聖獣に愛された少女は、蒼の守護者に愛される【シナリオ】

第六話「帝都の護りの秘密」

〇馬車の中
窓の外を見つめる燈子。

燈子「うわぁ、すごい人」
蒼真「街は初めてではないろう?」
燈子「いつも日が沈んでからこっそりと抜け出していたので、昼間の帝都の街を見るのは初めてなんです」
蒼真「一度も見たことないのか?」
燈子「はい」
蒼真「先代が生きていた頃もか?」
蒼真「はい。むしろ祖父が生きていた頃の方が、監視の目が厳しかったです」

〇燈子の回想
昔の燈子が、友達の糸に連れられて夕暮れの街を歩いている。

燈子「だから初めて外に出たのは、祖父が死んだ日でした。夕暮れの中、友達が連れ出してくれたんです」

街の様子に目を輝かせる昔の燈子と、微笑ましく見ている糸。


◯回想終わり。帝国陸軍の建物にて。
廊下を歩く蒼真と燈子。
反対側から幸虎が歩いてくる。

幸虎「わー燈子ちゃんやん」
燈子「幸虎さん、おはようございます」

二人はお辞儀をして挨拶。

幸虎「蒼真、あれ見せるんか?」
蒼真「ああ」
幸虎「ついでに色々、説明したりな?」
蒼真「あぁ、その予定だ」


〇とある資料が溢れる一室にて
机に向かい合って座る燈子と蒼真。
蒼真が束になった資料を燈子に差し出す。

燈子「黙っておくのも気分が悪いので、燈子にもこの調査結果を見せておきたい」「念のためだが、この事実で間違いないだろうか」

蒼真が資料を渡すと、燈子は目を通す。

蒼真「むしろ昨日の反応からして、燈子が知らないことが多いだろうと思っている」

資料には文字がびっちり書かれてあるが、下記の文字が特にクローズアップされる。

千影正一
先代の妾の子として産まれる。芸者の母を十五歳で亡くし、先代の妻の死と共に千影家に迎えられる。

千影晶子
二十年前に旧都に住んでいた記録を最後に消息不明。西園寺惨殺事件に巻き込まれた可能性が高いとされている。

千影燈子
生後半年ほどで旧都と大坂の間にある森で保護された。その後大坂の孤児院に引き取られ、調査を進める。そして持ち物から千影家との繋がりがわかり、おおよそ一歳で千影家に引き取られる。


燈子「旧都……?大坂……?」
蒼真「知らなかったのか?」
燈子「はい。遠くの森で保護されたとしか……」
燈子(旧都ってことは列車で丸一日?何か予想より随分遠くに居たんだな)

蒼真「君自身は、当たり前だが記憶が無いんだな?」
燈子「そうですね、物心ついた時には、千影家のあの離れに居ました」

燈子は昔の祖父が微力ながらも部屋に結界を貼る様子を思い出す。

燈子「私がなぜ森にいたのか理由は分かりません。祖父は私が何かに攫われたのだと考えていたらしくて、再び攫われぬようあの離れに結界を張り、私を外へ出さないようにしていました」
燈子(叔父は、『忌み子だから妖に攫われないようにしていたんだ』と言ってたし、私もそれを信じていた)

蒼真「母親ついては、何か知っているか?」
燈子「いいえ。ただ祖父とは祖母の死をきっかけに仲違いをして、それで家を飛び出したとしか……」
蒼真「そうか。聞けて良かったよ、ありがとう」


蒼真は一瞬、燈子の頭を優しく撫でた。

蒼真「それで一応君にも、一条宮について教えておかなければならないと思っている」


〇一条宮家の様子
雪乃が古めかしい衣装に身を包み、牛車に乗って一条宮家に向かっている。
到着すると、昔の公家姿の衣装を着た俊秀が雪乃を出迎えている。


〇燈子と蒼真に場面が戻る

蒼真「何もない場所から町を作る時、真っ先に作るものがある。 それは鬼門と裏鬼門を封じる門なんだ」

燈子「家などと一緒なんですね」
燈子(陰陽師の基礎知識で教わったな……全ての“境目”が妖の世との境界線になるから、家を建てる時は鬼門と裏鬼門にあたる場所を清めると)
方角の説明図もつける。

