明日から3日間行われる県大会のため、競技場近くのホテルに前乗りする。
旅行気分ですごく楽しみ。
そうはいっても目的は県大会。
これを制すればブロック地区予選、そしてインハイにつながる。
でもみんないい感じにリラックスしてて、いいんじゃないかな。
そんな中でも、マネージャーは呑気に浮かれてる場合じゃない。
遠征のタイムスケジュール、ホテルの部屋割り、事前買い出しリスト、大会でのマネージャースケジュールとか……
「これひとりでやってたの?」
「中野先生とね」
由良さんがあっけらかんと答える。
今回も副顧問の中野先生への連絡は、由良さんに任せてたから詳細は知らないけど、飄々と問題なくやってるのをみると、さすが由良さんって思う。
マイクロバスの後部を全開にして、部員たちがどんどんとバスの周りに荷物を持ってくるのを、次々に入れ込んでいく。
テント、ブルーシート、巨大アイスボックス、部員のリュックなどなど
由良さんは男子部員に、次に入れるのを指示して場所もちゃんと伝えている。
5月にマネージャーとして入部した新1年生の女子も、由良さんに付いてテキパキと捌いていく。
とても頼もしい。
大量の荷物に全部入るのかと不安だったが、杞憂だった。
「すごいな」
「そう?」
捌けるなぁ。
「みんな乗れー」
運転席に回り込みながら高木先生が叫ぶと、みんなが次々にバスに乗り始める。
ここでも由良さんは乗り込む部員たちをひとりひとりチェックしてる。
「水城くんは前から2番目の席ね」
マネージャーだから前席確定か。
最後のひとりが乗り込んだのを確認して、ようやく僕も乗り込んだ。
「え? そこ……」
僕の席に土屋が座っていた。
座席に置いてたリュックを抱え、土屋が目で座れよ、と言ってくる。
「そこマネージャーのとこだろ」
通路に立ち尽くして顔を顰めた。
本当は土屋の姿を見てから、指先がジンジンと痺れてる。
あの記録会から土屋の一挙手一投足に敏感に反応してて、この感覚を持て余してるんだ。
「じゃーま。早く座って」
後ろから乗ってきた由良さんがわざとリュックをぶつけて前の席に座ると、ぺこりと頭を下げて新マネージャーもその隣に座った。
「おーい、座れー。出発するぞー」
先生の声に、ためらう間もなく土屋の隣に腰を下ろした。
ちらりと土屋を見ると膨れたリュックの上で頬杖して外を眺めている。
ふとした違和感に考え込む。
前みたいに話しかければいいんだけど、なんとなくできないんだよな。
なんでだ?
それでも意を決して声をかけてみた。
「お前さ」
「……なに?」
いつもに増して不愛想に返事をする。
なんだろ……? ちくちくとみぞおちが痛い。
話してもそっけないというか。
まあ、そんなやつだけど、なんか違うんだよな。
「僕なんかした?」
「え?」
「え?」
土屋のマヌケな反応に、僕もマヌケに返した。
「どして?」
意味がわからない顔で眉を顰める土屋に、思わず顔をそむけた。
「いや、なんていうか……う……んと、ここずっとあんまり話してないなって思って」
録画を頼まれたりしたけど、部活以外で話したのって最近なくない?
ましてこうやってふたりで話をするのってなかった気がする。
口数の少ない土屋だから気にするほどでもないんだけど。
いや気になってるからモヤモヤするんだよ。
いつから?
えっと……
あ。
「マネージャーになってからだ」
確信して土屋を見ると、今度は顔を背けられた。
そうだよ。
あれだけマネージャーになれって推しておいて、なった途端避けられた感じだったんだ。
「お前がなれって言ったのにさ」
ブツブツとつぶやくと、ちらりと視線を感じた。
構わず愚痴ってみる。
「なんか避けられてんのかなぁって……」
短く息を吸い込む気配がした。
でも言葉は発せられずに、土屋がため息をついた。
「……避けてない」
蚊の鳴くような声、それもほのかに優しい声色だ。
「ん?」
「忙しそうだったろ」
「え?」
「仕事」
「仕事?」
「マネージャー」
「ああ――」
「邪魔かなって」
「――なんだ、そうか」
思わず顔が緩んで笑いかけた。
「気にすることなかったのに」
マジで避けられてるって思ってたから安堵して笑いかけたのに、土屋が一瞬眉をひそめた。
「——あと」
「あと?」
あ。やっぱりなにかあるんだ……
「由良さんの言うことは聞くんだと思って」
「へ? 由良さん?」
なんの話だ?
由良さん?
「マネージャー」
「うん、由良さん、そうだね」
「違う。マネージャーになれって、俺言ったよね」
「あー、うん」
だから今やってるけど。
「断ったくせに」
「今やってんじゃん」
「由良さんか言ったからだろ?」
「え? 違うけど?」
「……え?」
「高木先生に言われた……けど……?」
「……え?」
「え?」
なんだよ。どういう事だよ。
なんの勘違いで、なにを怒ってんだ?
