第一話 「不思議な石と金髪の娘」
〇プロローグ
ナレーション「かつてこの帝国は、“妖(あやかし)”により支配されていた。人間よりも妖が権力を持ち、皇帝すら怪異に怯えていた」
過去の妖に怯える人々の前に、聖獣のシルエットが登場。
ナレーション「そんな折、西洋の宗教戦争によって故郷を追われた“聖獣”たちが海を渡り、この国へ流れ着く。彼らの体は宝石を宿し──その宝石には異能の元となる膨大な力が宿っていた」
四神と聖獣が契約する場面が背景。
ナレーション「そして妖退治を生業としていた陰陽師の頂点である四神家──青龍・朱雀・白虎・玄武は、聖獣と契約を結ぶ」
「“聖域”と呼ばれる森を解放した見返りに加護を得た四家門は、聖獣の力を借りて異能を使うようになった。そして聖獣の力を借りた人間は、文明が発展し繁栄していく」
聖獣核を手にして、狂う人々が登場。
ナレーション「しかし聖獣の存在は次第に秘匿され、“伝説”として扱われるようになった。理由は単純だ。聖獣の核となる宝石は──人の欲を狂わせるほど価値があったからだ」
〇千影家の離れにて(畳の部屋に机があるだけの簡素な部屋)
千影燈子(ちかげとうこ)はひたすら御札を作っている。
狭い部屋の中で正座し、机に向かい筆を走らせる。
燈子(よし、できた)
燈子は御札の上に手を置く。
すると光を放ち、霊力を纏い始める。
燈子モノローグ(千影家は華族の端くれでありながら、何百年も前に身分を剥奪された陰陽師の血を引く家系だ。表舞台から消え去っても、古物商の傍ら霊力を生かした呪具や御札を作り商売をしている)
燈子「これでいいかな?」
霊力を纏った御札を手にして眺める。
燈子モノローグ(特に私の霊力は強く、ひたすらここに閉じ込められて霊力を込める呪具を作らされている)
叔父の正一が乱雑に扉を開けて入ってくる。
正一「おい、できたか?!」
机の上に置かれた御札をひったくるように持つ。
霊力を纏っているのを確認すると、水晶の数珠を大量に投げつけた。
正一「これは雪乃の仕事だが、お前がやれ。雪乃は今日、華族のパーティに呼ばれたんだ」
正一は燈子を見下ろし、睨みつける。
祖父「行きたいなんて言うなよ?“忌み子”かも知れないお前は外に出せない。置いてやるだけ感謝しろ」
部屋から出ていき、襖が勢いよくバタンと閉まる。
部屋の奥の鏡に燈子の姿が映り、燈子の金髪が強調される。
燈子モノローグ(私はこの国ではあり得ない金髪をしている。それは妖との合の子である“忌み子”の可能性があるということ)
燈子はため息をついて、座り直す。
燈子モノローグ(そして私は霊力が多すぎるので、莫大な霊力を持つ“大妖”との子供の可能性が高いとされている)
燈子は数珠を摘んで、見つめる。
燈子「これは雪乃が作ったと称して、売りつけているものじゃない」
燈子モノローグ(雪乃は私と同い年の従姉妹。女学校に通い成績も優秀らしい)(没落していく千影家を救うため、“巫女”として箔が付くように金持ちの家に売り出しているらしい。この数珠作りもその一環だ)
燈子(いいこと考えた!)
