ジョブチェンジ!

「おーい、ユウ朝だぞ起きろ~」

 翌朝、ユウを部屋まで起こしに来たのは魔王ミリティアだった。

「ん~、後五分……いや、一時間……」
「寝過ぎだ早く起きろ!」

 布団にくるまり、まだ寝ようとしているユウをミリティアはたたき起こした。

「なんで起こしたのぉ?今日は一日中寝てようと思ったのに」

 ユウは目をこすりながらミリティアの方を見た。

「今日は年に一度の魔界運動会の日だからな。さぁ、早く準備して会場に行くぞ」

 ミリティアはそう言って部屋から出て行った。
 魔界競技大会。それは年に一度、大魔界競技場で行われる、大会で種目ごとに術や武術を使い競い合うのだ。
 ユウはベットから降り支度をしてホテルの外へ出た。
 そこにはミリティアと共にルイナたちが待っていた。

「ユウ、遅いぞ」
「さぁ、さぁ、早くいきますよ」

 ユウはルイナたち背中を押されながら大魔界競技場へ移動した。競技場の付近にはたくさんの屋台が出ていた。

「ミリティア様こちらです」

 大魔界競技場に着いたユウたちは入口の門の前で手を振って待っていたサフィーナの下へ歩いて行った。

「もうユウさんたちの参加登録は終わってますのでミリティア様と一緒に控え室の方にご案内いたしますね」
「ちょっと待って、わたし参加登録なんてしてないよ」
「私が登録しておいた」

 ユウが困惑しているとミリティアがサフィーナの隣に移動しながら自白した。

「こうでもしないと参加しなかっただろ」
「確かにそうだけど……わたしたちは何の競技に出るの?」
「そのことは控室に行ってから話そう」

 サフィーナの案内で控室へ向かった。この控室は天井にシャンデリアがつるされていて机の上にはフルーツの盛り合わせ、ソファーはふかふかでガラス越しに会場が一望できるようになっているVIPルームだった。

「はい、これ」

 部屋に入るとミリティアは一枚の紙をユウに渡した。
 その紙には大会のプログラムと誰がどの種目に出るかが書いていた。

「リレーに綱引き、大玉転がし、玉入れ、なんだか運動会みたいな競技ばかりだね」
「あぁ、悪い渡す紙を間違えた。それは成人未満の部のプログラムだ。わたし達のはこっちだ」

 ユウは別の紙を受け取った。

「的当て、滑空レースにダンジョンタイムアタック、それにチーム対抗バトルロワイヤル……意外と面白そうだなぁ」

 そして誰がどの競技に出るかだがリリィが的当て、ルイナが飛行レース、ミゼルディアがダンジョンタイムアタックとなっている。

「わたしの出る競技最後のチーム対抗バトルロワイアルだけなんだ」
「お前は強すぎるからな。ほかのチームが点を取れるようにするにはこれしかなかったんだ。そしてほかのチームは各競技二人か三人で登録できるが私のチームとユウのチームはバランスを考えて一人だけしか登録できないんだ」
「いま私のチームって言ってたけどもしかして、ミリティアもでるの?」
「あぁ、我々魔王軍も参加するぞ」

 ミリティアは胸を張ってそういった。そしてチーム魔王軍のメンバーは元王宮魔術師のエネシア、メイドのサフィーナとルディーナ、魔王のミリティアの四人だ。
 この競技大会は基本四人から六人でチームを作ると誰でも参加ができるようになっており学校や企業でチームを作り参加するところもあるみたいだ。そして年々参加チームが増えているらしい。

「ミリティア様そろそろお時間ですよ」
「おぉ、もうそんな時間か。それじゃあ私は開会式に出てくる」

 そう言ってミリティアはサフィーナと部屋から出て行った。開会式の様子は部屋の窓から眺めることができた。
 そして開会式が終わると早速最初の競技である的当てが始まろうとしていた。
 競技場真ん中のステージの上にはすでに的当ての参加者がそれぞれ立っていた。その参加者の中にリリィの姿が見えた。
 この的当てのルールはいたってシンプルでステージの周りを飛ぶ特定駆除植物、魔林檎を飛び道具、又は魔法で撃ち落とした数だけそのチームに得点が入る。

「魔王軍からこの競技に出るのはルディーナさんでしたか」
「て、手加減はしませんよ」
「さぁ、皆様お待たせいたしました!ただいまより最初の競技、的当ての開始です!」

 元気な声とともに的当てが開始された。
 それと同時に参加者は飛び道具や魔法で魔林檎を落としていった。

「そういえばリリィのやつ攻撃魔法って使えたっけ?」
「攻撃魔法は苦手って言ってたけど、どうなんだろう」
「ちょっと心配ですね。飛び道具でも持ってるんでしょうか」

 三人はそんな心配をしていたがリリィ本人はとても落ち着いていた。

「……行きます!」

 リリィはナイフを取り出して素早く投げ魔林檎を一つ落とした。そしてどこに持っていたのかどんどんナイフを取り出しては投げ空を飛んでいる魔林檎を半数以上一人で撃ち落とし試合が終わった。

「まっ、こんなもんですかね」

 リリィは笑顔でこちらに手を振っていた。
 最初の競技の的当てが終わるとすぐに次の競技である飛行レースの準備が開始された。

「次の競技はルイナが出るんだよね?」
「あぁ、そうだぞ。ちゃんと見ててくれよ」

「それでは第二競技、飛行レースに参加される方は中央ステージまでお集まりください」

 このアナウンスを聞きルイナは部屋から出て行った。

「ルイナさ~ん私の速さについてこれますか?っこう見えても私、飛行魔法は得意なんですよ」
「ふんっ、それはこっちのセリフだ吸血鬼の我についてこれたらいいな」

 ルイナとサフィーナは目が合うなり煽り合いを始めた。
 今回の飛行レースのコースは魔界の各所を巡るコースとなっている。競技場からスタートし商店街を通り温泉街へ向かう。そして大魔樹《だいまじゅ》から折り返し魔王城の横を通って競技上に戻ってくるのだ。

「それでは飛行レース開始まで、3,2,1,スタート!」

 その合図でルイナとサフィーナはほかの参加者おいていくスピードで飛び出していった。
 このレースは各地の中継用魔法珠からステージ上空にある、モニターに、モニターに映し出されている。
 レースはサフィーナが優勢のままコースを折り返したが徐々にルイナがスピードを上げ魔王城を通過するころにはルイナが前に出ていた。そのままルイナが一位でゴールし二位でサフィーナがゴールした。
 そうして魔界競技大会の午前の部が終了した。