ジョブチェンジ!

「ここが例の場所だね」

 ユウは袴の少女がいる家の扉を叩いた。

「来てくれたんだね。どうぞ、入って」

 袴の少女の家へ入りユウたちはそれぞれ椅子に座った。

「それでわたし達は何に協力すればいいのかな」
「私と一緒にクラーケンの討伐をしてほしい」

 袴の少女が提案したのはクラーケンの共同討伐だった。どうやらクラーケンが原因で付近の魔獣が活性化して人や作物を襲っているようだ。

「クラーケンを倒すのは良いけどわたし達だけじゃなくてギルドハウスに居た冒険者たちにも協力してもらえばいいんじゃない?」
「それはダメ。あの冒険者たちだとすぐに死んじゃう。でもあなたは違う。人間なのに魔王に匹敵するほどの魔力がある。だから私はあなたを選んだ」
「わたしってそんなに魔力あるの?」
「あるぞ、気づいてなかったのか」

 袴の少女に魔力量を測られたユウはとなりに座る、ルイナに本当に魔王並みの魔力があるのか聞いてみるとルイナはうなずきながらそう答えた。ほかにもミゼルディアとリリィの方を見てみたが二人ともそろって首を縦に振っていた。

「まぁ、わたしの魔力のことはいいや。どうやってクラーケンを倒すの?相手は海のにいるわけだし」
「大丈夫。船ならある」

 袴の少女はそう言って立ち上がった。

「それじゃあ行こうか。えっと名前……私は狐族のリコ・フォークラン。今は耳と尻尾を隠してる」

 袴の少女リコ・フォークランは自身が狐族であることをユウたちに明かした。

(向こうも身分を明かしてくれたしこっちも明かさないと不平等だよね)

「わたしはユウ、こっちは吸血鬼のルイナと死神のミゼルディア。そしてここにいるのが黒猫のリリィだよ」
「……やっぱり私の眼には狂いはなかった」

 狐族のリコは笑顔でそうつぶやいた。

「何か言った?」

「いえ、なにも。さぁ行こう」

 ユウたちは狐族のリコの後をついていき船着き場までやってきた。

「これが私の船」

 船着き場の隅にリコの船が停泊していた。ユウたちはその船に乗り込んだ。

「これ、だれが運転するの」

 ユウのこの問いに誰も声を上げられず目をそらした。そう、この場にいる全員ましては船の所有者であるリコすら運転ができないのである。

「……わかった、わたしが運転するよ。ジョブチェンジ!【操縦士】」

 ユウは【操縦士】にジョブチェンジし船をクラーケンのいる方へ動かした。

「ご主人様、クラーケンが見えてきました」

 海の中からクラーケンの吸盤の付いた足が八本うねりながら出てきた。

「これ以上は近づけないよ」

 ユウはギリギリまでクラーケンの近くに船を寄せた。

「……戦闘準備完了。これよりクラーケンを討伐する」

 リコは腰についている鞘から刀を抜いたと同時に九本の尻尾と耳が生えた。ルイナとミゼルディアも魔剣と大鎌を取り出した。リリィは猫の姿のまま相手の弱点や耐性の詳細を可視化できる【アナライズ】というスキルを使っている。

「皆さんクラーケンの攻撃が来ます!気を付けてください!」

 リリィの忠告のすぐ後にクラーケンの足が一本、リコ目掛けて飛んできた。その攻撃を刀で切り上げた。
 クラーケンの攻撃が終わったと同時にルイナ黒い翼を広げ急接近し、クラーケンの顔目掛けて魔剣を振って自分を守る二本の足を切りつけた。ユウたちの乗る船に四本のクラーケンの足の攻撃が飛んできたがすべてミゼルディアが薙ぎ払った。
 リコがクラーケンへの攻撃のために船を蹴り跳んだその瞬間水中から船目掛けてクラーケンの足が勢いよく迫りユウたちの乗る船を空中へ突き飛ばした。それはあまりにも一瞬の出来事で、空中で船が爆発し霧散した。ミゼルディアは空中で体制を崩したリコを抱えルイナと飛んでいた。三人はただ空から落ちる破片を眺めることしかできなかった。

「アイシクルリンク!」

 突如放たれた魔法は海を凍てつかせた。その氷の上には一人の少女が立っていた。

「ユウ!リリィ!無事だったのか」
「うん、 何とかね」
「ご主人様のおかげで助かりました」

 ユウがどうやって助かったかというと、船が打ち上げられた瞬間ユウは、ジョブを操縦士から魔法使いへジョブチェンジし氷魔法で身を守っていて海へ落ちる直前に【アイシクルリンク】を唱えたのだ。

「足元が氷になって動きやすくなったし、さくっとクラーケン倒して街に帰ろっか」

 ユウは杖を構え魔力を溜めた。

「クラーケンの足はわたしが凍らせる。【アイスロック】」

 ユウの唱えた【アイスロック】はクラーケンの足すべてを凍らせた。
 その凍った足をルイナとミゼルディアがすべて破壊し、リコが刀でクラーケンを一刀両断しクラーケンを討伐した。
 ユウたちは凍らせた海を渡り街へ帰還した。凍らせた海は氷魔法を解除したらすべて海水に戻った。

「おい、あんた達なんでそんなとこに居るんだ、クラーケンがいるんだぞ。早くギルドハウスに入った方がいい」

 のんきに街を歩いているとギルドハウスの方から冒険者の男から声をかけられた。

「そのことなんだけど……」

 ユウは自分で作ったアイテムボックスの中からクラーケンの足を取り出した。

「これクラーケンの足じゃねぇか。まさか、あんた達クラーケンを倒したのか」
「うん、さっき倒してきたんだけど……」
「おい、マジかよ……おーいみんな!クラーケンが討伐されたぞ!」

 男がそう叫ぶとギルドハウスの中から冒険者があふれ出してきた。

「あんた達がやったのか、すげぇな!」
「うおぉぉ今日は宴だぁぁ!」

 クラーケンを倒したことにより街に活気が戻り賑やかになっていた。
 その夜、街ではクラーケン討伐を祝い盛大に宴が開催された。
 戦利品であるクラーケンの足を丸々一本使った豪快な料理や踊りが披露された。

「クラーケンの足って意外とおいしんですね」
「歯ごたえがあるな」
「……うまい」
「やっぱり宴は賑やかでいいですねぇ」

 ルイナたちも宴を楽しんでいるようでよかった。
 今夜は楽しい夜になりそうだ。