夢野姉妹と禁断の秘薬

「うぅ⋯」
ママが目の前でうなっている。
「人間界に、秘薬が、ある⋯。取りに、行ってくれ、ないか⋯?」
ママのその言葉がずっと心の中をグルグルしている。
 妹と目線を合わせ、人間界へ向かう決意をした。
 これが、全ての始まりだった――⋯⋯
    ✨️〜夢野姉妹と禁断の秘薬〜✨️
 私、魔法使いの中学1年生、夢野桃香(ゆめのももか)。
 ピンク髪に水色のメッシュが入っている腰まである髪に、ピンクの可愛い瞳。
 ママが“呪いの病”にかかっていて、それを治すために人間界にある“秘薬”を取りに行くために、魔界から人間界へ来たの。
 そして、私たちが通う学園、「聖ルミナス学園」に秘薬があるという情報をこの前掴んだの。
 残りのママの寿命は1年。
 それまでに、この学園で秘薬を取り、魔界へ帰り、ママに渡さなきゃいけない。
 そして、一緒に歩いているのは妹の蒼衣(あおい)。
 水色の髪にピンクのメッシュが入っている髪を右で結んでいて、水色の冷たい 瞳。
 校舎の中を移動していると、違和感があったものが複数あった。
 1つ目は、体育館倉庫の床。
 2つ目は、保健室の先生。
 こんな怪しげな学校に転校してきて、そわそわしないわけがない。
 私はひとつ深呼吸して、教室のドアを開けた。
 みんなの瞳がキラキラしている。
 いつも、人間の目は光っている。
「今日からいっしょに学ぶ夢野桃香です。みんなと早く仲良くなりたいと思ってます!今日からよろしくね♡」
「同じく夢野蒼衣。よろしく。」
と2人が挨拶を済ませると、教室のざわつきが増した。
 そして、ひとつだけ鋭い視線が混ざっていた。
「本当、私人間嫌いって知ってるでしょ、ママ⋯。」
と暗い様子で蒼衣がつぶやいた。
「しょうがないでしょ。ママを助けたいんだもん。希望があったら危険でも挑戦するよ。」
蒼衣にだけ聞こえるように話した。
 蒼衣が端っこで、私が通路側。
 そして、隣が黒崎レイ。
 席に座った瞬間、膝に痛みが走った。
「っ⋯!」
地味に痛くて、あまり動けなかった。
「あいつか⋯」
「どうしたの?蒼衣?」
「なんでもない。黒崎には気をつけて。」
とだけ蒼衣は言うと、フードを被って机に伏せた。
(なにか黒崎にあるの?あの視線は、黒崎のだった?)
黒崎には危険ななにかを感じる。
(蒼衣の言う通り、黒崎には気をつけよう。もし人外なら、目的の邪魔をされるかもしれない。)
3時間目の授業が始まるとき、黒崎と視線が合ってしまった。
 ビリっと体に電気が走ったみたいに硬直する。
(やっぱり黒崎は、ただ者じゃない⋯!)
黒崎の唇が静かに動いた。
「楽しそうだな、桃香。」
私にだけ聞こえるように、小声で話してきた。
 低い、圧のある声。
 なぜか初めてなのに呼び捨てで。
 その瞳には冷たい光がどことなくあって。
 つぅっと背中に冷たいなにかが伝った。
 反射的に蒼衣を見てしまった。
 こくり、と静かにうなずく。
 まるで、「近づくな」っていう警報みたいに。
 授業中もずっと、黒崎は視線をそらさなくて、見ないようにしていたけれど、バチッと視線が合っちゃった。
 ノートを取ろうとした手が硬直する。
(やっぱり、ただ者じゃない)
その考えが、頭の中から離れなかった。