『あの……影宮さんって、名前、『すみれ』だよね?』
『えっ?うん、そうだよ』
『そっか。私、すみれの花が好きで。だから名簿表見た時、印象に残ったのかも』
それが理由だった。
中学校ではちゃんと友達がほしかったけれど、嘘の口実ではない。
幼い頃から私の家の庭には、花好きの両親が植えた色とりどりのすみれが咲き乱れていた。
それを毎日見ていたからだろう、気づけば好きな花はなに?と聞かれると、決まってすみれと答えるようになっていた。
特別な理由があるわけではないものの、華やかな色に染まっているすみれは、私の心まで華やかに色づけてくれていた。
あの時は、そんな花と同じ名前を持つ女の子が隣の席になり、精一杯の勇気を出して話しかけたに過ぎない。
しかし、たったそれだけの会話が私の運命を左右することになった。

