ケガをして引退したはずの僕を元ライバルはまだ諦めてくれない

 陸上部を退部して4ヶ月。
 恥ずかしながら、マネージャーとして再入部した。
 みんな歓迎してくれてほっとしてる。
 覚悟はしてたけど、やっぱり居心地は良くない。これが出戻りの気まずさってやつか。
 それでも僕は、再出発すると決めたんだ。

 内情はわかってるから問題ないけど、マネージャー業務はド素人で、由良さん様様でずっと引っ付いて回ってる。

「とても助かるわぁ」

 由良さんがフレキハードルを抱え倉庫の外に出す。
 僕も持てるだけ持ってそのあとに続く。
 基本使う人が準備をするけど、その下準備をできるだけしておくのも仕事。
 器具の不具合とかもチェックできるし、片付けも倉庫内の管理上、やった方が絶対楽だ。

「よくひとりでやってたね」
「足は遅いけど、体力はあるから」

 ふふん、と力こぶを見せつける。
 たくましいマネージャーだよ。

「エントリーの手続きの仕方教えるから、部活のあと残れる?」
「いいよ。――もうそんな時期か」
「4月になったら新入生のマネージャー募集するから、それまでにマネージャー、完璧になってよ」
「うっす……」

 同級の由良さんも夏には引退する。
 後任を育てないといけないんだけど、一度、僕じゃなく1年生がよかったんじゃないかって訊いたことがある。

「モチベーションの問題があってね」

 よくわからない答えだったけど、とても助かったってその時も言われた。

 役に立てたならいいや。

 記録を取りながら1年生のフォームを確認する。

「経験者だからその辺もアドバイスできるでしょ?」

 教えるほどの力はないけど、確かに、こうしたらいいよってくらいは伝えられる。
 今までは自分の走りばかり気にしてたけど、こうやってひとりひとりの走りを見てると、みんな独特でこんなに違うんだって改めて気づかされる。
 部員それぞれ癖があっておもしろい。 
 違う角度から見る陸上が、すごく楽しい。
 
 そんな発見の毎日がおもしろくて、不思議と走りたいなって考えてないことに気づいた。

 「来シーズン、みんな自己新出せるといいな」

 うんうん、と由良さんが楽しそうに頷いた。