第二話 「隠された聖獣」
〇第一話の続き。夜の森の前にて。
燈子「か、カーバンクル?」
抱き上げた兎をまじまじと見る。
しかし燈子は普通の兎にしか見えず、首を傾げる。
燈子(聖獣って、あの伝説の?昔西洋から渡ってきたっていう?)
蒼真が踏み出し近付くと、その兎は素早く逃げた。
燈子「あ、待って!」
森の中に消えていく兎に手を伸ばそうとしたところで、拾って磨いた石が落ちる。
そして蒼真の近くに転がった。
蒼真(何だ?これ……)
蒼真は拾い上げた瞬間、目を見開く。
蒼真「ちょっと待て!」
蒼真は燈子の腕を掴んだ。
蒼真「これはどこで手に入れた?!」
燈子「えっと……そこで拾って……」
蒼真「そこ?!」
燈子「はい……」
蒼真の手に力が入り、燈子は腕が痛い。それに気付き手を離す。
蒼真「……すまない」
燈子は不審な目で蒼真を見つめる。
蒼真「私は決して怪しい者ではない。帝国陸軍退魔部隊第一討伐隊隊長、龍崎蒼真だ」
蒼真は帽子を取って一礼する。
蒼真の青い目に驚く。
蒼真「それで、君の名は?それはどこで手に入れた?どうしてここにいる?」
じりじり迫ってくる蒼真に怯える燈子。
その時、頭巾が解けて燈子の金髪が現れる。
それに釘付けになる蒼真。
燈子「ごめんなさい!」
燈子は走って逃げた。
蒼真は追いかけようとしたが、暗闇に紛れてすぐ姿が見えなくなる。
その場には行灯が忘れられていた。
それを持ち上げ、刻まれた家門を見つめる。
〇帝国軍の建物
机に向かって玄葉水連(くろはすいれん)が座っている。水連は軍服の上着を脱ぎ、報告書を書いている。
水連「おかえり、遅かったな」
蒼真は上着を脱いで、水連の隣の机に行く。
水連「しかし俺、退勤したいんだけど?退魔報告書ぐらい自分で書けよ」(※日勤残業中)
水連は大きく欠伸。
蒼真が席に座ろうとしたところで、水連が行灯に気付いた。
水連「それ、どうしたんだ?」
蒼真「この家門がどこのものなのか、調べたいんだが……」
水連「陰陽師系のこの紋は、千影家じゃねーかな?」
蒼真「そこに娘は居るか?」
水連「ああ、確か女学校に通う娘がいるはずだが」
水連は近づき、蒼真に耳打ちする。
水連「ここだけの話。どうやら千影家には隠された『忌み子』と呼ばれる子が居るらしいぞ?」
蒼真「忌み子?」
水連「お前が持ってきた、若野屋で売ってる簪あるだろう?あれはその忌み子が作っているという噂だ。あそこの若奥様は、よく千影家に出入りしているらしいから、あながち間違いではなさそうだ」
水連が胸のポケットから、燈子が作っている簪を出した。
水連「まぁ“忌み子”にしては自我が乗っ取られていないし、こんなもの手に入れれるわけないだろう」
蒼真はさっき拾った、燈子が磨いた石をポケットから出した。
水連「それは!」
蒼真「あぁ、やっぱりあの子のものに間違いないな」
蒼真は簪と見比べると、石を握りしめる。
〇千影家の離れ
駆け込んでパタンと扉を閉める燈子。
燈子(な、何なの?あの人……!)
帽子を取った姿が頭から離れない。
暗闇に浮かぶ青い目を思い出す。
燈子は頭巾を外すと、足元に猫が寄ってくる。
燈子(でも、あの兎が紅玉兎(カーバンクル)?嘘でしょう?)
寄ってくる猫をしゃがんで撫でた。
燈子は今まで寄ってきた動物と戯れている姿を思い浮かべた。
燈子モノローグ(いつもあの森に行くと、兎が寄ってきてくれた。それだけじゃなくて、私は比較的動物に好かれるから、何か動物の怪の血が流れているのだと思っていた)
燈子の手が止まる。
燈子(そもそも聖獣を見分けられるあの人は一体何者?)