作業を続ける燈子。
糸「燈子、いる〜?」
友達の若野糸が襖を少し開けて、顔を覗かせる。
燈子は満面の笑みで振り向く
燈子「糸!ちょうど良かった!」
燈子モノローグ(糸はうちで女中をしていた人の娘で、私よりも五歳年上。昔から姉のように慕っていた)
糸が部屋に入ってくる。
糸「奥さんの話が長くて遅くなっちゃった。とりあえずこれ食べよう?」
燈子「何?これ」
糸「乾蒸餅(ビスケット)ですって。西洋のお菓子で保存がきくから、あげるわ」
燈子「わーい、ありがとう」
燈子はビスケットの包みを開けて食べる。
美味しくて幸せそうに食べる様子を、糸は微笑ましそうに見ている。
燈子モノローグ(糸の母親は、私の母のことを乳母のように面倒を見ていたらしい。そんな縁もあってか“忌み子”と噂される私にも親身になってくれる)
糸「気に入ったらいっぱいあげるからね!なかなか目新しいものは売れないのよ」
燈子モノローグ(糸は三年前、裕福な若野家に嫁いだ。開国以降西洋文化が次々と入ってくるこの国で、経営する『若野屋』は西洋のものを輸入し、輸出もしているそうだ)
糸「で、できたの?」
燈子「じゃーん、これ見てー」
糸「わぁ、すごいじゃない」
燈子は机の引き出しから簪を取り出し見せる。
一本足の簪は、先端にビーズの花のようなものがあしらわれている。特に真ん中の赤や青の石は小さいながらも光り輝いていた。
燈子「実はね、数珠に霊力を込めるのを頼まれてたんだけど、数珠から水晶を一個ずついただくことにしたの」
燈子はクスリと笑いながら、水晶の数珠を見せた。糸は手を叩いて笑っている。
糸「それぐらいはしても当然よ!だって……ねぇ」
燈子は曖昧に微笑む。
糸「しかし、これは本当に拾った石なの?」
燈子「うん。あまり遠出できなかったから、小さいのしか取れなかったけど……」
糸「でもこれが本当にただの石だったなんて、やっぱり信じられないわよ」「それでこれ、今週の売り上げだから」
糸は帳簿を差し出して見せる。
燈子「わぁ、結構売れたね!」
糸「そうよ。もうそろそろ逃亡資金ぐらいにはなったんじゃない?」
燈子「そうだね」
燈子は笑いながら、少し俯く。
燈子モノローグ(私は磨くと光る石を見分ける能力がある。なのでそれを生かして、拾った石で簪や耳飾りなどの装飾品を作っていて、それを糸の家で売ってもらい、資金を貯めている)
糸「じゃあまたね!」
帰っていく糸を見つめる燈子。
燈子モノローグ(でも私はきっとこの家から出れないのだろう。どこに居ても、この髪色と霊力は隠せないのだから)
燈子の足に、白猫が寄ってくる。
ゴロゴロ転がる猫を、優しく撫でた。
〇数日後、燈子の部屋
作業中の燈子の部屋にズカズカと雪乃が入ってくる。
雪乃「ねぇ“忌み子”これも頼むわ」
雪乃は燈子に金属の指輪を投げつけた。
雪乃「あのね。この前のパーティーであの数珠が好評でね。これも頼まれたの」
雪乃は近づいて燈子を見下ろす。
雪乃「いい?早くこれに霊力をこめなさい」
命令する雪乃に対し、無言で淡々とこなす燈子。
雪乃は面白くないと言わんばかりに口を尖らせる。
雪乃「あなたも感謝してよね?私、ようやくいいところと縁談が来そうなのよ。あなたも役に立ったじゃない。あー貧乏だけど置いてあげて良かったってね!」
燈子は雪乃を無視して霊力を込めている。
燈子(よく言うわね。私の霊力が無かったら、完全に没落していただろうに)
霊力を入れ終わった指輪を、雪乃はひったくるように取る。
雪乃「じゃ、せいぜい私の成功を祈りなさいね」
吐き捨てて部屋から出ていく燈子。
燈子モノローグ(雪乃はイチイチ嫌味を言わなければ生きていけないらしい。私はもう慣れてしまった)
燈子はため息をつくと、ぼんやりと宙を見上げる。
そこに慌ただしい足音が近づいてくる。
糸「燈子、速報!」
息を切らしながら、糸は戸を開ける。
糸「さっきね、あなたの細工を全部買った人がいたの」
燈子「えっ本当に?」
糸「しかも相場の三倍を出すって言われて、相場の三倍で買い取ってもらったの」
燈子は驚き信じられないという顔をするが、糸が帳簿を見せると納得した。
糸「それでね、これは知り合いに頼まれて置いているって言ったら、『作った人について詳しく聞かせろ』って詰め寄られてね……とりあえず千影の名前を出すのは抵抗あったから、『知り合いの娘さんが作っているから聞いておきますね』って言っといたんだけど……」
燈子「ええ?!何か怪しまれている?」
糸「うーん、何も理由とか言ってくれなかったから、わからないんだけど……」
燈子(何なんだろう?)
