見上げる恋


学校へ着くと桃太から呼ばれ、どうしたのか聞くと「お昼ご飯一緒に食べませんか?」とのことだった。

もちろんいいよと返し、お昼は中庭で食べることになった。

なんでも、これも俺を落とす一つの作戦なのだとか、作戦ってなんだよって感じだけど桃太が楽しそうにしているのでまあ良しとする。

って俺桃太に甘い、かな?


昼休み――


「お待たせしました〜」
「おう、お疲れ様」
「センパイもお疲れ様です!昼休みの、しかもご飯食べながらっていう制限付きですけど、センパイのこと色々聞いてもいいですか?」
「いいけど、答えられる範囲だけになるぞ?」
「それでもいいんです!じゃあまず…、なんでバレーだったんですか?スポーツって野球とかサッカーとか色々あったと思うんですけど」
「そうだなあ、小さい頃テレビつけた時にたまたまバレーの試合が流れてさ、それがもうすっごいかっこよくて。大きくなったら自分もスパイカーになってすごい球バンバン打ってみたいって思ったんだよな。でもまあ、この身長だろ?それは叶わなかったけどセッターっていう最高のポジションにつけて今は満足してるんだ。思い出してみたら、当時の試合に出てたセッターの人も背が低くてさ、その人みたいにはなれなくてもやっぱりああなりたいなっていう憧れではあるかな」
「なるほど、なんと言うか…、なるべくしてなった、って感じですね?」
「はは、確かにそうかもな?」
「かっこいいですね、センパイ。完全に自分のものにしてるというか、素人が何言ってるんだって感じですけど」
「いや、嬉しいよ。ありがとう」
「センパイにとってバレーってなんですか?」
「なんだよ、難しいこと聞いてくるなあ。そうだな、ずっと俺の青春かな」
「ひゃああ…!僕もそんなこと言ってみたい人生だった!」
「ま、そんな感じだ。桃太は?なんで帰宅部なの?」
「僕、昔から運動苦手なんですよね。スポーツもからっきしで…」
「なんだ、かっこいい奴は運動も出来るもんだと」
「もー!なんですかそれ!偏見ですよ、僕にだって出来ないことの一つや二つや三つ…」

指折りしながら段々と語尾が下がっていく。

「分かった、分かった!苦手なことあってもいいと思うぞ」
「…本当に?センパイ幻滅しない?」
「するわけないだろ、なんでだよ」
「だって僕センパイにかっこいいところ見せられないから…、そしたら好きになってもらえるチャンス減っちゃうかなって…」
「す、好きになるかは、まああれだけど…、苦手なことがあるからって嫌いになることはないよ」

そういうとパアッと明るい顔をした桃太は少し興奮気味に問うてくる。

「センパイに好きになってもらえるチャンスある?僕頑張ってもいい?」
「うっ…、それを本人に言ってくるのはどうなんだよ」
「だってだって!意識してもらうには手っ取り早いじゃないですか?」
「それはそうだけどさ…」
「僕頑張りますね!センパイのことキューンってさせて桃太大好きって言わせてみせますから!」


そう宣言した日から桃太はあれこれ気が付けば俺の周りをチョロチョロするようになった。

先ずは部活、放課後は必ず見学していくようになった。

終わりまで居ることも多く、一緒に帰ることが増えた。

先輩達にはわんこが今日も来てるぞ〜とからかわれる始末だ。

桃太も桃太で慣れたのか、部員に挨拶しながら定位置に座るようになってたまにお菓子を貰っている。

「センパイの先輩達優しいですね、んぐ」
「食べながら喋るな、まあ優しいけどさ」
「ひぇんはいのこともみへまふからね」
(センパイのことも見てますからね)
「分かったから!飲み込んでから喋れ!」
「ふあーい」

かっこいいのにどこかフワフワとしたところがある桃太は今ではバレー部の名物となっていた。


そして、お昼はほぼ毎日一緒に食べることになった。

特に誰かといつも食べていた訳ではないので、桃太と食べても問題はないのだが一つ問題が――

それはいつも教室に迎えに来ることだ。

「センパイ〜お昼食べましょ?」
「紀春!ももちゃん来たぞ!てかもうあれは通い妻だな」
「何言ってんだ!桃太今行く!」

友達にもからかわれるようになってしまったが、あれはきっと遊び半分だろう。

桃太が来るといつも一瞬だけザワつくが、目当てが俺だと分かっているので騒がれることはない。

「お待たせ、いつも来なくていいのに」
「僕が早く会いたいから来てるんですよ〜」
「そ、そっか…」

サラッと言われるその言葉にこっちが照れてしまう。

「桃太は友達と食べなくていいのか?」
「僕友達一人しか居ないんですよね〜」
「え?そうなのか?なのにいつも俺にくっ付いててお前…」
「ちょっ!ちょっと!なんか誤解してません!?僕この学校に友達一人しか居ませんけど他は学校違うだけですからね!」
「あ、そうなんだ?俺てっきり…」
「センパイひどい〜!」
「はは、悪い悪い」
「もう!」

高身長イケメンがぷりぷりと怒る姿は普通なら思うところがあるだろうが何故か桃太は似合っていた。