蒼真「そうだ。全ては“境目”を封じてから始めるんだ」「それで一条宮家はここが帝都になる前の、大江土時代からこの土地の裏鬼門を守る役目を担っている」

過去の催事をする様子が出てくる。

蒼真「元々大江土は、我ら青龍が中心となり発展させた街だ。それに一条宮が介入し、果ては皇帝により略奪され、青龍は現在陸軍の一員として皇帝の下で働いている。変な話だろう?」「とは言え、皇帝の指揮がなければ欧米諸国に対抗する力を付けられなかっただろうがな」

燈子の方に身を乗り出す蒼真。

蒼真「それで一つ警告しておきたい。一条宮家は最近、霊力を失ってきている。それだと裏鬼門の門番は務まらない。だからこそ、霊力が強い嫁を欲しがっているようだ」
燈子(そんなに言うほど、雪乃の霊力は……)
蒼真「だから本当のことがバレれば、燈子の方が狙われる可能性が高いと見ている」
燈子「……あの、雪乃の霊力については?」
蒼真「どうせあの子が作ったとされる『巫女の札』やら『巫女の護り』を作ってたのは君だろう?霊力の質からでもわかる」

燈子(雪乃の霊力に近付けて作ってたのに)

蒼真「それにだ。一条宮家は皇族傍系だ。かつて皇族は、資金を得るために“聖獣核”を外国に売り払った前科がある」

驚き目を見開く燈子。

蒼真「その資金を得られたからこそ、欧米諸国と遜色が無いほどの強国が誕生したというわけだ」

言葉に詰まり、燈子は俯く。

蒼真「とりあえずあなたは、自分の価値をもっと知るべきだ。聖獣に好かれて、聖獣から聖獣核を手に入れられて、聖獣核を見分ける能力がある高い霊力の持ち主……そんな人はどこの家も、喉が手から出るほど欲しいだろう」「でも私はあなたの能力は利用しない。今日みたいな今までできなかった“普通”を与えたいと思っている」

蒼真は今日の楽しそうに着物を着る燈子を思い浮かべた。



〇廊下にて
二人は並んで歩いている。

燈子「今日のお勤めはいいんですか?」
蒼真「あのな、俺は六つ時まで働かされていたんだぞ?今日ぐらい休んでもバチは当たらんだろう」
燈子(眠そうだと思ってたけど、殆ど寝てないんじゃない?)


水連が廊下の角に居る。

蒼真「あ、水連」
水連「嫁か?」
蒼真「まだ式は挙げていないがな」

水連は近づき、帽子を取って燈子に一礼する。

水連「はじめまして。玄葉水連と申します。一応、蒼真の部下です」
蒼真「一応とは何だ、一応とは」
水連「一応幼馴染でもあるわけでして」
蒼真「だから一応とは何だ」

燈子は水連の階級章を見る。
燈子(名前と階級からして、玄武の人だろうな)

蒼真が、水連がただの灰色の石がついた腕輪を持っていることに気付く。

蒼真「あー、使っちまったか」
水連「あぁ。もう結構キテたからな」

燈子の頭にはてなマーク。

蒼真「神聖力を使い切った聖獣核は、ただの石に変化するんだよ」
水連「これが一番親和性高かったやつだったんだがな……」
燈子「……見せてください」

腕輪を受け取り磨くと、徐々に光を帯びてくる。

水連「なっ?!」
そして真っ黒な宝石に変化した。

蒼真「ちょっと待て!これは……」
燈子(あれ?)

目の前が真っ暗になった燈子は、その場に倒れる。蒼真はそれを支えた。