ミニマムで凶暴な 風見 日向子(カザミ ヒナコ)は、ボッチだけど最高にクールでご機嫌なハイスクールライフを満喫するはずでした……









  上弦の月のように湾曲した重厚な杖を渡され、小さな小さな私の身長に迫る程の長さがあるそれを手に取れば、大きな大きなナギさんを支えるだけにしてはずっしりと重く、まるで鉄筋が入っているかのような凶器そのもの。

 ナギさんが言うには、足の甲に落としてヒビが入る本末転倒ぶりに、私はただ呆れるより他にない。

 過剰ともいえる高級感溢れる装飾に、持たされた身としては気が気でなく、手渡された杖を持ち主に返して再び、小さな小さな手でナギさんの身体を支えながら前へと進む。

 その途中、おもむろに携帯端末を取り出したナギさんは、誰かに連絡でもしているのか、入学初日から私の処遇に関連することなのだろうか?

 相変わらず自然と出てくるアメリカ英語で、繋がった電話の先の誰かと話す様は、さながら海外の日常風景のようだった。

 ナギさんを支えながら静かに、なんとなくわかる範囲で盗み聞きしていれば、どうやら車を回してもらう様子。

 この機会に私も便乗すれば、さながらVIP待遇で楽チンな送迎により、有象無象でごった返す通学路とおさらば出来るかもしれない。

 淡い期待に心を踊らせていれば、そのうち通話を終えたナギさんは、私に顔を向けて口角を上げながらゆっくりと口を開いた。

「ヒナコ、今日のお前は特別だ。車を手配したから、あたしと一緒に学校まで乗ってけよ?」

 ピンチを乗り越えた小さな小さな私は、その先にある幸運の女神の前髪を掴めたようで、VIP待遇がお待ちかねの模様だ。

 どんな車で送迎されるのか、静かに心を踊らせながら二人で路地を抜け、通学路から外れた大通りに出た。

 ナギさんの手配する車を待ってから数分もしないうちに、そこら辺を通る車とはどこか毛色の違う、あまり馴染みのない音が響いてきた。

 車のことはよくわからないけど、日本車らしくないパワフルな排気音が、段々と近付いてくるのだけはわかった。

 小さな小さな私と大きなナギさんの二人で並んで待てば、目印には困らず、日本車らしからぬパワフルな音の近付いてくる方へと視線を向ければ、いかにもパワフルな外車がこちらに気付いたのか、ハザードランプを焚きながら目の前へと停車したのだ。

 外車と言えば、左ハンドルと思い込んでいたからか、窓の向こうに見える運転手がどこか遠く感じた。

 こちらに気を利かせて窓を開けてくれたのか、ガラス一枚を隔ててどこか遠く感じた運転手の姿が鮮明となり、レイバンタイプのサングラスをかけた黒髪短髪の男は、どこからどう見ても……ナギさん、あなたはいったいどういう交遊関係を持ってるの?

 彼はどこからどう見ても……チャイニーズマフィアにしか見えず、まるで映画のスクリーンから香港ノワールが飛び出してきたかのようだった───。