第五話「当たり前の幸せ」
〇回想
幼い燈子が、祖父から家に伝わる歴史書を見せられて陰陽師について聞かされている。
祖父「昔は今よりも妖が多かった。だから霊力は今よりも溢れていたし、異能が使える人が多かったんだよ」
本の挿絵は異能を使い、人々の病を直す様子が描かれている。
幼い燈子「私は異能を使えないの?」
祖父「今は陰陽師の頂点であった四神家のみが使えるとされている。でも使えないということは、平和な証なのだよ。妖が溢れてないからこそ、霊力も少ないのだから」
燈子モノローグ(帝都は四神家による護りで妖から護られている。そんな四神家の人に“仕方が無かった”とは言え求婚されるなんて、誰が予想しただろう)
〇回想終わり。龍崎家の前
大きな洋館の前に佇む二人。
燈子(大きい……)
燈子は大きな家と貼られている結界に驚く。
燈子「すごい結界のしくみですね」
蒼真「細部まで見えるのか、すごいな」
頭にはてなマークの燈子。
燈子「あの、霊力って人によって見え方は違うんですか?」
蒼真「それは当たり前さ。“性質”を感知できるってことは、それだけ強い霊力を持っているということなんだから」
〇家の中に入る。
蒼真「青龍は里が近いせいか、帝都に住むのではなく里から帝都に通う者が多い 。だからこの家も俺一人で住んでいる」
ソファーのあるリビングに案内される。
燈子は座るとふかふかな感触に目が輝き、手で触って確かめている。それを蒼真は微笑ましく見ている。
目が合うと燈子は赤面。
蒼真「最初に話しておきたいことがある。四神家の異能についてだ」
真面目な顔になる燈子。
蒼真「元々陰陽師は全員、異能を使えたという話は知っているな?」
燈子「はい、今は四神家のみが使えるものだと教わりました」
蒼真「その通りだ。我々四神家は、聖獣と契約したことにより異能を継続することができた。異能で使う霊力を、神聖力で補っているというのが近いな」
胸ポケットを探る蒼真。
蒼真「その異能の元になるのが、聖獣の神聖力を結晶化させた“聖獣核”だ」
蒼真が胸ポケットから出した青い宝石は、さっきケットシーから貰ったものとほぼ同じ。
蒼真「聖獣核は使用者の媒体となり、異能の形を発揮する」
蒼真の掌に宝石を乗せると、その宝石から小さな雷が発生する。
蒼真「だがこのことは公然の秘密とされている。聖獣を利用しようとする者が多いからだ」「ただでさえ聖獣核は、高額な宝石としても市場に出回っている。ちなみにこの石はサファイアという名前で、この大きさだと百円以上はするだろう」
燈子「ひ、百円……(※百円あれば帝都で家が買えます)」
蒼真「君も持っているだろう?同じ石を」
燈子は恐る恐るケットシーから貰った石を出して、見比べる。(ほぼ同じ石)
燈子「これ、売ったら100円になるんですよね?」
蒼真「売ろうとするなよ」
蒼真はため息をつく。
蒼真「神聖力の塊は、霊力よりもよっぽど人を狂わせる力がある。海外には持ち主を次々と破滅させる『呪いの宝石』の伝説だってあるぐらいだ」
次々と過去の狂い争う人々が出てくる。
蒼真「それに絶滅したラファスという鳥は、聖獣フレースヴェルグに似ていた為に狩り尽くされたという逸話もある。いつの時代の人も、聖獣核を前にすると簡単に欲に狂う。そういう危険なものなんだ」
燈子は怖くなりガタガタ震える。
蒼真「でも龍崎家にいる限り、私があなたを守るから。問題はない」
燈子は拳を握り締める。
燈子「あなたは私と、本当に結婚する気なんですか?」
蒼真「あなた次第、かな。あなたが私を愛してくれるなら、勿論嬉しい。私もあなたに愛されるように、努力はしたいと思っている」
蒼真の所に使用人の八重がくる。
八重が耳打ちすると、蒼真はため息をつく。
蒼真「もう今日は遅いし休みなさい」
燈子「あなたは……?」
蒼真「俺は緊急の呼び出しだ」
立ち上がる蒼真。
蒼真「俺のことは名前で呼びなさい」
燈子「蒼真、様……」
微笑む蒼真に、赤面する燈子。
燈子「私のことも、燈子とお呼びください」
コートを羽織る蒼真。
蒼真「では明日会おう、燈子」
去ってく後ろ姿を見つめる燈子。
〇朝、龍崎家の蒼真の寝室にて。
燈子「おはようございま、す」
襖の隙間から顔を覗かせる燈子。
蒼真は布団で寝ていたが、うっすらと目を開ける。
蒼真「……時刻は?」
燈子「四つ時です。そろそろ起きる時間だと八重さんが……」
蒼真「あぁ」
起き上がる蒼真の前に、お膳に乗った朝食を運ぶ燈子。