燈子の足元では、心配そうに猫が燈子を見つめている。
〇夜、月明かりの街の中
燈子は行灯を片手に歩いている。行灯は千影家の紋が入っており、燈子の頭には髪の毛を覆う頭巾を被っている。
燈子モノローグ(糸はずっと私が西洋人の子供で“忌み子”ではないって言ってるけれど、私自身はやっぱり“忌み子”であると思っている)
燈子は立ち止まると、行灯の照らす影からささっと動く何かを見る。
燈子モノローグ(まだまだ妖がはびこる帝都だけれど、私は妖との遭遇率が極端に少ない)
遠くの人「出たぞー!あそこだ!」
バタバタと人が駆け寄る音を、遠くで聞く。
燈子モノローグ(女子供の夜間の外出は危険だ。ひとたび妖と遭遇すると、餌食となってしまう)
燈子は喧騒に背を向けて歩き出す。
燈子モノローグ(おかげで私が家を出ているとは思われていないので、石の収集にはもってこいの時間だ)
森の入口で立ち止まると、風が駆け抜ける。
柵が回りを囲み、大きな扉の前には『禁足地』と書かれた看板が立っている。
燈子「さて、拾いますか」
燈子は着物の袖を捲り、気合を入れる。
燈子モノローグ(この政府の禁足地──“聖域”と呼ばれる森は、一般人は立ち入ることはできない)
燈子がしゃがんで地面を見ていると、一つの石を手にした。
燈子「あ、あった」
燈子がその石を磨くと、暗闇の中でも光るのがわかる。
燈子(森に何があるかわからないけれど、光る石が大量に取れるし、きっと神聖なものがあるんだろうな)
柵の上から何かが燈子を目掛けて飛んでくる。
燈子「ひゃっ……!」
一瞬驚くが、それが兎であることを確認。目の前に現れた兎を撫でる。
燈子「わー可愛い!触らせてくれてありがとう」
そのまま撫でる燈子に、一人の男が近付く。
龍崎蒼真(りゅうざきそうま)「お前……!何している?!」
燈子は驚き飛び上がる。
振り向くと軍服姿の蒼真が立っている。
燈子は一瞬彼の綺麗な顔に目を奪われるが、あまりにもすごい剣幕で迫ってくるので、怖くなり後退りする。
蒼真「だからお前は何をしているんだ?」
燈子「えっと、その」
燈子(石を拾うのは窃盗罪か……?)
兎が燈子の肩に飛び乗った。
蒼真「そ、その兎……!」
燈子「兎?」
燈子は飛び乗った兎を掴み、抱っこした。
それを物凄く驚いた様子で蒼真が見ている。
蒼真「その兎は聖獣、紅玉兎(カーバンクル)だ!」
〇プロローグ
ナレーション「かつてこの帝国は、“妖(あやかし)”により支配されていた。人間よりも妖が権力を持ち、皇帝すら怪異に怯えていた」
過去の妖に怯える人々の前に、聖獣のシルエットが登場。
ナレーション「そんな折、西洋の宗教戦争によって故郷を追われた“聖獣”たちが海を渡り、この国へ流れ着く。彼らの体は宝石を宿し──その宝石には異能の元となる膨大な力が宿っていた」
四神と聖獣が契約する場面が背景。
ナレーション「そして妖退治を生業としていた陰陽師の頂点である四神家──青龍・朱雀・白虎・玄武は、聖獣と契約を結ぶ」
「“聖域”と呼ばれる森を解放した見返りに加護を得た四家門は、聖獣の力を借りて異能を使うようになった。そして聖獣の力を借りた人間は、文明が発展し繁栄していく」
聖獣核を手にして、狂う人々が登場。
ナレーション「しかし聖獣の存在は次第に秘匿され、“伝説”として扱われるようになった。理由は単純だ。聖獣の核となる宝石は──人の欲を狂わせるほど価値があったからだ」
〇千影家の離れにて(畳の部屋に机があるだけの簡素な部屋)
千影燈子(ちかげとうこ)はひたすら御札を作っている。
狭い部屋の中で正座し、机に向かい筆を走らせる。
燈子(よし、できた)
燈子は御札の上に手を置く。
すると光を放ち、霊力を纏い始める。
燈子モノローグ(千影家は華族の端くれでありながら、何百年も前に身分を剥奪された陰陽師の血を引く家系だ。表舞台から消え去っても、古物商の傍ら霊力を生かした呪具や御札を作り商売をしている)
燈子「これでいいかな?」
霊力を纏った御札を手にして眺める。
燈子モノローグ(特に私の霊力は強く、ひたすらここに閉じ込められて霊力を込める呪具を作らされている)
叔父の正一が乱雑に扉を開けて入ってくる。
正一「おい、できたか?!」
机の上に置かれた御札をひったくるように持つ。
霊力を纏っているのを確認すると、水晶の数珠を大量に投げつけた。
正一「これは雪乃の仕事だが、お前がやれ。雪乃は今日、華族のパーティに呼ばれたんだ」
正一は燈子を見下ろし、睨みつける。
祖父「行きたいなんて言うなよ?“忌み子”かも知れないお前は外に出せない。置いてやるだけ感謝しろ」
部屋から出ていき、襖が勢いよくバタンと閉まる。
部屋の奥の鏡に燈子の姿が映り、燈子の金髪が強調される。
燈子モノローグ(私はこの国ではあり得ない金髪をしている。それは妖との合の子である“忌み子”の可能性があるということ)
燈子はため息をついて、座り直す。
燈子モノローグ(そして私は霊力が多すぎるので、莫大な霊力を持つ“大妖”との子供の可能性が高いとされている)
燈子は数珠を摘んで、見つめる。
燈子「これは雪乃が作ったと称して、売りつけているものじゃない」
燈子モノローグ(雪乃は私と同い年の従姉妹。女学校に通い成績も優秀らしい)(没落していく千影家を救うため、“巫女”として箔が付くように金持ちの家に売り出しているらしい。この数珠作りもその一環だ)
燈子(いいこと考えた!)
