今度、親父たちを連れて行くか。最後に親孝行みたいなことやっておきたいしな」

 三月のもので稼いだ金だが、最後に親父の背中でも流してやろう。

「まるで死にに行くみたいだな」

「死ぬ気はないさ。あっちで新しい自分になるだけさ」

 それで死ぬなら本望だ。全力で生きて、ダメだったら死ぬ。あの狭い部屋で死ぬ人生だったんだ。悔いはない。

「ほら、全部やるよ。ただ、魔力を補充しないとならんから指輪の所有者はしっかりしておけよ」

「ああ、わかった」

 収納の指輪をすべて良二に渡した。

「ありがとな。今日は泊まっていけよ。酒でも飲もうぜ」

「いいのか? 嫁さんに言わなくて」

「大丈夫だよ。こんな凄いものもらったんだからな。それに、米の他に味噌や酒も用意するよ。漬物は……明日もらってくるか。おれ、漬物用野菜を運ぶのもやってんだよ。お前と会ったのもその帰りだったのさ」

「米だけやっているわけじゃないんだ」

「近所に車を持っているヤツがいないからな。若いおれがやってんのさ」

 漬物か。お袋が作ってくれた山形出汁、美味かった記憶がある。

「この辺はまだ馬なのか?」

「耕運機を持つうちも増えてはきているが、まだ馬だな。時代は機械に向いているんだが、年寄りは上手く乗り換えられてないよ」

「良二と同じ年代は?」

「あまりいないな。ほとんどが十は上だ。あと五年もしないと跡継ぎは出てこないだろうな~」

「三十五か。働き盛りではあるが、馬や牛でやってきた世代か」

「ああ。だから車を持っているオレがいろいろやらなくちゃならないわけよ。忙しいと買い出しまでお願いされるからな。この収納の指輪があれば一回で済むよ」

 駅までもそこそこ歩くし、ここではバスも通らない。馬や牛を見るほうが多いだろうよ。

「そうだ。子供がいるならこれもどうだ? 町に出たとき駄菓子屋で大量に買ったんだよ」

 三月が食うのかと思ったら買って満足したらしい。オレも駄菓子を食う歳でもない。子供がいるなら渡しておこう。

「凄い量だな」

「駄菓子屋で五百円も使っていたからな」

 こうして出してみると本当に凄い量だ。と言うか、駄菓子って色鮮やかだよな。これ、体に入れて大丈夫なんだろうか?
 
「今はこんなのが売ってんのか」

「オレたちの子供の頃は食えるだけマシだったからな」

 十年でここまで変わるんだから時代の流れってのは凄いものだ。ってまあ、六十年も過ぎたらさらに凄いことになっているんだがな。

「初子。初子。ちょっと来てくれ。将太も連れて」

 奥にいる嫁さんに声をかけ、子供を連れて来た。

「純からだ。将太のおやつにしてくれ」

「凄い量ね。いいんですか、こんなにいただいて?」

「うちでは誰も食わないでもらってください。食べ切れないなら近所にでも配ってくれて構わないんで」

「ありがとうございます」

「あと、今日、純が泊まるんでよろしく頼むよ」

「なんかすみません。お礼になにか買って来ますんで。良二、車出せるか? 寿司でも買うとしよう。他にも買っておきたいものがあるんでな」

 オレ、案外寿司が好きなのかもしれい。こういう機会に食べておこう。

「いいのか? 高いだろうに」

「大丈夫だよ。指輪以外のものをいろいろ売ったからな。あいつも必要なら好きなだけ使って構わないと言ってるから」

 三月も金に頓着しない。仕事も遊びかなんかだと思っているからな。

「町の案内も頼むよ。あいつも買い出しに来ると思うから」

「わかった。んじゃ、行くか」

 オート三輪に乗って町へと出掛けた。