――ドンッ
「いったぁっ。避けてよ!」
「あ……っ、ご、ごめんなさい!」
あわてて謝るが、後ろから私の肩にぶつかってきた時枝美怜は、私の謝罪なんて無視して去って行った。
美怜とはほとんど話したことがない。
というより、私の中で彼女は少し怖い人という印象だった。
用事があって話す時も辛口な物言いで、失礼だけどどこか葉音を連想させるものがあった。
さらにそういう怖さを倍増させるのは、髪型――正確にいえば前髪。
美怜はいつも、右目だけを前髪で少し被るくらい隠していた。
その前髪イコール美怜だという印象が強いくらい、妙にしっくりと合っている。
私の前髪は目に被るくらい長くなっており、明日の土曜日に行きつけの美容室に行こうとしていたので両サイドに下ろしていた。
けれど、私と美怜は黒髪ミディアムでそれは偶然だけど同じ。
違うのは、私は緩く巻いているが美怜はストレート、私はハーフアップにしているが美怜は下ろしているだけという点だ。