燈子「すいません、実は謝らなければならないことが……」
ベチョベチョのお粥状のお米を見て、目が点になる蒼真
燈子「お手伝いをしようとお米を炊いたのですが、上手く行きませんでした」
台所での上手くいかない様子(盛大に鍋を吹きこぼしたり、魚を焦がしたり)を回想。
蒼真「家で食事はどうしていたんだ?」
燈子「女中の皆さんに任せてました。私は部屋から殆ど出なかったで、家事も殆どしたことは無くて……」
蒼真「別にここでも家事はしなくて良い」
燈子「すいません……でも、お料理をするのは憧れだったんです」
蒼真(ある意味箱入り娘だな)
蒼真「なら八重さんに習えば良い」
朝食を食べる蒼真と、それを座り見つめる燈子。
蒼真「千影家では日中、何をしていたんだ?」
燈子「えっと、御札や御守り作りなどを」
蒼真「毎日?」
燈子「あ、はい。毎日です」
蒼真「通りで千影家の懐は潤ってるわけだ」
蒼真は目を細めて燈子の霊力を見る。
蒼真(毎日作っていた割に、この霊力の保持はすごいな)
ご飯を一口運ぶ蒼真。
蒼真(だからこそ、搾取され続けていたわけか)
蒼真「この家はどうだ?何か不便はないか?」
燈子「いえ、全く」
微笑む燈子。
燈子「私は久しぶりに朝日を浴びて起きました。久しぶりに太陽の温かさを感じたんです」
洗濯の手伝い(みんなでワイワイしながら干す様子)を回想する燈子。
燈子「朝は洗濯を干すお手伝いをしました。井戸の冷たい水が、太陽の光を反射して輝いているのが凄く美しかったです」「竿に並ぶ洗濯物の隙間を風が駆け抜け、一斉に揺れる光景も初めて見ました。また揺れる影の形が変わる様子も、陽の光に透ける布も、初めて見ることばかりでした」
蒼真ははっとして顔を上げる。
蒼真「そうか……」
〇美しい桜色の着物を着る燈子。
髪の毛はハーフアップで大きなリボンもつけている。
燈子「あの、八重さん、これは一体……?」
燈子(急に『着替えてください』って?)
軍服姿の蒼真が奥からやってくる。
蒼真「似合ってるではないか」
八重「さすが蒼真様、似合うものをお選びで」
燈子(蒼真様が?)
蒼真は手を差し出す。
蒼真「燈子、出かけよう」
差し出した手を取る燈子。
蒼真「悪いが陸軍に、来てほしいんだ」
〇回想
幼い燈子が、祖父から家に伝わる歴史書を見せられて陰陽師について聞かされている。
祖父「昔は今よりも妖が多かった。だから霊力は今よりも溢れていたし、異能が使える人が多かったんだよ」
本の挿絵は異能を使い、人々の病を直す様子が描かれている。
幼い燈子「私は異能を使えないの?」
祖父「今は陰陽師の頂点であった四神家のみが使えるとされている。でも使えないということは、平和な証なのだよ。妖が溢れてないからこそ、霊力も少ないのだから」
燈子モノローグ(帝都は四神家による護りで妖から護られている。そんな四神家の人に“仕方が無かった”とは言え求婚されるなんて、誰が予想しただろう)
〇回想終わり。龍崎家の前
大きな洋館の前に佇む二人。
燈子(大きい……)
燈子は大きな家と貼られている結界に驚く。
燈子「すごい結界のしくみですね」
蒼真「細部まで見えるのか、すごいな」
頭にはてなマークの燈子。
燈子「あの、霊力って人によって見え方は違うんですか?」
蒼真「それは当たり前さ。“性質”を感知できるってことは、それだけ強い霊力を持っているということなんだから」
〇家の中に入る。
蒼真「青龍は里が近いせいか、帝都に住むのではなく里から帝都に通う者が多い 。だからこの家も俺一人で住んでいる」
ソファーのあるリビングに案内される。
燈子は座るとふかふかな感触に目が輝き、手で触って確かめている。それを蒼真は微笑ましく見ている。
目が合うと燈子は赤面。
蒼真「最初に話しておきたいことがある。四神家の異能についてだ」
真面目な顔になる燈子。
蒼真「元々陰陽師は全員、異能を使えたという話は知っているな?」
燈子「はい、今は四神家のみが使えるものだと教わりました」
蒼真「その通りだ。我々四神家は、聖獣と契約したことにより異能を継続することができた。異能で使う霊力を、神聖力で補っているというのが近いな」
胸ポケットを探る蒼真。
蒼真「その異能の元になるのが、聖獣の神聖力を結晶化させた“聖獣核”だ」
蒼真が胸ポケットから出した青い宝石は、さっきケットシーから貰ったものとほぼ同じ。
蒼真「聖獣核は使用者の媒体となり、異能の形を発揮する」