「……ごめん。なんでもない」
少し恥ずかしそうにしてる土屋に僕はゆっくり首をかしげたが、リュックを足元に置きながら「お前も置けば?」と言ってみる。
ごそごそと身を丸める土屋の姿を見ながら、腑に落ちない疑問にまた首をかしげた。
旅行気分ですごく楽しみ。
そうはいっても目的は県大会。
これを制すればブロック地区予選、そしてインハイにつながる。
でもみんないい感じにリラックスしてて、いいんじゃないかな。
そんな中でも、マネージャーは呑気に浮かれてる場合じゃない。
遠征のタイムスケジュール、ホテルの部屋割り、事前買い出しリスト、大会でのマネージャースケジュールとか……
「これひとりでやってたの?」
「中野先生とね」
由良さんがあっけらかんと答える。
今回も副顧問の中野先生への連絡は、由良さんに任せてたから詳細は知らないけど、飄々と問題なくやってるのをみると、さすが由良さんって思う。
マイクロバスの後部を全開にして、部員たちがどんどんとバスの周りに荷物を持ってくるのを、次々に入れ込んでいく。
テント、ブルーシート、巨大アイスボックス、部員のリュックなどなど
由良さんは男子部員に、次に入れるのを指示して場所もちゃんと伝えている。
5月にマネージャーとして入部した新1年生の女子も、由良さんに付いてテキパキと捌いていく。
とても頼もしい。
大量の荷物に全部入るのかと不安だったが、杞憂だった。
「すごいな」
「そう?」
捌けるなぁ。
「みんな乗れー」
運転席に回り込みながら高木先生が叫ぶと、みんなが次々にバスに乗り始める。
ここでも由良さんは乗り込む部員たちをひとりひとりチェックしてる。
「水城くんは前から2番目の席ね」
マネージャーだから前席確定か。
最後のひとりが乗り込んだのを確認して、ようやく僕も乗り込んだ。
「え? そこ……」
僕の席に土屋が座っていた。
座席に置いてたリュックを抱え、土屋が目で座れよ、と言ってくる。
「そこマネージャーのとこだろ」
通路に立ち尽くして顔を顰めた。
本当は土屋の姿を見てから、指先がジンジンと痺れてる。
あの記録会から土屋の一挙手一投足に敏感に反応してて、この感覚を持て余してるんだ。
「じゃーま。早く座って」
後ろから乗ってきた由良さんがわざとリュックをぶつけて前の席に座ると、ぺこりと頭を下げて新マネージャーもその隣に座った。
「おーい、座れー。出発するぞー」
先生の声に、ためらう間もなく土屋の隣に腰を下ろした。
ちらりと土屋を見ると膨れたリュックの上で頬杖して外を眺めている。
ふとした違和感に考え込む。
前みたいに話しかければいいんだけど、なんとなくできないんだよな。
なんでだ?
それでも意を決して声をかけてみた。
「お前さ」
「……なに?」
いつもに増して不愛想に返事をする。
なんだろ……? ちくちくとみぞおちが痛い。
話してもそっけないというか。
まあ、そんなやつだけど、なんか違うんだよな。
「僕なんかした?」
「え?」
「え?」
土屋のマヌケな反応に、僕もマヌケに返した。
「どして?」
意味がわからない顔で眉を顰める土屋に、思わず顔をそむけた。
「いや、なんていうか……う……んと、ここずっとあんまり話してないなって思って」
録画を頼まれたりしたけど、部活以外で話したのって最近なくない?
ましてこうやってふたりで話をするのってなかった気がする。
口数の少ない土屋だから気にするほどでもないんだけど。
いや気になってるからモヤモヤするんだよ。
いつから?
えっと……
あ。
「マネージャーになってからだ」
確信して土屋を見ると、今度は顔を背けられた。
そうだよ。
あれだけマネージャーになれって推しておいて、なった途端避けられた感じだったんだ。
「お前がなれって言ったのにさ」
ブツブツとつぶやくと、ちらりと視線を感じた。
構わず愚痴ってみる。
「なんか避けられてんのかなぁって……」
短く息を吸い込む気配がした。
でも言葉は発せられずに、土屋がため息をついた。
「……避けてない」
蚊の鳴くような声、それもほのかに優しい声色だ。
「ん?」
「忙しそうだったろ」
「え?」
「仕事」
「仕事?」
「マネージャー」
「ああ――」
「邪魔かなって」
「――なんだ、そうか」
思わず顔が緩んで笑いかけた。
「気にすることなかったのに」
マジで避けられてるって思ってたから安堵して笑いかけたのに、土屋が一瞬眉をひそめた。
「——あと」
「あと?」
あ。やっぱりなにかあるんだ……
「由良さんの言うことは聞くんだと思って」
「へ? 由良さん?」
なんの話だ?
由良さん?
「マネージャー」
「うん、由良さん、そうだね」
「違う。マネージャーになれって、俺言ったよね」
「あー、うん」
だから今やってるけど。
「断ったくせに」
「今やってんじゃん」
「由良さんか言ったからだろ?」
「え? 違うけど?」
「……え?」
「高木先生に言われた……けど……?」
「……え?」
「え?」
なんだよ。どういう事だよ。
なんの勘違いで、なにを怒ってんだ?
「……ごめん。なんでもない」
少し恥ずかしそうにしてる土屋に僕はゆっくり首をかしげたが、リュックを足元に置きながら「お前も置けば?」と言ってみる。
ごそごそと身を丸める土屋の姿を見ながら、腑に落ちない疑問にまた首をかしげた。