〇夜の帝都の街角
妖の土蜘蛛に後退りする人々。蒼真は割り切って入り、剣を向ける。
蒼真(さて、これは使えるか)
蒼真は胸のポケットから青い石のついた簪を取り出して掲げると、青い石が光を放つ。
その光は剣に吸収され、剣が光を放つようになる。
蒼真は剣を振り下ろすと、一瞬で土蜘蛛は灰となって消えた。
〇帝国軍の建物
帽子を壁にかける蒼真に、白峰幸虎(しらみねゆきとら)が近付く。
幸虎「お疲れ〜今日は派手にやったみたいやな」
蒼真「まぁそうでもないさ」
机まで歩く蒼真の後を幸虎がついていく。
幸虎「それで依頼があった千影家の報告が上がってるわ。やばいで」
幸虎が蒼真に報告書を渡す。
はぁと水連は大きく息を吐いた。
幸虎「さすがに“聖獣核”を見分けられる人間を、帝国軍がほおっておけるわけないやろうなぁ」
蒼真は報告書に目を通す。
幸虎「やっぱり若野屋の簪作ってたんは千影家の“忌み子”って言われてる娘らしくて、現当主の姪の可能性が高いんやて。やけど徹底的に隠されてるから、姿を見た人があまりにも少なすぎる」
蒼真モノローグ(千影当主は現在十九代目。元々妾の子で認知されたのは前当主の妻が亡くなってから……正妻の子の姉が居たらしいが二十年前から行方不明……その子供とされる赤子が山奥で発見され、十七年前に前当主である祖父が引き取った記録がある)
蒼真ははぁと息を吐く。
蒼真「千影家はずっと没落の烙印を押されていた。しかしここ十年ほどで、霊力が高い娘の力を生かして持ち直しているってことは……」
幸虎「恐らくその姪から搾取しているやろうな。あのお嬢さんからそんなに高い霊力は感じんし、これ手に入れれる化け物やで?!」
蒼真(化け物、か)
蒼真「……美しかったな」
燈子の綺麗な金髪を思い出す。
幸虎「しかも聞いてや。その女学校に通う娘を狙ってるのは……最近きな臭い動きがある一条宮家なわけやわ」
〇一条宮家
立派な畳の部屋の窓からは池がある日本庭園が見える。
豪勢な着物を着た雪乃と正一が座卓の前に座り、向かい合って袴姿の一条宮家の当主と一条宮俊秀(いちじょうみやとしひで)が座る。
俊秀「先日は指輪もありがとうございました。おかげで、すごく調子が良いです」
雪乃「そんな、褒めてくださりありがとうございます」
微笑む雪乃だが、燈子の顔がちらつき一瞬だけ表情が歪む。
一条宮家の当主「さすが千影家を復興させたお嬢さんだ。私もあなたの数珠がお気に入りだよ」
雪乃は満更でもない顔で、頭を下げる。
一条宮家の当主「それで、だね。皇室の傍系である一条宮家には守るべきものが沢山ある。是非ともその一員として雪乃さんは相応しいと考えている」
雪乃と正一の目が輝く。
俊秀「是非とも千影雪乃さんとの縁談を進めさせていただきたい」
俊秀が微笑むと、雪乃は歓喜した。
〇第一話の続き。夜の森の前にて。
燈子「か、カーバンクル?」
抱き上げた兎をまじまじと見る。
しかし燈子は普通の兎にしか見えず、首を傾げる。
燈子(聖獣って、あの伝説の?昔西洋から渡ってきたっていう?)
蒼真が踏み出し近付くと、その兎は素早く逃げた。
燈子「あ、待って!」
森の中に消えていく兎に手を伸ばそうとしたところで、拾って磨いた石が落ちる。
そして蒼真の近くに転がった。
蒼真(何だ?これ……)
蒼真は拾い上げた瞬間、目を見開く。
蒼真「ちょっと待て!」
蒼真は燈子の腕を掴んだ。
蒼真「これはどこで手に入れた?!」
燈子「えっと……そこで拾って……」
蒼真「そこ?!」
燈子「はい……」
蒼真の手に力が入り、燈子は腕が痛い。それに気付き手を離す。
蒼真「……すまない」
燈子は不審な目で蒼真を見つめる。
蒼真「私は決して怪しい者ではない。帝国陸軍退魔部隊第一討伐隊隊長、龍崎蒼真だ」
蒼真は帽子を取って一礼する。
蒼真の青い目に驚く。
蒼真「それで、君の名は?それはどこで手に入れた?どうしてここにいる?」
じりじり迫ってくる蒼真に怯える燈子。
その時、頭巾が解けて燈子の金髪が現れる。
それに釘付けになる蒼真。
燈子「ごめんなさい!」
燈子は走って逃げた。
蒼真は追いかけようとしたが、暗闇に紛れてすぐ姿が見えなくなる。
その場には行灯が忘れられていた。
それを持ち上げ、刻まれた家門を見つめる。
〇帝国軍の建物
机に向かって玄葉水連(くろはすいれん)が座っている。水連は軍服の上着を脱ぎ、報告書を書いている。
水連「おかえり、遅かったな」
蒼真は上着を脱いで、水連の隣の机に行く。
水連「しかし俺、退勤したいんだけど?退魔報告書ぐらい自分で書けよ」(※日勤残業中)
水連は大きく欠伸。
蒼真が席に座ろうとしたところで、水連が行灯に気付いた。
水連「それ、どうしたんだ?」
蒼真「この家門がどこのものなのか、調べたいんだが……」
水連「陰陽師系のこの紋は、千影家じゃねーかな?」
蒼真「そこに娘は居るか?」
水連「ああ、確か女学校に通う娘がいるはずだが」
水連は近づき、蒼真に耳打ちする。
水連「ここだけの話。どうやら千影家には隠された『忌み子』と呼ばれる子が居るらしいぞ?」
蒼真「忌み子?」
水連「お前が持ってきた、若野屋で売ってる簪あるだろう?あれはその忌み子が作っているという噂だ。あそこの若奥様は、よく千影家に出入りしているらしいから、あながち間違いではなさそうだ」
水連が胸のポケットから、燈子が作っている簪を出した。
水連「まぁ“忌み子”にしては自我が乗っ取られていないし、こんなもの手に入れれるわけないだろう」
蒼真はさっき拾った、燈子が磨いた石をポケットから出した。
水連「それは!」
蒼真「あぁ、やっぱりあの子のものに間違いないな」
蒼真は簪と見比べると、石を握りしめる。
〇千影家の離れ
駆け込んでパタンと扉を閉める燈子。
燈子(な、何なの?あの人……!)
