見上げる恋


「お待たせ、遅くなって悪いな」
「大丈夫ですよ、一緒に帰りたかったですし」
「今日初めて会ったのになんで俺なんだ?」
「紀春センパイのことが気になっちゃって〜?」
「はは、なんだそれ」

そんなことを言いながら学校を後にして二人で歩いていく。

並ぶと紀春の方が小さいため自然と見上げる形になるのだが、何故かそれは嫌ではなかった。

「紀春センパイってって何が好きなんですか?」
「んん?そうだな、バレーか…?」
「それはさっき見ててなんとなく分かりました、楽しそうにプレーするなあって」
「ありがとう、小さい頃からやってるんだけど身長には恵まれなかったけどな」
「それでもですよ!素人目に見ても凄かったです!センパイが上げたボールでバーンって打ってて!」
「はは、語彙が小学生かよ」

笑われてしまったが、身振り手振りで自分が見たセンパイの凄さを伝えたかった。

「えっと…、桃太だっけ。桃太は部活とかしないのか?」
「僕は帰宅部という立派な部活に入ってます!」
「それは部活とは言わないから」
「むう、いいんです!放課後行きたいところいっぱいあるしバイトも出来るならしたいし〜」
「俺とは真逆だな」
「そうですね?」

桃太が言っていることはなんとなく分かった。

こいつは容姿が整っているので女子のみならず男子にも引く手数多だろう。

う、羨ましくなんかない…!って言いたいけど正直ちょっと羨ましい。

「センパイ?」

そう言われ大きな体を少しかがめてこちらの顔を覗いてくる。

その整った顔に見つめられてボッと顔が赤くなる。

「あ、いや…、その…!」
「どうかしましたか?」
「な、なんでもない!ほら、バス来るから行くぞ」
「? はーい」

な、なに照れてんだ俺は!
そうだ、桃太の顔がちょっとかっこよかっただけだ、だからその、あの…。

ドキドキとする胸を気付かれないように押さえながら、チラッと隣を見上げる。

鼻歌でも歌い出しそうなほど嬉しそうに歩いている桃太から目が離せなかった。

「あ、センパイ!バスの時間もうすぐだよ!走って走って!」
「あ、ああ。分かった」

二人でバタバタとバス停まで走ると、何故か桃太だけが息切れしていた。

「せ、センパイ荷物多いのになんでそんな、平然としてるの…ハア…」
「そんなの毎日部活してるからに決まってるだろ、このくらいでへばってたら続けられないっての」
「な、なるほど…、これが運動部との差か…」
「ほら、バス来たからとりあえず呼吸整えろ」
「は、はーい…」

運動神経良さそうなのにあの距離を走って息切れするって、桃太実は運動音痴なのか?

なんて、失礼なことを思いながら二人でバスに乗り込んだ。