ケガをして引退したはずの僕を元ライバルはまだ諦めてくれない

 僕は感慨深く競技場を見渡した。

 インターハイブロック地区予選。

 1年前、この大会でケガをした。場所は違うんだけど。

 そのあとの僕は荒んでたと思う。
 復帰もできたはずなのに、すべて投げやりだった。
 同情とか哀れみとか、そんな感情に嫌気がさした。

――じゃないな。

 僕がそう仕向けてたんだ。それを理由に逃げた。
 そっと痛みのない左脚に触れた。

 結局、僕が弱かったんだ。

 そんな弱い僕に、先生、部員たちが居場所をくれた。
 まさか1年後マネージャーとしてここにいるなんて思ってもなかったな。
 思わず笑ってしまった。

「水城」

 スタンドに現れた土屋が僕を見つけた。

「約束果たしてくる」
「おう」

 一緒に招集場所に向かいながら、土屋は決意を口にした。
 僕は思いを込めたグータッチで答える。

「見てるから」
「うん」

 優しく見つめる土屋の目の奥に熱い闘志が漲る。
 その力強さに気圧され身震いした。

 土屋と同じ未来を見ていることに、喜びが押し寄せてくる。

「行ってこい」 

 大きな歓声の中、僕は滾る思いを込めて、土屋の背中を押した。