帽子を取った姿が頭から離れない。
暗闇に浮かぶ青い目を思い出す。
燈子は頭巾を外すと、足元に猫が寄ってくる。
燈子(でも、あの兎が紅玉兎(カーバンクル)?嘘でしょう?)
寄ってくる猫をしゃがんで撫でた。
燈子は今まで寄ってきた動物と戯れている姿を思い浮かべた。
燈子モノローグ(いつもあの森に行くと、兎が寄ってきてくれた。それだけじゃなくて、私は比較的動物に好かれるから、何か動物の怪の血が流れているのだと思っていた)
燈子の手が止まる。
燈子(そもそも聖獣を見分けられるあの人は一体何者?)
〇夜の帝都の街角
妖の土蜘蛛に後退りする人々。蒼真は割り切って入り、剣を向ける。
蒼真(さて、これは使えるか)
蒼真は胸のポケットから青い石のついた簪を取り出して掲げると、青い石が光を放つ。
その光は剣に吸収され、剣が光を放つようになる。
蒼真は剣を振り下ろすと、一瞬で土蜘蛛は灰となって消えた。
〇帝国軍の建物
帽子を壁にかける蒼真に、白峰幸虎(しらみねゆきとら)が近付く。
幸虎「お疲れ〜今日は派手にやったみたいやな」
蒼真「まぁそうでもないさ」
机まで歩く蒼真の後を幸虎がついていく。
幸虎「それで依頼があった千影家の報告が上がってるわ。やばいで」
幸虎が蒼真に報告書を渡す。
はぁと水連は大きく息を吐いた。
幸虎「さすがに“聖獣核”を見分けられる人間を、帝国軍がほおっておけるわけないやろうなぁ」
蒼真は報告書に目を通す。
幸虎「やっぱり若野屋の簪作ってたんは千影家の“忌み子”って言われてる娘らしくて、現当主の姪の可能性が高いんやて。やけど徹底的に隠されてるから、姿を見た人があまりにも少なすぎる」
蒼真モノローグ(千影当主は現在十九代目。元々妾の子で認知されたのは前当主の妻が亡くなってから……正妻の子の姉が居たらしいが二十年前から行方不明……その子供とされる赤子が山奥で発見され、十七年前に前当主である祖父が引き取った記録がある)
蒼真ははぁと息を吐く。
蒼真「千影家はずっと没落の烙印を押されていた。しかしここ十年ほどで、霊力が高い娘の力を生かして持ち直しているってことは……」
幸虎「恐らくその姪から搾取しているやろうな。あのお嬢さんからそんなに高い霊力は感じんし、これ手に入れれる化け物やで?!」
蒼真(化け物、か)
蒼真「……美しかったな」
燈子の綺麗な金髪を思い出す。
幸虎「しかも聞いてや。その女学校に通う娘を狙ってるのは……最近きな臭い動きがある一条宮家なわけやわ」
〇一条宮家
立派な畳の部屋の窓からは池がある日本庭園が見える。
豪勢な着物を着た雪乃と正一が座卓の前に座り、向かい合って袴姿の一条宮家の当主と一条宮俊秀(いちじょうみやとしひで)が座る。
俊秀「先日は指輪もありがとうございました。おかげで、すごく調子が良いです」
雪乃「そんな、褒めてくださりありがとうございます」
微笑む雪乃だが、燈子の顔がちらつき一瞬だけ表情が歪む。
一条宮家の当主「さすが千影家を復興させたお嬢さんだ。私もあなたの数珠がお気に入りだよ」
雪乃は満更でもない顔で、頭を下げる。
一条宮家の当主「それで、だね。皇室の傍系である一条宮家には守るべきものが沢山ある。是非ともその一員として雪乃さんは相応しいと考えている」
雪乃と正一の目が輝く。
俊秀「是非とも千影雪乃さんとの縁談を進めさせていただきたい」
俊秀が微笑むと、雪乃は歓喜した。

