ケガをして引退したはずの僕を元ライバルはまだ諦めてくれない

「水城くんさ」

 部室に入るといきなり由良さんに声をかけられた。

「な、なに?」

 由良さんは倉庫の鍵を探しながら、こっちも見ずに呑気に答える。

「土屋くんのお気にだよね」
「は?」

 あった、と鍵を揺らしてこっちに向き直ると、もう一度確認するように言い放つ。

「土屋くんの専属っていうの? そんな感じ」

 にっこり笑うと軽くスキップして出ていった。
 入れ替わるように土屋が顔を出す。
 すれちがった由良さんを振り返り見たあと、僕を見て渋い顔をする。

「なに、あれ」
「さ、さぁ?」

 お気に? どういう意味だ?
 みぞおちがざわざわする。

「なにか言われた?」
「な、なにって?」

 じっと探るようににらみつけられる。
 つ、土屋の、せ、専属? とか言われた、なんて……

 言っちゃだめだろ!?

「――聞いてくる」
「やめろ!」

 由良さんの後を追おうとする土屋を全力で止めた。
 土屋は首だけで振り返り、鋭い目つきでまたにらみつける。

 もうさぁ、僕なにかした??

「じゃ、なに言われた?」
「いや、ちょっと僕にもよくわからなくて」

 それは事実だ。
 どういう意味かちょっとわかってない。
 けど、それで許される雰囲気じゃないことはわかる。

「それよりさ」
「それより?」

 無理やり話を逸らしたことに、当然苛立ってるみたいだけどしかたない。

「明日、例の返事するから」
「あ、ああ」

 途端に空気が軽くなる。
 自分から振る話じゃなかったけど、まだこっちの方がどうにか話せそうだ。

「えっと……とりあえず明日まで待ってろ」
「うん」

 土屋の頬がふっくらと持ち上がった。
 さっきまでの剣呑な表情が噓のようだ。

 でも、やっぱり気になる。

 専属とは??