作業を続ける燈子。
糸「燈子、いる〜?」
友達の若野糸が襖を少し開けて、顔を覗かせる。
燈子は満面の笑みで振り向く
燈子「糸!ちょうど良かった!」
燈子モノローグ(糸はうちで女中をしていた人の娘で、私よりも五歳年上。昔から姉のように慕っていた)
糸が部屋に入ってくる。
糸「奥さんの話が長くて遅くなっちゃった。とりあえずこれ食べよう?」
燈子「何?これ」
糸「乾蒸餅(ビスケット)ですって。西洋のお菓子で保存がきくから、あげるわ」
燈子「わーい、ありがとう」
燈子はビスケットの包みを開けて食べる。
美味しくて幸せそうに食べる様子を、糸は微笑ましそうに見ている。
燈子モノローグ(糸の母親は、私の母のことを乳母のように面倒を見ていたらしい。そんな縁もあってか“忌み子”と噂される私にも親身になってくれる)
糸「気に入ったらいっぱいあげるからね!なかなか目新しいものは売れないのよ」
燈子モノローグ(糸は三年前、裕福な若野家に嫁いだ。開国以降西洋文化が次々と入ってくるこの国で、経営する『若野屋』は西洋のものを輸入し、輸出もしているそうだ)
糸「で、できたの?」
燈子「じゃーん、これ見てー」
糸「わぁ、すごいじゃない」
燈子は机の引き出しから簪を取り出し見せる。
一本足の簪は、先端にビーズの花のようなものがあしらわれている。特に真ん中の赤や青の石は小さいながらも光り輝いていた。
燈子「実はね、数珠に霊力を込めるのを頼まれてたんだけど、数珠から水晶を一個ずついただくことにしたの」
燈子はクスリと笑いながら、水晶の数珠を見せた。糸は手を叩いて笑っている。
糸「それぐらいはしても当然よ!だって……ねぇ」
燈子は曖昧に微笑む。
糸「しかし、これは本当に拾った石なの?」
燈子「うん。あまり遠出できなかったから、小さいのしか取れなかったけど……」
糸「でもこれが本当にただの石だったなんて、やっぱり信じられないわよ」「それでこれ、今週の売り上げだから」
糸は帳簿を差し出して見せる。
燈子「わぁ、結構売れたね!」
糸「そうよ。もうそろそろ逃亡資金ぐらいにはなったんじゃない?」
燈子「そうだね」
燈子は笑いながら、少し俯く。
燈子モノローグ(私は磨くと光る石を見分ける能力がある。なのでそれを生かして、拾った石で簪や耳飾りなどの装飾品を作っていて、それを糸の家で売ってもらい、資金を貯めている)
糸「じゃあまたね!」
帰っていく糸を見つめる燈子。
燈子モノローグ(でも私はきっとこの家から出れないのだろう。どこに居ても、この髪色と霊力は隠せないのだから)
燈子の足に、白猫が寄ってくる。
ゴロゴロ転がる猫を、優しく撫でた。
〇数日後、燈子の部屋
作業中の燈子の部屋にズカズカと雪乃が入ってくる。
雪乃「ねぇ“忌み子”これも頼むわ」
雪乃は燈子に金属の指輪を投げつけた。
雪乃「あのね。この前のパーティーであの数珠が好評でね。これも頼まれたの」
雪乃は近づいて燈子を見下ろす。
雪乃「いい?早くこれに霊力をこめなさい」
命令する雪乃に対し、無言で淡々とこなす燈子。
雪乃は面白くないと言わんばかりに口を尖らせる。
雪乃「あなたも感謝してよね?私、ようやくいいところと縁談が来そうなのよ。あなたも役に立ったじゃない。あー貧乏だけど置いてあげて良かったってね!」
燈子は雪乃を無視して霊力を込めている。
燈子(よく言うわね。私の霊力が無かったら、完全に没落していただろうに)
霊力を入れ終わった指輪を、雪乃はひったくるように取る。
