地球の果ての島の物語


  ―――時は少し遡る。
 
(翔真)
 

「繋がった」

 マスターが言うなり、真っ先に行動したのは(こう)だった。
 天井付近にかけられた壁掛けテレビの影から幾多もの腕を作り上げて、一斉に向かわせる。この機を逃すまいと、考える余地もない。そんな晃を見て、慌てておれは晃の前に飛び出した。

「ちょっ、ちょっと晃!?いくらなんでも行動が早すぎない!?」
「俺の勘が告げている。この向こうには夏椎しかいない」
「全然知らない人だったらどうするの!?」
「知らん」

 晃はキッパリと言い切った。あまりの潔さにおれもそれ以上は何も言えない。

 誰もお客さんがいない時間帯で良かった。4人がけテーブル席が3席、カウンター席も5席しかない狭い店内の中で、晃は周りのことなんて目もくれずにテレビの向こうしか見えていない。

 おれがマスターを見ると、マスターも肩を竦めていた。エプロン姿のマスターは、長い金色の髪をさっきひとつにまとめたところだ。おれも今からバイト仕様に着替えようかと思っていたのに、それどころじゃなくなったじゃん!
 
 少しして、テレビの向こうから影の手が抱きかかえて来たのは、黒髪の小柄な子どもだった。
 男の子にも見えるし、女の子にも見える、幼い顔をしたその子の黒目がちな瞳が困った色をしている。

 でも、おれには分かる。あの頃よりも成長しているけど、間違いない。間違えない。ずっとずっと探してた、おれの大切な人だ。

「夏椎ー!!!」
「うわぁ!?」

 晃が影の手をしまうより早く、おれは夏椎に飛びついた。胸が苦しくて、嬉しくて、涙が溢れてくる。
 
 良かった。生きてた。やっぱりちゃんと生きてたよ。

 信じてたもん。絶対また会えるって。夏椎にしがみついて、おれはたくさん涙を流す。

「会いたかったぁ!会いたかったよぉ!」
「夏椎⋯⋯っ」

 おれの顔の横から、晃の手が伸びてくる。
 晃も嬉しいよね。会いたかったもんね。ようやくおれ達の努力が実ったんだ。
 ここまでくるのにすごく長い時間がかかった。そうだ、早くあの人に報告しに行かなきゃ。勢い良く体を離すと、夏椎はぽかんとした顔のままおれ達をじっと見ていた。

「⋯⋯君たち、だれ?」

 夏椎が放った言葉に、おれは耳を疑った。