ケガをして引退したはずの僕を元ライバルはまだ諦めてくれない

「はーい、行って10分で買ってこーい」

 少し肌寒い、白けた朝。
 部員たちがマイクロバスから次々に降りていく。
 目指すはコンビニ。
 昼食を買いに立ち寄った。

「なに買う?」
「うーん、そうだなぁ」

 一斉におにぎりの陳列棚に押し寄せた部員たちの後ろで、土屋が聞いてきた。

「みんなが選んだあとでいいや」

 空いたお菓子の棚に移動すると、後ろから土屋もついてくる。

「早く選ばないとなくなるぞ」
「俺も後でいいよ」

 いや、そうはいかないだろ。
 選手なんだからさ、食事を適当に済ませるなよ。

「パン見てみる?」

 僕の提案に頷く土屋とパンの棚に向かう。
 きのうバスで話してから、ずっとこんな感じだ。
 夕食のバイキングでも一緒に選んで食べて、僕の部屋に入り浸って、自分の部屋に戻ろうとしない。

「明日に響くだろ?」

 と、同室で砲丸投げの三倉がむりやり追い出した。

 元に戻った? そんな感じ。

「これでいい?」

 といちいち聞きながらかごに入れて行く。
 僕、保護者かよ。
 でも悪い気はしないってどうなんだ?

 部員たちは会計を中野先生に任せバスへ戻る。
 僕たちマネージャーは先生のお手伝い。
 と思ったら、土屋まで残っている。

「助かるわぁ」

 呑気に人手が増えたと喜ぶ先生だけど、土屋が純粋にお手伝いで残ったと思えないのは気のせいかな。
 大量の食料をいくつもの保冷バッグに詰め込む。
 由良さんと新人マネージャーの持ち分を土屋が引き取った。

「おぉ、イケメンなことするじゃん」
「水城のも持つけど?」
「は? 舐めんな」

 この程度の荷物、持てないとでも思ったのか? 失礼だな。
 僕は一瞥してバスへ向かう。
 後ろでクスリと笑われた気がした。

 ……まあ、いい。
 気を取り直して、さあ、出発だ。