雪乃「じゃ、せいぜい私の成功を祈りなさいね」
吐き捨てて部屋から出ていく燈子。
燈子モノローグ(雪乃はイチイチ嫌味を言わなければ生きていけないらしい。私はもう慣れてしまった)
燈子はため息をつくと、ぼんやりと宙を見上げる。
そこに慌ただしい足音が近づいてくる。
糸「燈子、速報!」
息を切らしながら、糸は戸を開ける。
糸「さっきね、あなたの細工を全部買った人がいたの」
燈子「えっ本当に?」
糸「しかも相場の三倍を出すって言われて、相場の三倍で買い取ってもらったの」
燈子は驚き信じられないという顔をするが、糸が帳簿を見せると納得した。
糸「それでね、これは知り合いに頼まれて置いているって言ったら、『作った人について詳しく聞かせろ』って詰め寄られてね……とりあえず千影の名前を出すのは抵抗あったから、『知り合いの娘さんが作っているから聞いておきますね』って言っといたんだけど……」
燈子「ええ?!何か怪しまれている?」
糸「うーん、何も理由とか言ってくれなかったから、わからないんだけど……」
燈子(何なんだろう?)
燈子の足元では、心配そうに猫が燈子を見つめている。
〇夜、月明かりの街の中
燈子は行灯を片手に歩いている。行灯は千影家の紋が入っており、燈子の頭には髪の毛を覆う頭巾を被っている。
燈子モノローグ(糸はずっと私が西洋人の子供で“忌み子”ではないって言ってるけれど、私自身はやっぱり“忌み子”であると思っている)
燈子は立ち止まると、行灯の照らす影からささっと動く何かを見る。
燈子モノローグ(まだまだ妖がはびこる帝都だけれど、私は妖との遭遇率が極端に少ない)
遠くの人「出たぞー!あそこだ!」
バタバタと人が駆け寄る音を、遠くで聞く。
燈子モノローグ(女子供の夜間の外出は危険だ。ひとたび妖と遭遇すると、餌食となってしまう)
燈子は喧騒に背を向けて歩き出す。
燈子モノローグ(おかげで私が家を出ているとは思われていないので、石の収集にはもってこいの時間だ)
森の入口で立ち止まると、風が駆け抜ける。
柵が回りを囲み、大きな扉の前には『禁足地』と書かれた看板が立っている。
燈子「さて、拾いますか」
燈子は着物の袖を捲り、気合を入れる。
燈子モノローグ(この政府の禁足地──“聖域”と呼ばれる森は、一般人は立ち入ることはできない)
燈子がしゃがんで地面を見ていると、一つの石を手にした。
燈子「あ、あった」
燈子がその石を磨くと、暗闇の中でも光るのがわかる。
燈子(森に何があるかわからないけれど、光る石が大量に取れるし、きっと神聖なものがあるんだろうな)
柵の上から何かが燈子を目掛けて飛んでくる。
燈子「ひゃっ……!」
一瞬驚くが、それが兎であることを確認。目の前に現れた兎を撫でる。
燈子「わー可愛い!触らせてくれてありがとう」
そのまま撫でる燈子に、一人の男が近付く。
龍崎蒼真(りゅうざきそうま)「お前……!何している?!」
燈子は驚き飛び上がる。
振り向くと軍服姿の蒼真が立っている。
燈子は一瞬彼の綺麗な顔に目を奪われるが、あまりにもすごい剣幕で迫ってくるので、怖くなり後退りする。
蒼真「だからお前は何をしているんだ?」
燈子「えっと、その」
燈子(石を拾うのは窃盗罪か……?)
兎が燈子の肩に飛び乗った。
蒼真「そ、その兎……!」
燈子「兎?」
燈子は飛び乗った兎を掴み、抱っこした。
それを物凄く驚いた様子で蒼真が見ている。
蒼真「その兎は聖獣、紅玉兎(カーバンクル)だ!」

