放課後、なぜか土屋が教室前に現れた。
不本意だけど一緒に部室に向かう。
「なに? いつも先に行ってるのに」
「部活来ない気がしたから」
監視かよ。
連行?
どことなく不安げな面持ちの土屋にため息をついた。
「だから、まだ退部してないからさぼらないよ」
あからさまに緩んだ土屋の口元に、むずがゆくなる。
とはいっても、辞めるつもりなんだけど。
土曜日同様、土屋の誘いでふたりでアップし、それ以降はひとり見学に徹した。
これって来る意味ないよな。
ぼーっとどこを見るわけでもなく、グラウンドを眺めた。
「水城って」
「――え?」
いつの間にか駆け寄ってきていた土屋に肩を叩かれた。
「もう、何度も呼んだのに」
「ごめん、ぼぅっとしてた」
呆れたように肩を竦める土屋の手にはスマホがある。
「ちょっと走るから撮ってくれない?」
差し出されたのは土屋のスマホだ。
「由良さんに言えよ」
陸上部の唯一の女子マネージャーだ。
通常の部活や大会での雑務や記録係、今みたいにフォーム確認で録画したりもしてくれる。
「お前でいい」
「いやだよ、頼めよ」
「お前がいいんだって」
無理やり渡されたスマホに困惑する。
もう、仕方ない。
ロック画面がついた瞬間、土屋に奪い返された。
「は? なんだよ」
「ご、ごめん」
どことなく焦っている様子の土屋は背を向けてごそごそとしばらくスマホを操作する。
「顔認証とかじゃないの?」
「いや、そうなんだけど……」
なにしてんだ?
いつも冷静で落ち着いてる土屋なのに、1週間の約束の日からなんかおかしい。
スマホを触る土屋を半分イライラしながら胡乱な目で見ていた。
ようやく安堵したように息をついた土屋に、またスマホを渡された。
「動画でよろしく」
「っとに、仕方ないな」
すでに起ちあがっていたカメラアプリの画面で、土屋を追いかけた。
グラウンドの端に設置されたスターティングブロックを調節する土屋。
僕はそれをずっと画面越しで見る。その途中で録画ボタンをタップした。
短い笛の音。同時に土屋が飛び出した。
グラウンドのせいなのか、土用のスパイクを履いててもいつものスピードには及ばないようだ。
でもお手本のようなきれいなフォームにわくわくした。
こんなにじっくり土屋の走りを見たのは久しぶりかもしれない。
録画を止めて、アプリを閉じた。
色気のないデフォルトのホーム画面に違和感を覚えたが、今撮った動画も気になった。
「撮れてるか確認した方がいいのかな?」
でも勝手に見るのもなぁ。
アプリ一覧をスクロールするか迷っていると、土屋が軽やかに戻ってきた。
「ありがとう」
「あ、いや、撮れてるか見てみて」
「ああ」
今度は丁寧にスマホを引き取ると、土屋はどこかうれしそうに操作する。
「よく撮れてる。ありがとう」
「いや、うん」
「どうだった?」
ん? どう、とは?
土屋の問いの意味がわからずに首を傾げた。
カメラの使い勝手のことか?
いや、走りのことか。
「ああ、きれいなフォームだったよ」
「そっか」
もう一度スマホに視線を落とした土屋が僅かに微笑んだ。
「またあとで撮ってくれる?」
「あ、ああ。別にいいけど」
「ありがと、よろしく」
ていうか、由良さんに頼めよ。
不本意だけど一緒に部室に向かう。
「なに? いつも先に行ってるのに」
「部活来ない気がしたから」
監視かよ。
連行?
どことなく不安げな面持ちの土屋にため息をついた。
「だから、まだ退部してないからさぼらないよ」
あからさまに緩んだ土屋の口元に、むずがゆくなる。
とはいっても、辞めるつもりなんだけど。
土曜日同様、土屋の誘いでふたりでアップし、それ以降はひとり見学に徹した。
これって来る意味ないよな。
ぼーっとどこを見るわけでもなく、グラウンドを眺めた。
「水城って」
「――え?」
いつの間にか駆け寄ってきていた土屋に肩を叩かれた。
「もう、何度も呼んだのに」
「ごめん、ぼぅっとしてた」
呆れたように肩を竦める土屋の手にはスマホがある。
「ちょっと走るから撮ってくれない?」
差し出されたのは土屋のスマホだ。
「由良さんに言えよ」
陸上部の唯一の女子マネージャーだ。
通常の部活や大会での雑務や記録係、今みたいにフォーム確認で録画したりもしてくれる。
「お前でいい」
「いやだよ、頼めよ」
「お前がいいんだって」
無理やり渡されたスマホに困惑する。
もう、仕方ない。
ロック画面がついた瞬間、土屋に奪い返された。
「は? なんだよ」
「ご、ごめん」
どことなく焦っている様子の土屋は背を向けてごそごそとしばらくスマホを操作する。
「顔認証とかじゃないの?」
「いや、そうなんだけど……」
なにしてんだ?
いつも冷静で落ち着いてる土屋なのに、1週間の約束の日からなんかおかしい。
スマホを触る土屋を半分イライラしながら胡乱な目で見ていた。
ようやく安堵したように息をついた土屋に、またスマホを渡された。
「動画でよろしく」
「っとに、仕方ないな」
すでに起ちあがっていたカメラアプリの画面で、土屋を追いかけた。
グラウンドの端に設置されたスターティングブロックを調節する土屋。
僕はそれをずっと画面越しで見る。その途中で録画ボタンをタップした。
短い笛の音。同時に土屋が飛び出した。
グラウンドのせいなのか、土用のスパイクを履いててもいつものスピードには及ばないようだ。
でもお手本のようなきれいなフォームにわくわくした。
こんなにじっくり土屋の走りを見たのは久しぶりかもしれない。
録画を止めて、アプリを閉じた。
色気のないデフォルトのホーム画面に違和感を覚えたが、今撮った動画も気になった。
「撮れてるか確認した方がいいのかな?」
でも勝手に見るのもなぁ。
アプリ一覧をスクロールするか迷っていると、土屋が軽やかに戻ってきた。
「ありがとう」
「あ、いや、撮れてるか見てみて」
「ああ」
今度は丁寧にスマホを引き取ると、土屋はどこかうれしそうに操作する。
「よく撮れてる。ありがとう」
「いや、うん」
「どうだった?」
ん? どう、とは?
土屋の問いの意味がわからずに首を傾げた。
カメラの使い勝手のことか?
いや、走りのことか。
「ああ、きれいなフォームだったよ」
「そっか」
もう一度スマホに視線を落とした土屋が僅かに微笑んだ。
「またあとで撮ってくれる?」
「あ、ああ。別にいいけど」
「ありがと、よろしく」
ていうか、由良さんに頼めよ。

