見上げる恋


声を出し的確にスパイカーの元へボールを持っていく。

簡単なようで技術がとてもいるそのポジションはバレーの中では司令塔として有名だ。

俺は昔から背が低いことがコンプレックスだった。

高身長選手みたいにバンバンスパイクを決めてみたかった。

そんな俺の希望は虚しく散ることになるのだが、今ではセッターというポジションで良かったと思っている。

この身長でもいい、というかこの身長だからこそ技術が求められる、そこが俺には最高に気持ち良かった。

レシーブで上げられたボールをいかに的確にスパイカーの元へ上げていくか、ネットに近すぎても遠すぎてもダメ、最適な場所へ最適な高さでそしてスピードで。

紀春!と呼ばれいつものようにトスを上げる。

綺麗に上がったトスはスパイカーの手によって相手コートに叩き落ちる。

自分が打っているわけではないが、綺麗に決まるとやっぱり嬉しい。


そんな風景を眺める桃太は――


「センパイすっご…、やったことないからどのくらい大変とか難しいとか分かんないけど凄いことだけは分かる…」

とても楽しそうに生き生きとしながらトスを上げていく紀春を見て目が離せなかった。

「センパイのこと、もっと知りたい…」

思わずそんなことを口走っていたがその気持ちは段々と大きくなっていく。

「バレー部って終わるの遅いのかな?紀春センパイと一緒に帰れないかな?」

もう少しだけ見学、なんて思いながら気付いたら終わりまでずっと見ていた。


「お前まだ居たのか?」
「もう!お前じゃなくて桃太です〜、センパイ練習お疲れ様でした。ねね、一緒に帰りましょ?」
「はいはい、桃太ね。帰るのはいいけど俺バスだぞ?」
「なんと奇遇、僕もバスです」
「俺梅の坂方面だけど…」
「なんとなんと、僕も梅の坂方面です。もしかしたら家近いかもしれないですね?」
「はあ、じゃあ着替えてくるからちょっと待っててくれ」
「はーい!ありがとうございます!」

センパイと一緒に帰れる、それだけで嬉しかった。

帰りは何を話そうか?部活のことも聞きたいけどセンパイの話も聞きたい。

そんなことを思いながら出てくるまであれこれ考えていた。