僕らのノイズ ※最後の願いは、よく考えたうえで送信してください。

 なんで分からないの!? 親も、大人も、みんな、みんな……!!!!

 今にも沸騰しそうな頭で、むしゃくしゃしたまま、衝動的に、右手でポニーテールのヘアゴムを外した。バサバサと顔を強めに横に揺らし、絡まりかけていた焦茶色の髪の毛を振り解く。
「ここから成績上げろって、そんなの無理……」
 夕日が沈んでいく中で、公園のベンチに腰かけ、バッグから入試前最後の期末考査四十点の答案用紙を取り出す。それを両手で丸め、目の前のゴミ箱に投げ入れた。

 中学三年、真冬。朝のニュースで天気予報士が、夕方は三度まで下がり、朝方にかけて凍えるような寒さになるでしょう、と淡々と解説していたのを思い出す。
 かじかむ両手をこすり合わせて、はぁっと手のひらに息を吐いた。
 目の前をとぼとぼと仲良く歩いている二羽の黒いカラスを私が強く睨むと、一緒に大きな真っ黒の羽を広げて、遠くへ飛んでいった。
 いいなぁ、どれだけ嫌なことが起きても、自由に、どこへでも逃げられて。

 部活を引退してから、どうにもこうにも、受験に集中できない。
 この前、初めて模試を受けた。結果から、学習全体の基礎が不安定であることや、公立高校の受験には間に合わないことがわかって、周りに何度もしつこく説得されて仕方なく、進路を変えて、私立高校を受験することにした。
 私は、中学三年間、合唱コンクールの全国大会で歌うために、勉強そっちのけで歌ってばかりだった。

 ひたすら、歌うことだけ考えていた。

 合唱の世界に飛び込んだ人間なら、誰もが一度は憧れるあのホール。今年は関東大会を突破して、全国大会で歌うことを許された。
 何度も泣いて、何度も苦しくなって、仲間とぶつかって、やっとの思いで、その場所で歌えた。
 自由曲の終わりかけで、客席にきらきらとした光沢の雨が降りはじめているようで、ステージ上から見惚れてしまうほど綺麗だった。
 他のどんなステージからも見たことがない、光の輝きに溢れた雨。その雨に圧倒され、視界がじわっと滲んで、震えたのをよく覚えている。
 歌い終わると同時に、私の目から温かい雫が頬を伝った。
 ただただ、静かに泣いていた。

     * * *

 あれから、どれぐらいの月日が経ったんだろう――。
 いつから、こんなに落ちぶれた――?

 嘘でまみれた世界に、何を期待しているのか。
 自分の意思が消え、操られた時間。そこに私は生かされているだけ。

 "心"があるから、苦しくなる。
 それなら、そんな――"ノイズ "なんて、この手で握りつぶして、消してしまえばいい。

 最初から、存在しなければ良かったんだ、こんなもの。

     * * *