ジョブチェンジ!

 翌朝、目が覚めたユウは身支度をし村へ向かった。
 村に着くと昨日の穏やかな感じではなく少しこわばった空気を感じた。

(なんで村の人たちがざわついているんだろう。とりあえずギルドにでも行って情報を聞いてみよう)

「お姉さんこの村で何か、あったんですか?」
「あーそのことですが村じゃなくて昨日近くの森で凶暴な魔物が出現したという()が流れているんです」

 あれ?それもしかして昨日のわたし……まさかねそんなわけないか。

「ちなみにその魔物って何なんですか」
「吸血鬼ですね。言い伝えでは森の古びた館に住んでいるといわれているので今はあまり森に入らない方がいいですね」

(森にそんな場所があったのか。吸血鬼……気になるしちょっと行ってみよう)

 ギルドハウスを後にしたユウは、すぐに森へ向かった。
 森の奥へと進むと遠くにうっすらと大きな屋敷が見えてきた。すると、どこからともなく謎の少女の声が聞こえた。

「人間よこれは警告だ今すぐこの場から立ち去るがいい。立ち去らぬのならば命は無いと思え」

 しかしそんな忠告を無視してユウは歩みを進める。

「おい人間本当にこの先に進むのか?言っておくが屋敷には何もないぞ」

 まるで館に住んでいるような話し方だな。もしかしてこの声の主は例の吸血鬼なのか。

 そんなことを考えていたら屋敷に到着した。

「近くで見るとずいぶん大きいな。だけど結構ボロボロになってる経年劣化かな。とりあえずお邪魔しまーすよっと」

 楽しそうに両開きの扉を押し屋敷の中へ入っていく。
 屋敷の中は広く部屋も多くあり探索しがいのある設計になっていた。ユウはゲーマだったこともあり館の主を探すことを忘れ夢中で屋敷を探索した。

「おぉ、こんなところに宝箱、中身はなんだろな~」

 ウキウキで宝箱を開けながらユウは思った。
(もっと効率的に館を探索したいなぁ)と。すると何か思いついた様に手をポンッと叩いた。

「あっそうだ!こんな時は……ジョブチェンジ!【トレジャーハンター】」

 足元に魔法陣が出現し光に包まれユウの姿がトレジャーハンターに変化した。
 変化したのは見た目だけではなく常時発動のスキルとしてお宝の場所がわかるトレジャースキルとホログラムマップが付与された。

「おぉ、見える、見えるぞ!お宝の場所が!それとこの赤い点はなんだろう。もしかしてこの館に居る噂の吸血鬼かな。とりあえずお宝目指して前進だー」

 ユウはホログラムマップを駆使して広い館の中を駆け回った。宝箱を開けながら。
 そうこうしているうちにあの赤い点の前まで来てしまっていた。
 目の前には大きな両開きの扉。装飾も他の扉と違い豪華になっている。

「この扉の先に居るのかな吸血鬼。大丈夫かなわたし、ニンニクとか十字架持ってないけど……まぁいっか開けちゃえ」

 ギィイイイ。

 ユウは重い扉を両手で押し開けた。

「お、女の子?なんでこんなんところにいるの」

 視界の先には長い銀髪をたなびかせた可愛らしい小柄な少女が豪華なイスに座っていた。

「よくここまで来たわね人間。初めまして我の名前はルイナ・エリアス。この館に住む吸血鬼よ」

 手と足を組みユウを見下すように話をする。

「人間、お前は私の館に侵入した挙句宝を持ち帰ろうとはいい度胸だな」

 ユウは目の前の吸血鬼を眺めていた。

(可愛いなあの吸血鬼……)

「どうした我の偉大さに恐れをなしたか?」
「いや、可愛いなと……」

 ユウは眼を輝かせてルイナを見つめる。

「なっ、可愛いだとそんな目でわた……我を見るな」

 頬を赤く染め分かりやすく動揺するルイナ。

「どうしてお前は人間の癖に我を見て逃げ出さないのだ他の人間は我を見るなり逃げ出すというのに」
「だって可愛いから別に怖くないよ」
「あーもうそれ以上可愛い、可愛い言うな調子が狂うだろ」

 ルイナは再び頬を赤らめ手で顔を覆いその場でじたばたした。
 このままでは話が進まないと思い話を変えようとしたときルイナが口を開いた。

「そもそもお前はどうしてここに来た。何が目的だ」
「この森で吸血鬼が出たって村で騒ぎになってたから調査しに来たんだ。どうも昨日このあたりで膨大な魔力の発生が確認されたとか……」

(まぁ心当たりしかないんだけどね)

「そのことなんだが我は何も知らんぞ。我も昨日その魔力が発生した場所に行ってみたんだがなんかすごく禍々しいことになっていて恐ろしくて逃げだしてしまった。400年生きているがこんな事初めてだ」

 その話を聞いたユウは、まさか自分の放った魔法がこんな事になっていたことに驚きを隠そうとしていた為か自分でもわかるくらいに目が泳いでいた。

「どうしたお前さっきから落ち着きがないな。何か隠してることがあるのか」
「い、いや別に何も隠してないけど」

 嘘をつくのが下手なユウはまたわかりやすく動揺していた。

「何か隠しているのなら早く話すことだな」

 ルイナはユウを脅すように片手に魔力を溜め始めた。

「分かったから落ち着いてちゃんと話すから」

 ユウは慌てて昨日のことを話したがルイナは半信半疑だった。

「もしお前の話が本当なら今ここでその力を証明して見せよ」
「……わかったよ。ジョブチェンジ【魔法使い】」

【魔術師】能力は火、水、風、氷、光、闇の6属性の付与それに伴い魔力の大幅な増加を得ることができる。
 そして今ユウの両手で握る杖に膨大な魔力が宿り始めた。

「それじゃあ行くよ。これが私の最大火力メテオフルファイヤー!」
「!?」

 真剣な表情のユウが放った炎魔法メテオフルファイヤーは、目の前のルイナではなく隣の壁に掛けられた旗に目掛けて放たれ壁に大きな穴が開いた。

「これでどう吸血鬼さん……ってなんで泣いてるの」

 魔法を打ち終えふと顔を上げるとルイナが目に涙を浮かべおびえていた。

「信じる……信じるから殺さないでくれ」
「殺さない、殺さないから顔を上げて」

 慌ててルイナに顔をように促しユウは優しく話しかける。

「ねぇ、あなたはいつからここに住んでるの」
「ここには大体300年前から住んでいる。それまではここからはるか北の地に住んでいたが人間に町を襲われここまでにげてきた」
「もしかして300年間一人でこの屋敷に住んでたの」
「いや、一人じゃなかった。ここには人間の少女と住んでいた。お前と歳は近かったな。でも人間の寿命は長くない。その少女とも数十年しか共に過ごせなかったがな」

 日も落ち始めた夕暮れ時にルイナはさみしそうにそう語った。