地球の果ての島の物語

(ある老婆の独白)

 あぁ、私はなんて愚かだったのかしら。
 
 ひとり山岳を歩きながら、私は星の煌めく美しい夜空に包まれる。
 行く宛もない。家族だった者達には先程別れを告げられた。
 最後のドライブは重い沈黙に包まれていた。その思い出がより一層山の静けさを際立たせる。
 草木がさざめいて、どこからか獣の呻き声が聴こえる。
 フクロウが呼んでいる。死へと誘う道無き道を歩きながら、私はゆっくりと膝から崩れ落ちた。

 思えば始めから家族には疎まれていた。

 7人兄弟の4番目に生まれ、充分な食べ物も与えられずずっと痩せっぽっちだった身体。
 女としての魅力もなく、兄弟のように世の中へ食らいつくだけの学もなく。
 それでも自分ひとり生きていくには充分な稼ぎは得られていた。それを、末の妹に必ず返すからと根こそぎ奪われたのが事の発端だった。
 妹はその金を持って、男と共にどこかの国へ旅立ったと言う。
 私には器量も度量もなかった。騙されたと気付いたのが、甥や姪に散々責め立てられた後だったのもきっと悪かったんだわ。
 そうして、資産代わりに多額の保険がかけられた私は山へ打ち捨てられた。
 最後の言葉は「骨さえ残ればいい」と、たったそれだけ。
 
 誰からも愛されず、誰にも必要とされず、私の人生は一体なんの意味があったのかしら。

 湿った土の上へ膝を着いた私の頭上へ、水滴が落ちる。
 
 あぁ、獣が来た。食べられて死ぬなんて、そんなおぞましい罰を与えられるだけの何かを私はしたのでしょうか。

 私は瞳を閉じた。
 せめてひと思いに命を奪って欲しい。
 固く縮こまった私の身体を、誰かの手が包み込んだ。