ケガをして引退したはずの僕を元ライバルはまだ諦めてくれない

 遅く起きた土曜日。
 ふらりと買い物ついでに街中を歩いた。
 いつもの通学路だけど、土曜日のせいか昼間のせいか、雰囲気が違っておもしろい。

「あ。水城くん」

 呼びかけられ振り向くと由良さんが手を振っている。

「買い物?」

 由良さんが手にぶら下げたレジ袋を見て微笑む。

「そ。由良さんは?」
「部活帰り」

 ジャージにリュックって、聞かなくてもわかるんだけど。

「みんな元気?」
「う……ん、まぁ」

 一瞬由良さんの目が斜め上を彷徨ったが、にっこりして僕をとらえた。

「元気よ。水城くん暇してんじゃない?」
「まあ、今までやれなかったこと目いっぱいやってるかな」
「あーいいなぁ」

 羨ましそうに上目遣いに見る。
 いいだろ? 毎日が楽しいよ。

「充実してそうでよかった」

 陽気に笑い、じゃあ、と走り去る由良さんの背中を見送る。
 なんか生き生きしてるな。

 充実。充実かぁ。

 由良さんの言葉がずっと心で繰り返してる。