蒼真の掌に宝石を乗せると、その宝石から小さな雷が発生する。
蒼真「だがこのことは公然の秘密とされている。聖獣を利用しようとする者が多いからだ」「ただでさえ聖獣核は、高額な宝石としても市場に出回っている。ちなみにこの石はサファイアという名前で、この大きさだと百円以上はするだろう」
燈子「ひ、百円……(※百円あれば帝都で家が買えます)」
蒼真「君も持っているだろう?同じ石を」
燈子は恐る恐るケットシーから貰った石を出して、見比べる。(ほぼ同じ石)
燈子「これ、売ったら100円になるんですよね?」
蒼真「売ろうとするなよ」
蒼真はため息をつく。
蒼真「神聖力の塊は、霊力よりもよっぽど人を狂わせる力がある。海外には持ち主を次々と破滅させる『呪いの宝石』の伝説だってあるぐらいだ」
次々と過去の狂い争う人々が出てくる。
蒼真「それに絶滅したラファスという鳥は、聖獣フレースヴェルグに似ていた為に狩り尽くされたという逸話もある。いつの時代の人も、聖獣核を前にすると簡単に欲に狂う。そういう危険なものなんだ」
燈子は怖くなりガタガタ震える。
蒼真「でも龍崎家にいる限り、私があなたを守るから。問題はない」
燈子は拳を握り締める。
燈子「あなたは私と、本当に結婚する気なんですか?」
蒼真「あなた次第、かな。あなたが私を愛してくれるなら、勿論嬉しい。私もあなたに愛されるように、努力はしたいと思っている」
蒼真の所に使用人の八重がくる。
八重が耳打ちすると、蒼真はため息をつく。
蒼真「もう今日は遅いし休みなさい」
燈子「あなたは……?」
蒼真「俺は緊急の呼び出しだ」
立ち上がる蒼真。
蒼真「俺のことは名前で呼びなさい」
燈子「蒼真、様……」
微笑む蒼真に、赤面する燈子。
燈子「私のことも、燈子とお呼びください」
コートを羽織る蒼真。
蒼真「では明日会おう、燈子」
去ってく後ろ姿を見つめる燈子。
〇朝、龍崎家の蒼真の寝室にて。
燈子「おはようございま、す」
襖の隙間から顔を覗かせる燈子。
蒼真は布団で寝ていたが、うっすらと目を開ける。
蒼真「……時刻は?」
燈子「四つ時です。そろそろ起きる時間だと八重さんが……」
蒼真「あぁ」
起き上がる蒼真の前に、お膳に乗った朝食を運ぶ燈子。
燈子「すいません、実は謝らなければならないことが……」
ベチョベチョのお粥状のお米を見て、目が点になる蒼真
燈子「お手伝いをしようとお米を炊いたのですが、上手く行きませんでした」
台所での上手くいかない様子(盛大に鍋を吹きこぼしたり、魚を焦がしたり)を回想。
蒼真「家で食事はどうしていたんだ?」
燈子「女中の皆さんに任せてました。私は部屋から殆ど出なかったで、家事も殆どしたことは無くて……」
蒼真「別にここでも家事はしなくて良い」
燈子「すいません……でも、お料理をするのは憧れだったんです」
蒼真(ある意味箱入り娘だな)
蒼真「なら八重さんに習えば良い」
朝食を食べる蒼真と、それを座り見つめる燈子。
蒼真「千影家では日中、何をしていたんだ?」
燈子「えっと、御札や御守り作りなどを」
蒼真「毎日?」
燈子「あ、はい。毎日です」
蒼真「通りで千影家の懐は潤ってるわけだ」
蒼真は目を細めて燈子の霊力を見る。
蒼真(毎日作っていた割に、この霊力の保持はすごいな)
ご飯を一口運ぶ蒼真。
蒼真(だからこそ、搾取され続けていたわけか)
蒼真「この家はどうだ?何か不便はないか?」
燈子「いえ、全く」
微笑む燈子。
燈子「私は久しぶりに朝日を浴びて起きました。久しぶりに太陽の温かさを感じたんです」
洗濯の手伝い(みんなでワイワイしながら干す様子)を回想する燈子。
燈子「朝は洗濯を干すお手伝いをしました。井戸の冷たい水が、太陽の光を反射して輝いているのが凄く美しかったです」「竿に並ぶ洗濯物の隙間を風が駆け抜け、一斉に揺れる光景も初めて見ました。また揺れる影の形が変わる様子も、陽の光に透ける布も、初めて見ることばかりでした」
蒼真ははっとして顔を上げる。
蒼真「そうか……」
〇美しい桜色の着物を着る燈子。
髪の毛はハーフアップで大きなリボンもつけている。
燈子「あの、八重さん、これは一体……?」
燈子(急に『着替えてください』って?)
軍服姿の蒼真が奥からやってくる。
蒼真「似合ってるではないか」
八重「さすが蒼真様、似合うものをお選びで」
燈子(蒼真様が?)
蒼真は手を差し出す。
蒼真「燈子、出かけよう」
差し出した手を取る燈子。
蒼真「悪いが陸軍に、来てほしいんだ」

